#272 買ったのは「翻訳機」

2007/05/24

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 前回の続き。英語の勉強のためにと、英英辞書の入った電子辞書を買おうと思ってあれこれ物色を始めた次第。

 ところで先日、私が昨年マレーシアを訪れた際にお世話になった人が、今度は研修のために来日した。1週間ほどの滞在で、研修スケジュールもかなりタイトだったのだが、最終日には少し時間ができたので、ご恩返しも兼ねて、浅草や秋葉原などへ連れて行き、日本土産の買い物におつきあいしたのであった。

 マレーシアから来た彼が言うには、数日前に下見に来た時に、英語と日本語とマレー語が使える電子辞書を秋葉原で見かけたという。日本の大手メーカーが発売している電子辞書はほとんどが英語で、あとはせいぜい仏語・独語・西語・伊語・中国語・韓国語といったあたりの対日本語辞書が含まれているものがあるくらいで、マレー語辞書はさすがに無いのでは、と思っていたのだが、はたして、秋葉原ラジオセンターのとある小さな店に、確かにマレー語を扱える電子辞書があったのである。

 正確に言うと、見かけたこの商品は電子辞書ではなく「Global Talker」と称する翻訳機であった。扱える言語の組み合わせで「International」「Asian」「NE-Euro」の3種類があるのだが、どのタイプも、日本語・英語・中国語・韓国語を含む14言語について、8200単語・2300例文を相互に変換し、発音もするという製品らしい。

 これだけだと何となく「面白電脳グッズ」という域を出ないのであるが、加えて「The New Oxford American Dictionary(NOAD)」という、見出し語約80000、派生語を含めた収録語約250000を誇る本格的な英英辞書が付属している。仕事上、こうしてマレーシアなどアジア各国との交流がぼつぼつとあることを考えると、英英辞書に加え、これらのアジア各国言語の簡易辞書もついているのはなかなか使えそうだと思い、購入に至った次第である。

 というわけで、購入したのはAsianバージョン(GT-316R)。翻訳機として、英語・北京語・広東語・上海語・日本語・韓国語・ヒンディー語・アラビア語・ペルシア語・インドネシア語・マレー語・フィリピン語・タイ語・ベトナム語が相互に翻訳できる。これらのうち、英語・インドネシア語・マレー語・フィリピン語以外の言語はアルファベットを使っていないのであるが、原語の文字で表記してくれるほか、発音の補助としてアルファベット読みも併記してくれる。

 もちろん、それぞれの言語の文字で辞書を引くことができるようになっている。このため、各キートップやそのまわりには、アルファベットのほか、ハングル、デーヴァーナーガリー文字、ペルシャ文字、アラビア文字、タイ文字、日本語のかな等が印刷されていて、かなりすごいことになっている。キー一つで各言語での訳を表示できるほか、ボタンを押せば、単語・例文をすべて発音してくれる。

 Oxford辞書の方についても、2000ページ余もある書籍版の文字情報を完全に網羅しているようであり、こちらも見出し語については発音してくれる。このクラスの辞書を搭載して、なおかつ単語の発音までしてくれるという点だけ見れば、CASIOのEx-word上位機種にも匹敵する機能である。

 これらの辞書としての機能のほかにも、いろいろな機能がついている。12桁電卓や各種単位換算などの機能は、既に持っている電子辞書にもついているので驚かないが、200地点に対応した世界時計や、簡易メモ帳機能までついている。メモ帳は、パスワード設定も可能で、上に示したどの言語でも記録できる。(日本語の場合、残念ながら漢字の入力はできない。)

 また、ワールドバンドFMラジオもついている。付属のイヤホンをアンテナにするのだが、そこそこ感度も良い。周波数は直接数値を入れることができ、10チャンネルまでプリセットも可能である。

 一応ミニゲームとして、今流行の「数独」も遊べる。もっとも9×9のものではなく、6×6の変則サブセット版なので、大したことはないが。

 表示窓は160×51のドットマトリックスで、ズーム機能などもなく、アルファベットでもせいぜい4行しか表示できないので、一覧性という点では劣るが、液晶濃度の設定は可能で、バックライトまでついている。Oxford辞書表示については、太字やイタリックや発音記号も書籍版と同様に表示しており、それなりに工夫されている。

 ジャンプ機能やヒストリー機能やスペルチェック機能などはないので、電子辞書としての機能性は劣るものの、起動は早く、使い勝手も悪くない。何より胸ポケットに入る小ささと電池込みで150gという軽さが、携帯性を重要視する私好みである。

 ちなみにこの商品のカタログには「世界中に飛び出そう」というコピーが書かれている。これを買ったのをいい機会に、今のところは文字すら読めないアラビア語やヒンディー語やタイ語なども、辞書を引ける程度には勉強してみたいと思った次第である。飛び出すまでには至らなくても、自分の世界が広がるきっかけになれば、それはすばらしいことだ。


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