#113 専用線環境のその後

2000/04/17

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 私はこれまで地元ケーブルテレビの高度化計画実証実験(以下単に「実験」)のモニターとして、専用線によるインターネット使い放題の環境にいたのだが、転居のためやむなくその環境から離れることになってしまった、ということは前回にもお話しした。だが私が転居して半年後、かつて住んでいた地区における「実験」そのものも終了を迎え、いよいよ事業として2000年4月から一般家庭へのプロバイダサービスを開始することになった。

 対象としている地域はこのケーブルテレビがサービスを提供している地域全体に拡大されたので、私の新しい住居もそれに含まれることになり、契約すれば私もそのサービスを受けることができるわけである。あの高速回線の快感に止みつきになりかけていた私としては、本運用のサービスがどのような形で提供されるのか、大変気になるところであった。

 「実験」中の環境では、何しろデータの実効転送速度が1.2Mbpsはあったので、どんなに大きなファイルの転送もほとんどストレスなくできた。もちろん電話回線を使用しないから電話代は一切かからない。また、それぞれにWebPage用のディスクスペースとメールアドレスが与えらるほか、太っ腹なことにグローバルIPアドレスが1つずつ提供されていたので、自宅のマシンをサーバにすることもできたのである。(セキュリティには気を付けないと危険な状態ではあるが。)このように恵まれた環境を、月3000円の固定料金(「実験」初年度はなんと無料だった!)で利用できていたのである。

 果たして、新しいサービスの概要は「実験」終了を目前に控えた1月頃にようやく明らかになった。それによると、回線速度は下り512kbps/上り256bpsで、アドレスはDHCPによるプライベートアドレスで、月額利用料は5000円である。接続可能な端末は1つ、メールアドレスは1つ、WebPageのスペースは10Mbyteまで。その他初期投資として、登録料が10000円、工事費が13000円かかるらしい。当然と言えば当然かも知れないが、「実験」中の環境に比べれば、はるかにサービスや自由度が低下し、しかも料金は割高になってしまっている。

 尤も、実際ケーブルテレビを利用したインターネットプロバイダサービスとしては、このくらいが妥当なところなのであろう。その他の地域における同様のサービスと比較しても、月使用料はだいたい5000円前後で、当然グローバルIPアドレスなどという石油よりも貴重な資源は簡単にはもらえないのが実情である。ただ、今まで使っていた環境が恵まれ過ぎていただけに、今よりも更に高いお金を払って、なおかつサービスが低下してしまうというのが心情的に納得行かないというのもまた事実である。

 ともかくあとは、個人個人が5000円/月という投資をするに見合うサービスであると思うか否か、自分が果たして情報にどのくらい金を払う気になるかという問題であろう。月5000円と言っても、例えば新聞などは夕刊合わせて月4000円はかかるし、最近はついに加入電話の数を追い越してしまった携帯電話をはじめとする移動体電話にしても、基本料と通話料を合せれば、安くて2000〜3000円、i-modeなどのパケット付加情報を使っていれば5000円は下らないと思われる。それらと比較してみれば、利用頻度によっては情報通信費として必ずしも高額なものと言うわけでもないだろう。

 ところで、このケーブルテレビによるプロバイダサービスを受けるためには、ケーブルテレビの中継器を更新しなくてはならないのであるが、官舎などの集合住宅の場合、中継器の更新にかかる費用の半分は、各棟の自治会が持たなくてはならない。つまり私のように官舎に入っている場合、いくら自分がこのサービスを受けたいと思っても、自分の住んでいる宿舎の自治会が中継器の交換を決めない限りは、サービスを受けられないのである。

 先日、私の住む自治会の総会が行われて、この中継器更新の話も出たのであるが、とりあえず先立つものがないということと、利用したいと言う世帯があまりないということから、当面は中継器の更新は先送りして、必要な経費を将来に向けて積み立てつつ様子を見ようということになった。私としても、まだサービスが始まったばかりの段階では、契約したはいいけど実際には回線が混雑して広告に謳っていたほど快適には使えなかったり、トラブルが多発したりということも考えられなくはないので、このサービスがどのくらいきちんと機能するか、今の所はしばらく模様眺めということにしてもいいかなと思っている。


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