#059 FAX機の困惑

1999/04/23

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 先にも述べたとおり、家庭でFAX機を導入する場合、よほど需要がない限り、FAX専用の回線を新たに引くと言うことはない。つまり、それまで電話として使っていた回線を、FAXと兼用して使うことになるわけである。よって、それまでは電話だけに使っていた回線がFAXにも使われることになるわけだから、電話がかかってきた段階ではそれが電話なのかFAXなのかわからず、お互い困惑するということがままある。

 私の家のFAX機ももちろん通常の電話回線と兼用しているので、電話が鳴れば通常はまず電話だと思って受話器を取る。相手も電話をかけてきている場合は何等問題はないが、相手がFAXを送ろうとしている場合は、受話器の向こうで「ピー、ピー」という音が鳴る。こちらも「ぴー、ぴー」とか答えてFAXと直接会話する芸当があればいいのだが生憎そのような芸はまだ持ち合せていないので、この場合、こちら(受信側)は「FAX機でFAXを受けますよ」という意思表示としてすみやかに受話器を置く。

 そのようにして待っていると、うまくいけば首尾良くFAXを受信する体制が整う。以下は私の家のFAXの場合だが、やおらFAX機が「ガシャコン」と言い、紙を送り出す準備をする。あとは向こうの送ったFAX情報が「ズズズズズズ」などと言いながら紙に印刷されてゆっくりと出てくる。相手の送った情報が用紙1枚分を越える場合は、1枚分送られるごとにオートカッターが「ビーシャーシャッカ」などと動いて、また「ズズズズズズ」と言いながら続く情報を送ってくる。そしてすべて受信し終わると、最後の紙を「ビーシャーシャッカ」と切り取って、最後に、正常に受信できたことを「ひょっひょっひょひょひよ」などという小鳥のさえずり音で教えてくれる。最後の「ひょっひょっひょひょひよ」は、設定により他の音にすることもできるのだが、この小鳥のさえずり音ののどかな感じが気に入ってるのでこれを使っている。

 こんな具合でうまくいけばめでたしめでたしなのだが、たまにそうして受信を待っていても、1枚も送られてこないまま「ひょっひょっひょひょひよ」と言って終わってしまうことがある。通常は、こちらが受話器を置いてFAXを受ける体制にすると、相手のFAX機もそれを感知してFAXの送信を開始してくれるのであるが、場合によってはそれが相手に伝わらず、いつまでも送ってくれない場合があるのだ。その場合はしばらくお見合い状態(この場合「お聞き合い状態」とでも言うのだろうか)になり、やがて回線が切れてしまうといったことになってしまう。そういう機種の場合は、相手が受話器を取った時に、送信側では、「スタートボタン」を手動で押して、FAXを送ると言うことを再度意思表示する必要がある。

 要するにFAXの場合は、回線がつながったあと、送信側・受信側のどちらか一方だけでも「これはFAXだ」という意思表示をしてくれないと、FAXによる情報の送受信は成り立たないのである。もちろん、受信側がFAX専用機の場合は、あらかじめ「これはFAXだ」ということが分かっているので、たいていの場合問題になることはない。このあたりの「うまくいく・いかない」は、結局の所、送信側と受信側の機械の相性みたいなものに依存する部分も大きい。

 ところで私の場合、FAX機を購入する以前から、FAXを送信することだけはできた。つまり、パソコンとモデムを使ってFAXを送信する方法である。モデムはアナログ信号とデジタル信号の変換を行う機械であるから、大抵のモデムはFAX送受信機能も兼ね備えている。これに気の効いたソフトがあれば、パソコンを使ってFAXを送ることは割合簡単にできる。しかも、紙に書かれたものをスキャンして記号化する普通のFAX機に比べ、テキストを直接FAX情報に変換するため、文字なども綺麗に出力してくれる。

 ただ、FAX機としての機能をそれで果せるかというと、送信はともかく、受信の方はいつFAXが送られて来るかわからないものであり、そのためにパソコンをつけっぱなしにしておくというわけにもいかないので、FAX機のような簡便さには欠けてしまう。結局、連絡手段としてちゃんとFAXを使おうと思ったら、やはりFAX機を導入した方が話が早い。また、相手がFAXと電話の兼用機だった場合、先に述べた「スタートボタンを押す」という機能がないものもあり、送信がうまくいかない場合もある。というわけで私の場合、パソコンを使ってFAXを送った場合は、普通にFAXを送った場合に比べると、相手に無事に送信できたかどうかどうも不安になってしまうのである。やはり私も、FAXの原稿が戻ってくるのを見て送られた気がしないと言った前回の話の冒頭の人を笑えない


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