△ 不等辺ワークショップ第10回 (2002/08/14)


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 先月にひきつづいてワークショップをおこないました。リーダーは私(林成彦)、アシスタントは池田景です。メニューは前回とまったくおなじです。ルールのマイナーチェンジや現場でのアドリブはもちろんありました。ありましたが、おなじメニューをつづけておこなうことに今回は意味があるのだと考え、原則としてメニューはいじらないように努めました。けっしてラクをしようとしたわけではないです。本当です。本当よ。こまかな説明などは前回のレポートをご覧いただくことにして、ここでは2回やってはじめて気づいたことなどをご報告したいなと思います。レポートを書くのはひさしぶりなので、ちょっと浮かれています。手書きでもないのに変ですが、乱文乱筆をはじめにお断りしておきます。


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 まずは「野菜メドレー」
参加者のうち3名にすきな野菜をひとつずつ挙げてもらいます。今回は「とうもろこし」「ピーマン」「アボガド」の3つ。…ピーマン? アボガド? 「今回の参加者は手ごわいぞ」と私は身構えました。前回はたしかトマト、なす、きゅうりでしたね。「すきな野菜を訊かれてトマトのなまえが挙がる率がかなり高いのです。いつもそうです」と、ここで私は独自の日本人論を語るつもりでいたのに、出鼻をくじかれました。でもとうもろこしって野菜か? このゲームは声を出すし、相手の顔を見るし、滑り出しとしては具合がいいですね。ゲームに混ざりながら、どのような方たちが参加してくれたのかを知ることができます。みなさんもそうでしょう。それにしても8月の稽古場は暑い…。

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 つぎが「ペットバトル」
写真前回は敵と味方の見分けがつかない(審判が苦労する)というのが反省点として挙がりました。そこで今回はゼッケンを3枚用意して、ゼッケンのありなしを目印に。100円ショップに行ったところ、以前は売っていたゼッケンが製造中止になってしまったそうで。代わりにエプロンでゆるしてね。見ている者には好評、着させられる者には不評のこのエプロン。3人でおなじエプロンを着て並んでいる姿はとってもラブリー。不思議と仲がよさそうに見えます。最終戦まではエプロンを着た側が全勝で、「エプロン神話」が誕生しそうな気配でした。ちなみに私はあいかわらずのドンくささで、1点もとれません。なのに私の入ったチームが優勝するミラクル。チームメイトのおかげです。勝つと気分がいい。負けるとくやしい。こういう思いにウソはありません。それにしても8月の稽古場は暑い…。ペットボトルを凍らせておいたら、選手のモチベーションがさらに上がったかもしれないですね。

写真 そして「ペンキ屋」
このゲームで私がこだわってみたのがBGM。前回は渡辺美里の曲が思いがけず効果を上げました。今回も2チームに分け、1曲目はルイ・アームストロングの「What a wonderful world」。いいものを見たなぁという気がするんじゃないかな。2曲目はミスチルの「イノセント・ワールド」。このいかにも前向きな曲が、前奏の聞こえた瞬間「笑えるんじゃないかしら?」と仕掛けてみました。じっさい笑っていたのはアシスタントのイケダさんだけ…。桜井和寿がちょっと話題になった時期だったし。ひそかに2曲とも「ワールド」だし。時間がなくてやれませんでしたが、さいごは全員で大きな部屋に入ってペンキを塗るつもりでした。用意した曲はディズニーの「It's a small world」。いちばん大きな部屋なのに曲は「小さな世界」だというゆがみが「笑えるんじゃないかしら?」とねらってみました。如何?

 曲のことばかり書いていますが、もともとこのゲームには見応えがあります。今回は試みとしてペンキ屋さんを「途中投入」してみました。参加者の方に個別にお願いして、途中から部屋に入り会話に加わってもらいました。それで雰囲気ががらりと変わることもあり、見ていて興味深かったです。
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 お待ちかねの「就職ガイダンス」
写真プレゼンテーションに先立って、みなさんに準備をしていただく時間を30分とりました。ひとりひとり下書き用紙に向かって真剣に鉛筆を走らせている姿が、私にはうれしくもあり頼もしくも感じられるものでした。その真剣さに対して失礼のないように、課題を与える側として今後も真剣さを失わないようにします。みなさん、それぞれにいいプレゼンをなさり、いい質問を寄せてくださいました。ナイナイの矢部っち風に言うと、「普通におもしろかった」です。純粋に楽しかった。以下に、僭越ながら個々の感想を。

1.「地暦測量士」。地暦測量士の松田優作が決定的な手がかりを見つけて「なんじゃ、こりゃぁ!」と叫ぶというのが、とにかく素敵だ。そんなドラマを見たらきっと私も地暦測量士に憧れたでしょう。一番手だし、いろいろなプレッシャーがかかったと思います。いい滑り出しで、私は見ていてうれしくなりました。

2.「三色巻紙配達人」。体力勝負の力仕事というのが私はすきですね。時間を超えることより超えたあとの方がはるかに大変そうで、意外な苦労があるんだなと思いました。私は長い距離を歩くことが趣味なので、個人的には魅かれる職業のひとつです。しかし日本全域を3人でカバーしているというのは無理じゃない?

写真3.「秒針音楽師」。なかなかプレゼンしにくい職業だったのかな? 世の中のありとあらゆる小さなものをずらっと羅列してみたり、あるいはひじょうに大きなものが自分には小さく見えたり。小さな写真家や小さな映画監督とコラボレーションしてみたり。急所を1点にしぼりこんでみると意外なイメージがふくらんだかもしれないですね。

4.「ひらめきランプ交換人」。もっとも演劇的、というか芝居仕立てのプレゼンでした。さすがのひとことです。雷がピカッと光るのはだれかがたいへんなことを思いついた瞬間なのだという発想にはうなりました。30分の準備時間に何回も自分のランプが光ったんじゃないですか? さすがです。

5.「時間管理人」。いったいどんなクライアントがいるのか、ひじょうに気になります。もっとくわしくお話をうかがいたかった。預かった時間をほかに流すという「裏商売」。あったら大もうけできますよ。

写真6.「月光密売人」。株式会社月光。よもや会社組織だったとは。月光を採取する方法がなにより素敵だ。矢を使って、どうするんでしたっけ? これはくわしく聞きたかったなぁ。初任給なんか尋ねてしまってすみませんでした。夢がないな、私は。

7.「果実勘定士」。カウントをとっている右腕の動きが、すでに「計算」されたものだったのですね。コーヒー豆が「果実」なのだということも私は知りませんでした。コーヒーって、じつはフルーツ・ジュース? 奇矯なライバルがいてもよかったかもしれないですね。重さを量ってしまう人とか。アメリカ南部で「奇妙な果実」を数えるだとかの、ブラックなネタも私はすきですが。

8.「選択士」。順番がさいごというのは大変ですよね。お疲れさまでした。自分がなりたいとは思わないのですが、いたらうれしい職業のナンバーワンです。私はあなたに太鼓判を押してもらいたい。「その選択はまちがっていなかったよ」と選択士に言ってもらえたら、だなんて思います。願います。望みます。だれかなってください、選択士。

写真 人気投票では月光密売人が7票で1位。9人中じつに7人が手を挙げたわけですね。ひらめきランプ交換人と時間管理人とが4票で2位でした。みなさん、お疲れさまでした。

 MVPの方にさしあげるささやかな賞品(というか景品)。それをアシスタントのイケダさんが丁寧に包装してくれました。ただ「MVP」と書くはずの紙に「VIP」と書いてしまったのはご愛嬌。オレらはボディーガードかい? 一回かぎり一日かぎりで「チーム」を解散してしまうのは残念ですね。リーダーを務めるたびそう思います。せっかく雰囲気ができてきたのにね。ま、一回かぎりだからいいのかな。機会があればまたお会いしましょう。できれば稽古場でね。そのときは笑って、コカコーラでも飲みましょう。No Reason! だれもいない稽古場で私はあらたな想を練りますよ。夏も終わりですね。さいごに乱文をあらためてお詫びします。


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8月14日水曜日…お盆の最中だし芝居人なんかは平日は休みとかあるだろうと、軽く平日ワークショップを企画したリーダーとアシスタント…これがすべてのはじまりでした。まあ、断わられ、断わられ、参加者集めがこんなに大変だったのは久しぶりな気がします。
しかーし!!!その平日のお忙しい中、仕事を休んでまで来て下さった皆様。見学者を含め最終的には8人集まりました。参加メンバーによって有意義なワークショップになったわけですので本当に皆様には「感謝、感激、あめ、あられ」です。(って私も古い?!)

写真前回と同じメニューとはいえ、参加者は違うしましてや私は不参加だったので非常に評判のいいワークの後となると、アシスタントとはいえかなりのプレッシャーでした。しかも、参加者は私が日ごろ仲良くして頂いてる芝居仲間。もちろんライバルでもあります。うかつな芝居やワークショップの運営はできません。しかもわたし達ワークショップ企画側と参加者側両方にメリットがある一日にしたいというのが私の目標。さらに「就職ガイダンス」では見本となる一番手のプレゼンが…本当にワークショップ本番までは胃が痛くなる思いでした。

しかし、いざ始まってみるとゲームが進むにつれみんなの息がドンドン激しくなってきて真剣にのめり込んでいく。見ているだけでもドキドキしてしまいました。
「野菜メドレー」のいいにくさでみんなの笑顔が見れて、「ペットバトル」のいい大人のエプロン姿の情けないやらラブリーな感じが微笑ましく(やってるみんなはハードで汗だくだったけど)、「ペンキ屋」の人を探り合いながらフォローしあう人々の美しさ(笑)そして「就職ガイダンス」での真剣なプレゼンに学生になったつもりで真剣に質問をする参加者…あっという間に17時を回っていたというのが感想です。
写真リーダーのレポートを読んではじめて「MVP」を「VIP」って書いたって知りました。あんなに最終打ち合わせで「MVP」だよねって聞いて、下書きまでしたのに…とほほ。まあ、こんな私でも緊張してたってことでお許し下さいませ。

本当に参加者の皆様には感謝いたします。ありがとうございました。ワークショップ終了後、参加者から「楽しかった、面白かった、また参加したい」とこんなにも反響があったのは私も初体験です。
これからも今回にまけないようなワークショップを企画運営をできたらいいなあって1人酔いしれた池田景でありました。

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