△ 「よそびと診療所」シーン20


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上手が明るくなると観察室。そこから隣(舞台中央)の隔離検査室に横たわるロロップを覗き込む
ノノ、メル、ソルト、ベルル、シド、アテナ。後ろには重火器を持ったペックとメックが立っている。

ノノ 「今の所変化なし。」写真
メル 「きゃわゆい…飼ってもいい?」
メル以外 「ダメ。」
メル 「エサも散歩もトイレも、メルがちゃんとお世話するよ。」
メル以外 「ダメ。」
メル 「ぷ〜。」

シドに通信(矢追○一UFOスペシャルのジングル)が入る。みんなビビる。

シド 「はい。シドです。」
ペック 「着信音かよ。」
メック 「ビビったぁ。」
メル 「矢追純一からか?」

シド、その場から離れて通話する。

ソルト 「しかし脳波も読めず、サンプルも採れずじゃこれ以上どうにも…」
シド 「なんですって?!それじゃ…」

シドの大声にみんな驚く。

シド 「わかりました。対応致します。」

シド、通信を切る。深刻な表情。

アテナ 「どうしました?」
シド 「銀河連合から連絡です。連合の全艦隊が、こちらに向かっています。」
シド以外 「全艦隊が?!」
シド 「コルティナ隊もです。」
アテナ 「銀河連合軍最強部隊の?」
ペック 「って事は、まさか例の凶悪犯がこっちに?」
シド 「その様です。連合からの指示は、追って連絡が。」
ノノ 「凶悪犯がどうしたんです?」
アテナ 「脱獄してこの地球に向かったと。」
ソルト 「なんだって?!」
ベルル 「凶悪犯って誰なんです?」
シド 「まず、脱獄を手伝ったのはテロリストのイルージュ。」
ソルト 「イルージュってあの、幻覚を操って何千年も逃走し続けてる?」
シド 「ええ、しかし奴は自害したそうです。」写真
ペック 「自害?」
メック 「ならこっちに向かってるのは誰なんです?」
シド 「……トロンです。」
ノノ 「え…トロンってまさかあの…」

一気に場の空気が凍り付く。メルだけキョトン。

メル 「何にゃ?どうしたんにゃ?トロって誰にゃ〜?!」
アテナ 「トロネス・メロス、通称トロン。銀河史上最悪の犯罪者。破滅王と呼ばれている。」
メル 「銀河史上最悪…破滅王…トロトロ…メロン…」
ノノ 「トロネス・メロス。」
ペック 「しかし奴は永久収容されていたはずじゃ…」
シド 「収容していた小惑星プリスがイルージュに破壊されたそうです。」
メック 「小惑星が?!」
シド 「イルージュはトロンを収容したカプセルを奪って、逃走後に軍に追い詰められて自害。そこには既にトロンはおらず、宇宙船がワープした痕跡があった。」
ベルル 「ワープした先が地球…」
ソルト 「イルージュはトロンを脱獄させて何をする気だったんだ?」
アテナ 「まさかトロンを利用して、2万年前と同じ事を…」

全員息を呑む。

メル 「…2万年前?…何があったんにゃ?」
アテナ 「…トロンは大量殺戮装置ルーモを作り出し、ある惑星の全ての命を一瞬で奪った。」
メル 「うえっ!?なんでそんな事したんにゃ?」
ペック 「わからない。トロンは2万年間、黙秘を続けている。」
メック 「そのルーモがどんなものだったかすらもわかっていない。」
メル 「爆弾じゃないのか?」
ペック 「爆発物ではない。生き物の命だけを奪う装置だ。」
メック 「しかしそのルーモは事件後どこかに消え、未だに行方がわからない。」
メル 「わかんないことばっかじゃん。」
ノノ 「トロンが脱獄したのはいつです?」
シド 「地球時間で5日前。その後まっすぐ地球に向かったとすれば…3日前には地球に到着しています…」
ソルト 「3日前?…あ…墜落事故の日…」
メル 「え?じゃ、まさかロロップがトロトロ?」

全員ロロップを見て一歩下がる。

シド 「…あれが…トロン…?」
ペック 「…破滅王…?」
メック 「…リロ…&なんとかみたいな…?」
メル 「オハ〜ナ。」
ソルト 「いやいや、乗って来た宇宙船がこの銀河の物じゃないですから違うでしょ?」
シド 「それと…ドクター・ノノ、ちょっと。」

シド、ノノを隅に連れて行きヒソヒソ話す。

ペック 「待てよ?トロンじゃないとしても、こいつが…」
メル 「ロロップ!」
ペック 「…ロロップが殺戮装置って事は?…」
メック 「だとすれば今のうちに処理しておくべきでは…」
メル 「処理ってなんだ!殺すつもりか?!ロロップはそんなんじゃないぞ!!」
メック 「ないとは言い切れない。」
メル 「言い切れるもん!ロロップの目がそう言ってるもん!」
ベルル 「また目?」
ノノ 「え〜〜〜〜っ?!!!!」

突然のノノの大声に全員絶句する。ノノ、かなりうろたえ、落ち着かない動きに。

ノノ 「ヤヤヤヤヤヤバイヤバイヤバイヤバイどうしようどうしようどうしよう…」
シド 「やはりこうなりましたか…」
メル 「ノノ?どうした?」
ノノ 「うっ…!」

ノノ、動かなくなる。ソルト、ノノの様子を見る。

アテナ 「どうした?」写真
ソルト 「フリーズしました。」
ベルル 「フリーズ?!」
ソルト 「大丈夫、しばらくすれば戻ります。」
アテナ 「シドさん、先生に何言ったんです?」
シド 「いや、実は艦隊を引き連れて来る特使が、銀河連合の副長官で…」
アテナ 「副長官って…ミュン・アグラス副長官?!」
ソルト 「ノノ先生のお母様だ!」
メル 「ノノのママ?!そんなにおっかないのか?」
シド 「そりゃもう…かつて銀河最強の戦士と言われた方で…」
メル 「銀河最強の戦士?!きゃ〜!超ワクワク!!」
ベルル 「ちょっと待って、メルさん会ったことないの?」
メル 「にゃい。」
ベルル 「奥さんなのに?」
メル 「にゃい。」

シドにまた通信(矢追○一UFOスペシャルのジングル)が入り、またみんなビビる。

シド 「シドです。」
ペック 「もうそれ心臓に悪いって…」
シド 「わかりました、早急に。」

シド、通信を切る。

シド 「間もなく艦隊が到着します。到着次第、この診療所はシールドで隔離されます。」
アテナ 「我々は先に出迎えに。」
ソルト 「ラジャ。」
ペック 「こいつは…」

メルをチラ見すると睨んでいる。

ペック 「…ロロップはどうします?」
ソルト 「アルム合金の壁と監視システムがあるのでなんとかなるかと。」
シド 「わかりました。急ぎましょう。」

アテナ、ペック、メック、ハケる。

シド 「メルさん、上の診療所の皆さんにも状況を伝えて下さい。」
メル 「まかせろ。」

シド、アテナを追ってハケる。メル、モバイルで通信。

メル 「ロッサ。ロッサ?…ありゃ?つながらない…どうしよ?う〜ん…直接知らせに行こっと。」

メル、ハケる。

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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