△ 「宇宙パンダの冒険」シーン10


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明転すると、ツキノワグマのざくろを瀬名くるみが診察している。

ざくろ 「先生…おらはもう長くねえんでしょうが?…なんとなぐ…わかるんす…自分の体の事だがら。先生…正直に言ってくだせえ…おらの…おらのびょうきは…」写真

瀬名、溜め息。モバイルを出して通信。

瀬名 「あ、瀬名です。ツキノワグマのざくろだけど。…残念ながら…」
ざくろ 「やっぱり…」
瀬名 「食あたりね。」
ざくろ 「しょぐあたり…しょぐあたり?!」
瀬名 「薬用意しといて。」

瀬名、モバイルを切る。、

ざくろ 「しょぐあたりだったのすか〜!いがった〜! あ、(腹を抱えて)いででで…」
瀬名 「ざくろ〜。あんたディスプレー用の木の実食べたでしょ?」
ざくろ 「いやいや、おらは決してそんなもの…あ、たべたな。」
瀬名 「あれは体に毒じゃないけど、食べ過ぎたら体調壊すよ。」

通信が入る。

瀬名 「はい瀬名です。…え?動物たちが脱走?わかりました、すぐに戻ります。(通信を切る。)ざくろ、後で薬持ってくるからちゃんと飲むのよ。」

瀬名去る、

ざくろ 「いや、お腹減っても薬だけは飲みたくねんだよな。」

ざくろ、座る。

ざくろ 「でも取り合えす不治の病じゃなぐてほんどにいがったぁ。それにすてもこのメディカルセンターってとごはホントに落ち着かなねぇなぁ。」

ざくろ、横になると、ホッキョクグマのハラショが出て来る。疲れた様子で
ざくろの近くに座る。溜め息をつくと、ゆっくり振り向き、同時に振り向いたざくろと目が合う。

ざくろ・ハラショ 「うわあああああ!!!」

驚いて距離を取り睨み合う2頭。

ざくろ 「…白い…」
ハラショ 「…黒い…」
ざくろ 「…あの、あんだ…クマ、だべか?」
ハラショ 「はい、あなたも?」
ざくろ 「おらもだ。あんだ、何でそんな真っ白に?」
ハラショ 「なんでって…」
ざくろ 「けっこう、おどすよりなんだべか?」
ハラショ 「いや白髪じゃないです。けっこう若いです。」
ざくろ 「もの凄くショックな事があっだとか?」
ハラショ 「いえ…」
ざくろ 「じゃ、一体…?」
ハラショ 「いや、クマって基本白ですよね?」
ざくろ 「え?…いやいやいやいや、基本は黒だべ?」
ハラショ 「いやいやいやいや、基本は白ですって。あなたも元は白かったんじゃ?」
ざくろ 「生まれつき黒だぁ。」
ハラショ 「日に焼けたとか?」
ざくろ 「毛は日焼けしねべ。」
ハラショ 「汚れちゃったとか?」
ざくろ 「おらは毎日2回は水浴びすてるって!」
ハラショ 「じゃどうして…あ、ちなみにお名前は?」
ざくろ 「ツキノワグマのざくろと申すます。あんだは?」
ハラショ 「ホッキョクグマのハラショと申します。初めまして。」
ざくろ 「こつらこそ…ん?ホッキョクグマ?…」写真
ハラショ 「ツキノワグマ?…」

2頭少し考えて

ざくろ・ハラショ 「あ〜!」
ハラショ 「多分これ、あれですよ、元々の生息地が違うんじゃ?」
ざくろ 「はいはい、どっがで聞いた事あるような…」
ハラショ 「ですよね。」
ざくろ 「北極って、おらたつツキノワグマの故郷から遠いんだべか?」
ハラショ 「遠いんじゃないですかね?白から黒になっっちゃう位。」
ざくろ 「じゃ、その中間のクマって何色なんだべ?」
ハラショ 「え?そりゃやっぱり…灰色ですかね?」
ざくろ 「なんだべか?」
ハラショ 「あ!でももしかしたら、ほら、ざくろさんの胸のとこ白いじゃないですか。」
ざくろ 「ああ、ツキノワの形の部分。」
ハラショ 「これが、徐々に大きくなって来るんじゃないですかね?」
ざくろ 「ああ、なるほど、じゃ、中間はツキノワの部分が凄くでっかいって事だべか?」
ハラショ 「あるいは、この模様がどんどん増えて行くとか?」
ざくろ 「え?これが2カ所とか3カ所とかになって行ぐってか?」
ハラショ 「で最終的には全部白で埋まるとか?」
ざくろ 「ってことは、おらのこの部分がいっぺえ集まったのがハラショさんってことが?」
ハラショ 「ま、あくまで予想ですけどね。」
ざくろ 「ほんとは何色なんだべなぁ」

そこにイェーイェーが疲れた姿で入って来る。

ハラショ 「会ってみたいですよねぇ、中間のクマに。」
ざくろ 「会ってみてえなぁ。」

2頭が横を見ると、イェーイェーと目が合う。

ざくろ・ハラショ・イェー 「え〜〜〜っ?!!」

3頭びっくりしたまま沈黙。

ざくろ・ハラショ・イェー 「え〜〜〜っ?!!」

3頭言葉が出ない。

ざくろ・ハラショ・イェー 「え〜〜〜っ?!!」
ざくろ 「…もすかすて、これが正解?」
ハラショ 「これはまた…予想外の模様です…」
ざくろ 「あの、失礼ですが…あんだ、なにグマさん?」
イェー 「え?僕?僕はパンダのイェーイェーです。」
ハラショ 「パンダグマ?」
イェー 「あの、そのフォルムは、もしかして僕の仲間ですか?」
ざくろ 「多分な…」
イェー 「あー、さっき言ってたのはこの方たちの事ですね。んじゃやっぱり僕はクマなんですかね?」
ハラショ 「あ、私はホッキョクグマのハラショと申します。」
ざくろ 「おらはツキノワグマのざくろと申すます。」
イェー 「はじめまして。え?でもお二人とも、その体の色って?」
ざくろ 「いや、おらが黒で…」
ハラショ 「私が白でしょ。」
ざくろ 「で、生息地がう〜んと離れてっから色が違って…」
イェー 「ああ!つまり僕がお二人の中間辺りに住んでるクマって事ですね。」
ハラショ 「多分ですけどね。」
ざくろ 「あれ?ところでお二人は、なすて檻から抜け出せたんだ?」
イェー 「あ〜、それがですね、なんか怪しい男がいきなり部屋に入って来て…」
ハラショ 「え?もしかしてそのあと停電になって鍵が開いたとか?」
イェー 「え?何で知ってるですか?」
ハラショ 「私もそれで出て来れたんですよ!多分同じ人ですよそれ!」
ざくろ 「で、どうやってそいつらを追い出すたんだ?」
ハラショ 「そりゃもう「ガオオオ!。」ってやりましたよ。」
ざくろ 「やっぱ、猛獣の血が騒いだんだな?」
ハラショ 「そりゃもう。」
ざくろ 「あんたも猛獣の血で?」
イェー 「え?何ですか?猛獣の血って?」
ハラショ 「いや、だってうちら猛獣じゃないですか。」
イェー 「僕は猛獣じゃないですよ。」
ざくろ 「え?パンダグマって猛獣じゃねのか?」
イェー 「珍獣とは言われますけど。」
ハラショ 「珍獣?」
ざくろ 「じゃ、爪とか牙とかは?」写真
イェー 「え?」

みんなでイェーイェーの爪と牙を確認する。

ハラショ 「あるじゃないですか。」
イェー 「ありますですね。」
ざくろ 「それ猛獣だべ。」
イェー 「猛獣ですか?」
ハラショ 「猛獣猛獣。」
イェー 「そうか、僕は猛獣だったのですね…」
ざくろ 「でも「ガオオオ!」ってやらずにどうやって追い出したんだぁ?」
イェー 「いや追い出す前に出てっちゃったですよ。」
ざくろ 「なんだ。」
ハラショ 「そりゃよかった。」
ざくろ 「んだども、言ってみりゃその停電のおかげで、こうすてうちら出会えたって事だべ。」
ハラショ 「これって凄い事ですよね?」
ざくろ 「史上初の顔合わせだべ?」
イェー 「奇跡の対談ですね。」
ざくろ 「あ〜、病室でなければ、つまみとが用意さできたんだけどなぁ。」
ハラショ 「いやいや、おかまいなく。」
イェー 「僕もさっき笹いっぱい食べて来ましたから。」
ざくろ・ハラショ 「笹あ?!」
ハラショ 「笹ってあの、葉っぱの?」
イェー 「え、はい。」
ざくろ 「食べんのが?」
イェー 「え?食べないんですか?」
ざくろ 「いやぁ、笹は〜食べた事ねぇなぁ〜」
ハラショ 「私もないですねぇ。フルーツはちょいちょい食べますがね。」
イェー 「あ、フルーツは僕も好きです。主食ですからね。」
ざくろ・ハラショ 「主食う?!」
イェー 「え?みなさんは違うんですか?」
ざくろ 「主食は肉だべ。」
ハラショ 「肉ですよね。」
イェー 「肉?え?肉が主食ですか?」
ハラショ 「え、食べないんですか?」
イェー 「いや、主食にはちょっと…そうか、それでチャボさんたち、怖がってたんですね。」
ハラショ 「不思議ですよね?」
イェー 「え?」
ハラショ 「だって、ちょっと並んでみて下さい。」

3頭、ハラショ、イェーイェー、ざくろの順番に並ぶ。

ハラショ 「こういう並びですよね。」
イェー 「ええ。」
ハラショ 「うちの主食は肉で、ずっと来てここで笹とか食べるようになって、ずっと行って、ざくろさんの所でまた肉食になるって事ですよね?」
イェー 「そうですね。」
ざくろ 「(イェーイェーの辺りを指差して)この辺でなんかあったな。」
ハラショ 「確実に何かありましたね。」
ざくろ 「そうなっと、更にこの間のクマにも会いたぐねぇが?」
ハラショ 「どこら辺からベジタリアンになるのか調べたいですよね?」
イェー 「ですね。」

そこにアライグマのラスクが現れる。手にりんごを持ってキョロキョロしている。

ざくろ 「あれ?なんかちっこいの来た。」
ラスク 「水、水ないっすかね水。(3頭のクマたちと目が合い)お!…(間)…ち〜っす。」
3頭 「ち〜っす。」
イェー 「あの、君はだれですか?」
ラスク 「自分すか?自分はアライグマのラスクっす。」
イェー 「アライ…」
ハラショ 「グマって…」
3頭 「クマなの?!」
ラスク 「そっすね。」
ざくろ 「ちっこくね?」
ハラショ 「まだ子供?」
ラスク 「全然大人っす。」
イェー 「じゃ、どの辺に入るですかね?」
ざくろ 「色的には灰色だから(自分とイェーイェーの間を指さし)この辺だべか?」
ハラショ 「自分とイェーイェーの間を指さし)この辺とも考えられますね。」
イェー 「いや、そうなると途中で一回ちっちゃくなってからまたでっかくなったって事ですか?」
ざくろ 「そりゃ変だべ。」
ハラショ 「そもそもアライグマのアライってなんでしょう?」
イェー 「こう見えて気性が荒いですか?」
ラスク 「自分、おとなしいっす。」
ざくろ 「じゃ、何があらいんだべか?」
ラスク 「そんなことより、この辺に水ないっすか?」
ハラショ 「のど渇いてるの?」
ラスク 「違うっす、このリンゴ食べたいから洗いたいんすよ。」写真
イェー 「別に汚れてなさそうですけど。」
ラスク 「自分、何でも洗わないと気がすまないんす。」
3頭 「あ〜!だからアライグマ!」
イェー 「荒いんじゃなくて洗うほうだったです。」
ざくろ 「残念だけど、ここはメディカルセンターだから池も小川もねえなぁ。」
ラスク 「え〜まじすかぁ?」
ハラショ 「もしかして君の主食はフルーツ?」
ラスク 「いや、何でも食うっす。」
ざくろ 「なんでも?」
ラスク 「フルーツも野菜も肉も魚も食べるっす。」
イェー 「笹も?」
ラスク 「え?笹?笹なんか食い物じゃないっしょ。」
イェー 「ありゃ。」
ハラショ 「パンダぐまには近くなさそうですね。」
イェー 「あ!また誰か来るです。」

そこにレッサーパンダのフーフーがキョロキョロしながら入って来る。

フーフー 「まずいアル。みんなとはぐれちゃったアル。どうしようアル〜。」
ざくろ 「またちっこい。」
イェー 「こんにちはです。」
フーフー 「わあ!びっくりアル!…こんにちはアル。」
イェー 「君は誰ですか?」
フーフー 「うちはレッサーパンダのフーフーアル。」
ざくろ 「レッサー…」
ハラショ 「パンダって…」
3頭 「パンダなの?!!」
イェー 「僕と全然似てないです。」
ざくろ 「どっちかっつーとアライグマに近いっつーか。」
ラスク 「似てるけど違うっす。」
ハラショ 「でも、大きさとかシッポが長くてシマシマなところとか。」
ざくろ 「似てんな。」
イェー 「君の主食はなんですか?」
フーフー 「なんでも食べるアル。」
ざくろ 「雑食だ。」
ハラショ 「やっぱりアライグマに近いのでは?」
イェー 「笹は…食べないですよね…」
フーフー 「食べるアル。」
イェー 「やっぱり…」
フーフー以外 「笹食べるの?!!」
ざくろ 「やっぱりパンダ寄りだべ。」
ハラショ 「レッサーってのはどういう意味です?」
フーフー 「えっと、確か「小さめの」って意味だったアル。」
ラスク 「小さめのパンダっすか?」
ざくろ 「これもうパンダだべ?」
イェー 「いや、でもなんか納得しづらいです。」
ハラショ 「色がまたニューカラー入って来ましたよ。」
ラスク 「でも黒が多いっすからこの辺じゃないっすか?」
ざくろ 「そうすっと、大きさ的にこことのつながりがおかしくねが?」
フーフー 「でもシッポ的にはこうじゃないアルか?」
ハラショ 「待って待って、そうするとパンダから離れてしまいますよ。」

みんな思い思いに並びを言い合ってごっちゃごっちゃになる。

イェー 「ああもう、複雑すぎます〜!!」写真

緊急放送が入り、みんなの動きが止まる。

管内放送 「緊急連絡。各エリア、脱走した動物の捕獲を最優先。全ての動物を速やかに非常用シェルターに移動させて下さい。」
ざくろ 「捕獲だってよ。」
ハラショ 「やばい、捕まえられちゃいます!」
ラスク 「逃げるっす!」

みんなワーワー言いながら四方八方に走り回り去る。最後に檻の中で走り回るざくろが残る。

ざくろ 「わ〜っ!わ〜っ!わ…あ、そか、おらは脱走してなかったべ。」

暗転。

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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