「宇宙パンダの冒険」シーン８ 「宇宙パンダの冒険」シーン８トップページ > ページシアター > 宇宙パンダの冒険 > シーン８ 【公演データ】
照明が変わると園内。イェーイェーが出てくる。
イェー 「うわぁ。外はこんなになってたですか。結構広いんですねぇ。」
イェーイェー、台から降りるとそこにチャボのハイジが現れる。
ハイジ 「コッコッコッコッコ…」
イェー 「わ、なんか来た。鳥さんかな？」
ハイジ 「いや〜久々に外に出られたざます。前に出たのはあの時以来ざます。あの時あの時…ほらあの！…忘れたざます。とにかく外に出られてケッコウケッコウ大変ケッコウざます！」
ハイジ、イェーイェーと目が合って固まる。
イェー 「こんにちはです。」
ハイジ 「こんにち…キャー！！クマクマクマクマざます！！」
ハイジ、しゃがみ込む。
ハイジ 「あ…腰が抜けたざます…」
イェー 「大丈夫ですか？」
ハイジ 「ひぃ〜ざます！ひぃ〜ざます！お願いですから食べないで下さいざます！」
イェー 「食べる？僕があなたをですか？」
ハイジ 「だってクマざましょ？」
イェー 「クマ？クマってなんですか？」
ハイジ 「何言ってるざますか！クマはあなた…あら？あらららら？（立ちあがる）あなた、クマとちょっと違うざますわね？あ、聞いたことあるざます。ベジタリアンの白黒ぐま。えっと…そうざます！あれざます！あの！…忘れたざます。」
イェー 「僕はパンダのイェーイェーです。」
ハイジ 「そうざます！パンダざますパンダ！」
イェー 「あなたは鳥さんですか？」
ハイジ 「チャボのハイジざます。」
イェー 「チャボ？鳥さんじゃないですか？」
ハイジ 「チャボも鳥ざます。」
イェー 「やっぱり。…あ！そうだ！鳥さんならちょうどいいです！僕に飛び方を教えて下さいです！」
ハイジ 「え？飛び方ざますか？ん〜でも、チャボざますからあまり上手くは…」
イェー 「お願いしますです！」
ハイジ 「…わかったざます。」
イェー 「ありがとざます！…あ、うつったです。」
ハイジ 「じゃ、早速。先ずは羽をブワッと広げてバタバタってするざます。」
イェー 「ブワッと広げてバタバタ〜ッ！」
間
ハイジ 「羽は？」
イェー 「ないです。」
ハイジ 「じゃダメざます。」
イェー 「え〜。」
ハイジ 「羽もないのに飛べるわけないざます。」
イェー 「そこをなんとかです。」
ハイジ 「なんとかなるわけないざます。…あっ！！」
イェー 「え？何かいい案があったですか？」
ハイジ 「パンダも逃げ出せたって事は、他の動物も逃げ出したざますかね？」
イェー 「いや〜よくわからないです…」
ハイジ 「もし猛獣が逃げ出してたら…キャー！！恐ろしいざます！恐ろしいざます！食べられないうちに戻るざます！コッコッコッコッ！！」
ハイジ去る。
イェー 「あ〜…行っちゃった…ん？猛獣？猛獣ってなんだろ？食べられちゃうって言ってたけど、怖いのかな？…いやいやワイルドにいかなきゃダメです！何が来たって全然怖く…わ！なんか来た！」
イェーイェー、物陰に隠れる。アシカのタナカ（課長）とスズキが現れる。
スズキ 「課長！ダメですよ！戻りましょう！我々アシカは水の中では素早いですけど、陸じゃのろまなんですから。」
タナカ 「固いこと言うなよスズキ君。こんなチャンス滅多にないんだから。おお！見なさいよこれキリンですよスズキ君！首が長いですね〜。」
スズキ 「ほんとですね〜…って、キリンはどうでもいいんです！今頃飼育員さんたち探してますよ！」
タナカ 「きっと我々を首を長くして待ってるかもね。」
スズキ 「うまい！いやうまくない！課長！早く戻らないと…」
タナカ 「おおお！スズキ君！見て見て！ライオンだ！」
スズキ 「うわ！ホントだ！」
タナカ 「ホントにホントにホントにホントにライオンだよスズキ君！」
スズキ 「そうですね。」
タナカ 「近すぎちゃってどうしようスズキ君！」
スズキ 「どうもしません。」
イェー 「なんか大丈夫そうですね。」
イェーイェー、物陰から出てきてアシカたちに近づく。
スズキ 「課長。ここはガラス張りですから大丈夫ですけど、もし彼れが我々みたいに外に逃げ出したら絶対逃げられませんよ。」
タナカ 「大丈夫大丈夫。外に出られたのは我々だけだって。」
スズキ、タナカの後ろに近づくイェーイェーに気が付いて固まる。
スズキ 「がっ！！…」
タナカ 「ん？どうしたスズキ君。」
スズキ 「か、かちょ、う、うし…うし…」
タナカ 「牛？どこに？」
スズキ 「後ろ…後ろ…」
タナカ 「後ろ？」
タナカ、振り向くとイェーイェーと目が合う。スズキに向き直り
タナカ 「あははは、スズキ君、これは牛じゃないよ、これはクマ…」
タナカ、絶句してゆっくりイェーイェーを見る。
イェー 「こんにちわです。」
間。タナカ絶叫してスズキに抱き着く。
タナカ 「ク、クマだぁ〜っ！！！」
イェー 「いや、違うんです。僕は…」
タナカ 「近すぎちゃってどうしようスズキ君！」
スズキ 「どうにもなりません！」
タナカ、スズキを盾にする。
タナカ 「わ、私の肉は不味いです！彼の方が若いんで美味しいですよ！」
スズキ 「課長！なんてことを！やめてください！」
タナカ 「スズキ君すまん！君の事は一生忘れないよ！」
スズキ 「課長！」
イェー 「あの、ちょっといいですか？」
タナカ・スズキ 「はい！」
イェー 「僕、食べたりしないですよ。」
タナカ 「…え？」
スズキ 「…ほんとに？」
イェー 「はい。お肉すきじゃないです。」
タナカ 「え？…とか言っていきなりガブッ！って来るんじゃ…」
イェー 「しないですしないです。」
タナカ 「ほんとかなぁ…」
スズキ 「あ！そういえば聞いたことあります！ベジタリアンの白黒ぐまがいるって。」
タナカ 「ベジタリアンのクマ？」
スズキ 「確かパ…パ…」
タナカ 「パパ？」
スズキ 「違います！パ…パ…そうだパンダ！」
イェー 「ピンポ〜ン！正解です！」
タナカ 「いやまさか、パンは食べ物だよスズキ君。」
スズキ 「パンじゃありません。」
タナカ 「え？でも今パンだって言ったじゃない。」
スズキ 「パンじゃなくてパンダって言ったんです。」
タナカ 「ほらパンだって。」
スズキ 「パ・ン・ダです。」
タナカ 「あ、ああ、パ・ン・ダね。知ってた知ってた。」
スズキ 「うそですよね。」
イェー 「僕はパンダのイェーイェーです。」
タナカ 「私はアシカのタナカです。」
スズキ 「スズキです。」
イェー 「アシカ？」
タナカ 「我々はここで毎日ショーを見せてるんです。」
イェー 「ショー？」
スズキ 「課長はこう見えて人気者の大スターなんです。」
イェー 「へぇ〜。」
タナカ 「みんなから「ワイルドタナカ」って呼ばれてます。」
イェー 「ワイルドですか？！！」
タナカ 「え？」
イェー 「あなた、ワイルドなんですか？！！」
タナカ 「ええ、一応そう呼ばれてますが。」
イェー 「お願いです！ワイルドになる方法を教えて下さいです！」
スズキ 「は？」
タナカ 「どうしてワイルドになりたいんだい？」
イェー 「モテたいんです。」
スズキ 「う〜わ、わかりやすい。」
タナカ 「よし、いいだろう！」
スズキ 「課長、無理ですよ。アシカとパンダじゃ違いすぎます。」
タナカ 「いいじゃない。せっかく教えてくれって言ってるんだから。」
イェー 「ありがとうございます！」
タナカ 「まず、ワイルドさに欠かせないのは筋力だ。」
イェー 「筋力ですか。」
スズキ 「元々ありそうですけど。」
イェー 「どうやってつけるですか？」
タナカ 「一番良いのはスイミング！泳ぐことだ！」
イェー 「え？泳ぐ？僕泳いだ事ないです。」
タナカ 「なぬ？」
スズキ 「じゃ、泳げないんですか？」
イェー 「わからないですけど、水浴びくらいしかしたことないです。」
タナカ 「大丈夫大丈夫。水に入ってヒレをバタバタすれば泳げるって。」
スズキ 「課長。パンダにヒレはないです。」
イェー 「ないです。」
タナカ 「あ、そう。それじゃ両手をバタバタさせればいい。」
イェー 「こうですか？バタバタ〜。」
タナカ 「そう、そしてグルグル。」
イェー 「グルグル〜。」
タナカ 「うん。中々よろしい。」
スズキ 「課長…もうちょっと良いアドバイスは…」
タナカ 「う〜ん、そうですね〜。…そうだ、大事な事を忘れていた！何より大切なのは…」
イェー 「大切なのは？」
タナカ 「たくさん食べる事だ！」
スズキ 「え？いや、それはそうですけど…」
イェー 「それならできます！僕、食べるの大好きです！」
タナカ 「たくさん食べればパワーが出て、ワイルドへの道も…」
タナカのお腹が鳴る。
タナカ 「うっ…」
スズキ 「課長…」
タナカ 「そう言えば、飯、まだでしたねスズキ君。」
スズキ 「はい。でもこの辺には魚いませんよ。」
タナカ 「だね。腹か減っては戦はできぬだよ、スズキ君。」
スズキ 「そうですね。」
タナカ 「帰るか。」
スズキ 「そうしましょう。」
タナカ 「ということで、後は頑張ってなイェーイェー君。」
イェー 「え？行っちゃうですか？！」
タナカ 「悪しからず。アシカだけに。」
スズキ 「課長、行きましょう。」
タナカ 「今のイケてなかった？」
スズキ 「どこにも。」
タナカ 「どこにも…？」
タナカ、スズキ去る。
イェー 「あぁ〜…行っちゃったです。やっぱり飛ぶのもワイルドになるのも難しいですね。あーあ…僕も帰ろうかなです…」
イェーイェー去る。
（作：松本じんや／写真：はらでぃ）