△ 「悩める王子の惑星」シーン40


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照明、月夜の公園。手紙を持ったクレセントが出て来る。落ち着かない。メリールー、出て来る。反対ハケからランセントが出て来て隠れる。

クレセント 「メリールー!」写真
メリールー 「セレックさん。」
クレセント 「城の裏にあるこんな小さな公園、良く知ってましたね。」
メリールー 「地図に書いてあったから。頂いた手紙に。」
クレセント 「え?手紙?」

メリールー手紙を見せる。クレセント、持っている手紙と比べる。

クレセント 「同じだ。」
メリールー 「まさか…」
クレセント 「ランセント…仕組まれましたね…」
メリールー 「それじゃ…帰った方が…」
クレセント 「いや!せっかくですから。明日からはもうこんな風に会うのは難しくなるし。」

隠れているランセントにアーモンドが近づく。

アーモンド 「どう?」
ランセント 「今会った所。」
アーモンド 「頑張れ王子。」

王子、少々そわそわ。

クレセント 「…月が綺麗ですね…あ、しまったごめんなさい…」
メリールー 「いえ、なんとなくは見えますよ。これはこれで綺麗です。」
クレセント 「あの月、元々あそこになかったって知ってます?」
メリールー 「はい。小学校で習いました。確か太陽系から来たって。」
クレセント 「ガニメデという星です。800年前に星ごとワープして来た。最初、我々の祖先はあそこに移住し。この星に移って来た。」
メリールー 「ええ。」
クレセント 「この国が出来て700年。我々の先代達が苦労に苦労を重ねて築いて来たこの国を、ここで終わりにしたくはありません。僕は決めました、この星に残って戦います。命をかけてこの国を、そしてあなたを守ります。」
メリールー 「セレックさん…」
クレセント 「しかし、総攻撃が始まれば、本当に命を落とすかもしれない…だからここで…本当の事を言います。」
メリールー 「本当の事?」
クレセント 「僕は君にウソをついていたんだ…僕はセレックじゃない。」
メリールー 「え?」
クレセント 「僕の本当の名前は…クレセント・マクドネル…」
メリールー 「クレセントって…それじゃ。」
クレセント 「この国のダメダメ王子なんだ。」
アーモンド 「なんでダメダメつけるかな!」
ランセント 「しーっ!」
クレセント 「幻滅したかい?」
メリールー 「いいえ…びっくりしたけど…。あなたが誰であっても、私の気持ちは変わりません。」

ランセント、アーモンドガッツポーズ。クレセント、ホッとして脱力。

クレセント 「あぁ…良かった…」
メリールー 「でも…私にも言わなければならない事が…」
クレセント 「え?」
メリールー 「実は今日知ったのですが…私…ハナムラ家の子ではなかったんです…」
クレセント 「養子って事?そんなの…」
メリールー 「問題は本当の両親の事です。」
クレセント 「本当のご両親?」
メリールー 「私の両親は…ジモラス人なんです。」

ランセント、アーモンド無言で動揺。

メリールー 「私の体には敵の血が流れている。私はあなたにはふさわしくない…」
アーモンド 「そんな…」
ランセント 「これじゃロミジュリじゃないか…」
クレセント 「そんなことないよ。」
メリールー 「え?」
ランセント・アーモンド 「え?」
クレセント 「あなたが誰であっても、僕の気持ちも変わりません。」
メリールー 「王子…」
アーモンド 「よく言った王子!」
ランセント 「やっぱり兄さんはダメダメじゃない!やれば出来る子なんだ!」

メリールー、うつむく。

メリールー 「怖い…」
クレセント 「え?」
メリールー 「あなたが戦いに行って、もし帰って来なかったら…」写真

クレセント、何かを思いついた顔になり、自分の両手の小指を絡め

クレセント 「絶対負けニャイ!」
メリールー 「え?」
クレセント 「一人指切り。王家に代々伝わるおまじない。」
メリールー 「一人指切り?」
クレセント 「これで自分と約束するんだ。僕は絶対生きて帰る。」
メリールー 「はい。信じて待ちます。(ポーズを真似して)絶対負けニャイ!」

クレセント、メリールー笑顔に。2人で舞台の端まで歩いて行く。

アーモンド 「ウソの手紙でお互い呼び出すなんて、超古代のテクニックだけと。」
ランセント 「古きは新しきかな。うまく行って良かった。」

隠れていたニルス、シャーロット、カーティス出て来る。

ニルス 「良かった良かった。」
ランセント 「なんだ、みんないたの?」写真
カーティス 「良くねえだろ!メリールーはジモラス人だったんだぞ!」
ニルス 「国は国、個人は個人。あれを見てそう思いませんか?」
シャーロット 「メリールーも私達と同じ、この国の立派な国民よ。」
カーティス 「…ふん。納得行かねえ…」

突然、爆発音。

カーティス 「なんだ?!」
ニルス 「城の中?」

クレセント、みんなに気付く。

クレセント 「お前達いつから…」
ランセント 「そんな事より城へ!」
クレセント 「ああ!」
メリールー 「私も!」
クレセント 「頼みます!」

全員走り去る。

(作:松本じんや/写真:関口空子・はらでぃ)

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