△ 「悩める王子の惑星」シーン17


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再びライトフライヤー。ストップモーション解ける。

グラマン 「クレセントには一つ上の兄がいたんだが、殺されたんだ。」写真
ジャスミン 「まさか…」
グラマン 「ああ、3番目にやられた飛行隊員だ。ヴィンセントと言ってな。飛行隊の隊長だった。腕も良く、賢く、国民に大人気のカリスマ王子。死んだ時は国中が沈んだ。」
ジャスミン 「それで彼が王位継承者に?」
アーモンド 「まさか王位を狙って兄を殺した?」
グラマン 「可能性はあるがかなり低い。クレセントのあだ名は「泣き虫王子」。様々な才能を持ちながら何事にも自信がなく、直ぐに落ち込む。虫も殺せない王子だ。」

浮かない顔をしているクレセントにランセントが

ランセント 「宇宙中がなんと言おうと僕らの戦いは正しいんだ!敵を一人も殺していないじゃないか!」
クレセント 「ああ。」
ランセント 「それは誇らしい事だよ!ね!シャーロット!」
グラマン 「ランセントは兄を慕う明るい弟。しかし2人の兄を殺せば自分が王になれる事も事実。そして隣の女性、シャーロットに気がある。」
アーモンド 「へえ。でもそれは関係ないじゃん。」
グラマン 「シャーロットは死んだヴィンセントの婚約者だったんだ。」
アーモンド 「え?じゃあシャーロットを奪うために殺した?」
グラマン 「可能性はある。シャーロットは婚約者ではあったがしょっちゅうヴィンセントともめていたらしい。」
ジャスミン 「愛情のもつれで殺した?」
グラマン 「しかしこの3人については他の二人を殺す動機がみつからない。」
カーティス 「それが甘いってんだ。守るばかりで攻めねえなんて。いつまでたっても戦争は終わらねえぞ!」
ニルス 「カーティスさん落ち着いて下さい!」
グラマン 「カーティスとニルスは別の惑星からの移民だが、国王レベルで秘密が多い。奴もその星の王子だったが、ジモラスに滅ぼされてこの星で囲まわれているらしい。復讐心の塊だ。」
アーモンド 「ぶち切れキャラだしなあ。」
グラマン 「ニルスは元々カーティスの付き人だったらしい。なだめ役でもあるが、志はカーティスと変わらない。」
チヌーク 「銀河連合軍の調査が必ず来ます。真実が伝われば銀河じゅうの誤解が解けます。それまで辛抱しましょう。」
グラマン 「チヌークの出身は惑星スティング。今はジモラスの支配下にあり、彼は2年前に亡命して来た。平和主義者だが、やはりジモラスを憎んでいる。」
カーティス 「のんきな事言ってる間にやられちまうぞ!」
チヌーク 「この状況で攻めに出るなんてナンセンスです!」写真

2人の声が高くなり、棒読みになる。

カーティス 「てめえだって自分の星占拠されてんだろ!悔しくないのか!」
ニルス 「ちょっと!」
チヌーク 「悔しいですよ!でも攻めたら自滅します!」
ニルス 「あーあー…」
シャーロット 「いい加減にしなよ。」
カーティス 「シャーロット!一番悔しいのはあんただろ?」
ニルス 「落ち着いて!」
シャーロット 「ああ悔しいよ!」

シャーロットの声も変わる

シャーロット 「だけどチヌークの言う通り、攻めに出たら確実に自滅よ!」
アーモンド 「え?シャーロットさんも?」
グラマン 「惑星フューマー出身だ。」

カーティス、チヌーク、シャーロットの3人が言い合いになる。

ニルス 「ああ、メディシガー切れた!」

ニルスの声も変わる。

ニルス 「ランセントさん!持ってませんか?」

ランセントの声も変わる。

ランセント 「ああ、持ってる持ってる!」
アーモンド 「えええ?!ランセントさんも?!」
グラマン 「いや、いまのはつられただけだ。」

ランセントの配ったメディシガーでみんな落ち着く。

クレセント 「すまない…みんな僕が悪いんだ…」
ランセント 「もう、兄さん…」

ファルコ出て来る。

ファルコ 「お待たせしましたー!」
ランセント 「お!来た来た!兄さん食べよう!」
ニルス 「うわあ!いいにおいですねー!」
ファルコ 「今日のおすすめ、カニのパスタでーす!」
カーティス・ニルス 「カニーーーっ?!!!!」

カーティス、ニルス思いっきり退く。

チヌーク 「どうした?」
カーティス 「い、いや…その」
ファルコ 「5年振りにあがった貴重なカニだよ。」
ニルス 「わ、わたくしたち、極度のカニアレルギーなんです…」
ランセント 「え?初耳。」
ファルコ 「そっか。じゃ二人にはすぐ別のもの作るよ。」

ファルコ、ハケる

カーティス・ニルス 「お願いしまーす…」

みんな食べ始めるがクレセントは手を付けない。

ランセント 「兄さんうまいよこれ!」
クレセント 「僕の分もどうぞ…」
ランセント 「兄さん…」

ファルコ出て来る。

ファルコ 「皆さん美味しいですか?」
皆さん 「はーい!」写真
ファルコ 「それではその料理を作ってくれた方を紹介しまーす!」
皆さん 「え?」

メリールーが出て来る。

皆さん 「メリールー!」
メリールー 「気に入って頂いて嬉しいです。セレックさんは?」
ランセント 「兄さん!」

クレセント、おもいっきりパスタを食べ出す。

クレセント 「超うまいでふ!超うまい!」
メリールー 「良かった!」
ジャスミン 「今、セレックさんって…」
グラマン 「王子の偽名だ。」
ジャスミン 「偽名?」
ファルコ 「実は二人はお互いにラブなんですが、クレセント様は王子である事を隠してるんです。」
アーモンド 「なんで?」
グラマン 「王子の自信のなさだ。幸せに出来る自信がないって。」
アーモンド 「情けないなあ、僕が言って来る!」
グラマン 「待て待て!まだもう一つ問題が!」
ジャスミン 「なに?」
グラマン 「それは…いや、とにかくこの事を知ってるのはここにいる連中と、メリールーの妹達だけだ。極秘で頼む。」
ジャスミン 「ご両親にも?」
グラマン 「秘密だ。国王にもな。」

コルセア、入って来る。

コルセア 「おう!メリールー!ここだったか。」
メリールー 「お父ちゃん。」
ファルコ 「お世話になってます。」
コルセア 「こちらこそ。さ、帰るぞ。おう、あんたたちもここだったか。部屋用意してあっからいつでも来な。」
ジャスミン 「ありがとうございます。」

コルセア、メリールー去る。メリールー去り際にクレセントに手を振る。クレセントも振り返す。

ランセント以外の飛行隊員 「(ため息)はあ…」

ランセントみんなのため息を素早く集め、それぞれのグラスに入れる。

チヌーク 「何ですか?」
ランセント 「いや。なんでも。さ、飲んで飲んで!」

ダグラスが飛び込んで来る。少し慌てている。

クレセント 「ダグラス?」写真
ジャスミン 「だれ?」
グラマン 「副外務大臣だ。」
ランセント 「え?来てくれたんだ!」
ダグラス 「いえ、ちょっと仕事で。」
ランセント 「なんだ…」
ダグラス 「グラマン、ちょっといいか?」

グラマン、ダグラス、部屋の隅でヒソヒソ。

グラマン 「なんですって?!」

ダグラス、うなずき、出て行く。

グラマン 「ジャスミン、今日はここで。明日は城を案内する。」

グラマン、ファルコに金を渡し、足早に店を出る。

ファルコ 「まいど。」

全員怪訝そうにお互いを見合う。暗転

(作:松本じんや/写真:関口空子・はらでぃ)

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