△ 「心海のサブマリナー」シーン42


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ポセイドン艦内。

光彦 「わかんねえ。奥さんも娘さんも何で止めなかったんだ?」写真
山野 「家族だからさ。」
光彦 「家族の居なかった俺には分かる訳ないか。」
山野 「いや、今の時代の家族にも分からねえかもな。」

ほおずき、戻って来る。

ほおずき 「ただいまでありんす。」
まほろば 「無駄骨でしたね。」
ほおずき 「残念でありんすが。でもちいと…羨ましかったでありんす。」
まほろば 「は?」
ほおずき 「あれが家族の愛なんでやんすね…」
まほろば 「ああ、あなたは全く知らないんでしたね。」
川藤 「倉内の心の領海まで距離約100。」
山野 「全速前進。このまま突入。」
川藤 「よーそろー。」
光彦 「突入5秒前、4、3、2、突入します!」

ドンという音で艦が揺れる。同時に倉内がくしゃみをする。

光彦 「突入、成功です!」
川藤 「やるね、神くん。」
光彦 「あざす!」
山野 「倉内の現在地は?」
川藤 「警察病院手前200メートル。走って向かっています。」

倉内、走り出て来る。そのまま正面を向いて走るマイム。

山野 「夢で話したとかいう件は。」
ほおずき 「全く頭にありません。」
光彦 「あああもぉ!あれほど忘れるなって言ったのに!」
まほろば 「だから言ったでしょ。」
山野 「バッカスとの連絡は?」
ほおずき 「あれ?つながりません。」
山野 「通信障害か?」
まほろば 「なんだか暑くありませんか?」
山野 「海水温は?」
川藤 「30度です!」
山野 「何?まずいな…」
光彦 「何が?」
川藤 「海水温が25度以上だと信号が届かないんだ。」
光彦 「え?でも魚雷も使えないんですよね?!」
山野 「しかたねえな。ちょっとリスクが高いが、あれ使うしかないな。ボイスアンテナ伸ばせ!」
川藤 「ボイスアンテナ伸ばします!」
光彦 「なんすかそれ?」
川藤 「我々の声を信号にするんだ。かなり体力を消耗するからほとんど使われないけどな。」
ほおずき 「病院に到着しました。」

倉内、息をきらせながら病院に到着

ほおずき 「「ああ疲れたぁ。えっと病室どこだ?そうだ、受付に聞こう。受付受付、あった!」」
倉内 「すみません。竹内玲子の病室を教えて下さい。あ、これにですか。はい。」

倉内、来院者名簿に名前を書く。

山野 「ボイスマイク、スイッチオン!」
川藤 「ボイスマイク、スイッチオン!」
山野 「心を一つに!」
倉内 「707号室ですね。ありがとうございます。」
クルー 「ザワザワザワザワザワザワ…」

倉内、立ち止まる。光彦、理解し一緒にザワザワ言う。

倉内 「ん?…なんだ?…なんだか…ザワザワするな…」

倉内不審がりながらも去る。

川藤 「倉内、エレベーターに乗ります。」
光彦 「なんだよ、2〜3秒しか止められなかったじゃないか!」
まほろば 「その2〜3秒のずれで命を救う事もできるんですよ。」
川藤 「倉内、7階に到着。あ、まずいです、川口らしき人物も7階にいます!」
倉内 「え〜っと707、707は…こっちだ。」

倉内、去る。後から川口が出て来る。倉内に気付き、静かに後を追う。

山野 「バッカスと連絡は?」
ほおずき 「まだです!」

倉内出て来る。入口の表札を確かめる。

川藤 「倉内、病室に到着!」
倉内 「失礼します。」
倉内 「あれ?誰もいない?竹内さ〜ん。トイレかな?」
山野 「竹内は?」
川藤 「見当たりません!川口が近づいて来ます!」

倉内、メモに気付く。

倉内 「ん?なんだこれ?…犯人は川口さん…え?どう言う事?」
光彦 「竹内がメモを残してた!」
倉内 「いたずら書きか。」
光彦 「違う!犯人は川口だ!夢を思い出せ!」
クルー 「犯人は川口だ!犯人は川口だ!」写真
倉内 「ん?あれ?そういえばどこかでそんな事を…川口さんが犯人で…」
クルー 「そうだ!」
倉内 「小澤をあの日に殺して…」
クルー 「そうだ!」
倉内 「竹内さんも川口さんが…」
クルー 「そうだ!」
光彦 「思い出したぞ!」
倉内 「そうか、そうだったんだ…それじゃ竹内さんは…」

川口、出て来る。

川藤 「川口!病室まで3メートル!」
クルー 「倉内!うしろ!うしろ!」

倉内、ハッとして振り返ると川口が立っている。

川口 「倉内。」
倉内 「か、川口さん。…無事だったんですか?」
川口 「ああ、でもまだ追われている。竹内は?」
倉内 「さあ?トイレですかね?」
ほおずき 「「先にかわぐちさんが来て殺したんじゃないのか?」」
川口 「お前も危険だ。一緒に来てくれ。」
倉内 「え?…はい。」
ほおずき 「「今度は僕を殺す気だな。そうだ…」」
倉内 「そう言えば、竹内さんの意識が戻ったんで、本庁の方が聴取に来ますよ。さっき一階に何人か来てました。」
ほおずき 「口から出任せです。」
光彦 「うまく逃げろ倉内。」
川口 「そうか、下はまずいな。上の階は屋上だ。一旦隠れよう。」
倉内 「はい。」
光彦 「ついて行くな!」
クルー 「ついて行くな!」

倉内、一緒に出ようとする前に、ベッドのボタンを押し、ハケる。

ほおずき 「倉内、ナースコールボタンを押しました!自分が時間を稼いで人を集める気です!」
光彦 「倉内!」
山野 「大した根性じゃねえか。」

バッカス艦内。

根本 「布施くんどうだ?!」
布施 「間もなくです!」
根本 「魚雷の準備は?」
布施 「時間がなかったんで適当に何本か。」
根本 「電気が戻ったら直ぐに発射できるか?」
布施 「任せて下さい!」

屋上に倉内、川口、出て来る。

川藤 「倉内、川口、屋上に到着。」
川口 「そう言えばお前、竹内から預かってる物があったろ。」
倉内 「え?いや…」
川口 「竹内から聞いている。犯罪ルートの大事な情報だ。渡してくれ。」
光彦 「頼む!渡してもいいから逃げてくれ!」
ほおずき 「渡す気はありません!」
倉内 「あなたには…渡せません…」
川口 「何?…おいどうした倉内?」
倉内 「あなたに渡せば、きっと竹内さんの努力が水の泡になる。」
川口 「…何か根拠でもあるのか?」
倉内 「いいえ。…勘です。」
川口 「ははは、ちょっと待て。新人刑事のお前が勘に頼るのはまだ早いぞ。」
倉内 「とにかく渡せません!」
川口 「いいから渡せ!」

川口、倉内に銃を向ける。バッカス艦内。電気が戻る。

石川 「来た!」
布施 「直りました!」
根本 「ブイソナー!」
有沢 「川口、倉内に銃を向けています!」
根本 「魚雷発射用意!」
倉内 「やっぱりそうだったんですね。」
川口 「中々いい勘してるな、倉内、さあよこせ。」
倉内 「嫌です。」
川口 「なら…殺して奪うしかないな。」写真
根本 「魚雷連続発射!」
布施 「発射!」

複数の魚雷発射音

石川 「魚雷の種類は?」
布施 「ポーズ魚雷です!」
根本 「ナイス!」
クルー 「ナイス!」
川口 「言ったろ。正義感に潰されるなって。死ね。」

魚雷の着弾音と共に川口がポーズをつけて動き出す。

川口 「フライングゲット。」
倉内・川口 「え?」

着弾音

川口 「とびます!とびま…」

着弾音

川口 「どうしてそういう事言うのか…」

着弾音

川口 「ぜったい負けニャ…」

倉内が飛びかり、もみあいになる。

倉内 「うわあああ!」
川口 「何だこれは?!」

川口、振りほどいて銃を構えるが着弾音。

川口 「みやさこ〜で…」

着弾音

川口 「みやおすすむ〜で…」

再びもみあう。また振りほどいて銃を構えるが着弾音。今度は、床に銃を撃ちまくりながら

川口 「そんなのかんけえねぇ!そんなのかんけえねえ!」

着弾音。

川口 「イエス、フォーリンラ…」

またもみ会う。

岡田 「屋上にお客さん2名です!」

川口、また振り払い、倉内に銃を向けた瞬間、浜崎が飛び出しで銃を撃つ。川口腕を打たれ銃を落とす。

川口 「うあっ!」

バッカスにも衝撃波。

クルー 「うわあ!」

浜崎の後ろから竹内も現れ、倉内にかけよる。浜崎は川口に手錠をかける。

竹内 「倉内!」
浜崎 「川口、確保しました!」
倉内 「竹内さん良かった無事で!」
ほおずき 「倉内、無事です!」
山野 「川口は?」
岡田 「かすり傷です!しかし、今の衝撃で本艦の浸水が激しくなりました!」
紀之 「エンジンも限界です!」
石川 「急速浮上!救命ボート用意!」
竹内 「倉内達がが来る前に、浜崎警視が私を保護してくれたの。」
倉内 「じゃ、浜崎さんは…」
浜崎 「最初から川口をマークしてたの。グルだと思われてたみたいだけど。」
竹内 「申し訳ありませんでした。」
浜崎 「さ、行きましょう。」

4人ハケる。バッカスのクルーは階段で次々に上に上がりハケて行く。

石川 「みんな救命ボートに乗れ!」
岡田 「バッカスが海面に浮いていられるのはわずかです!」

最後に根本が階段を上がろうとした時に、大きな音と共に艦が揺れみんな倒れる。

クルー 「うわあ!!」写真

勢いでハッチが閉まる。

石川 「ハッチが閉まったぞ!」
岡田 「まずい!艦長がまだ!」

石川、岡田ハッチを開けようとするが、壊れて開かない。

石川 「艦長!くそお!開かない!」
根本 「行け!沈没に巻き込まれるぞ!」
石川 「艦長!」
根本 「行けえ!!」
岡田 「ダメだ!沈みます!行きましょう!」
石川 「ちっくしょおお!」

岡田、石川、ハケる。

根本 「…ここまでか…里子…秋子…済まない…」

根本、ハケる。

川藤 「バッカスが沈みます!中には艦長だけが取り残されています!」
山野 「何だって?!」
光彦 「そんな…」

川口、浜崎、倉内、竹内出て来る。反対側から瀬名が出て来る。

瀬名 「倉内くん!」
倉内 「ここみ先輩!」

一瞬の隙に、川口が浜崎の腹をなぐる。

浜崎 「うっ!」

川口、銃を奪い走って瀬名を人質に取る。

倉内 「先輩!」
瀬名 「倉内くん!」
浜崎 「川口!」
ほおずき 「川口が銃を奪って人質を取りました!」

クルー動揺

川藤 「もう、我々にできることはありません!」

救命ボートのクルー達も出て来る。

石川 「こんな事になるなんて!」
川口 「よくも…よくも…」
浜崎 「止めなさい。もう何をしても無駄よ。」
川口 「ははは。そうかもな…死ぬしかないかもな…」
竹内 「川口さん!」
川口 「だが、これじゃ死んでも死にきれない。倉内、お前に復讐してからにする。」
倉内 「川口さん!」
川口 「こいつを道ずれだ。」
浜崎 「止めなさい!!」
川藤 「あれ?魚雷推進音!2機!」
山野 「何?!」
川藤 「川口の海域からです!」
光彦 「艦長が?!」
川口 「死ね。」

倉内飛び出す。

倉内 「やめろおおお!」

着弾音。川口、瀬名を離して正面を向きポーズ。

川口 「月にかわってぇ、おしおきぃ…」

の、ポーズで拳銃を撃つが、跳弾して胸に当たる。

川口 「うっ!」

川口、倒れる。

浜崎 「川口!」

浜崎、竹内、川口に駆け寄る。倉内、瀬名に駆け寄る。

川藤 「川口、撃たれました!っていうか…」
川藤・浜崎 「跳弾した弾が自分に当たった?」
光彦 「おれと同じだ…」
岡田 「川口が死ぬぞ!」
石川 「急げ!海域出るぞ!漕げ!」
ボート組 「うおおおおお!!」

救命ボート組は必死にオールで漕ぐ。

川口 「こんな…こんな…」
瀬名 「先生達呼んで来る!」
倉内 「ここみさん!」
瀬名 「これが私の仕事。」

瀬名、走り去る。

石川 「よし!海域から出たぞ!」写真

ボート組脱力。

川藤 「まずい!魚雷が!」
光彦 「え?」
川藤 「石川さん!もう一発の魚雷が反れて真っすぐそっちに向かってます!」
ボート組 「ええええ?!」
石川 「漕げえ!!」
ボート組 「うおおおおおお!」
光彦 「母さん逃げろ!」
有沢 「え?今母さんって…」
川藤 「当たります!」

水しぶきの音。

ボート組 「うわあああああ!」
川藤 「有沢さん!!」
山田 「紀之さん!!」
ほおずき 「みなはん!」
石川 「…大丈夫だ!爆発しなかった!」
川藤 「え?」
ほおずき 「助かったでありんすね?!」

魚雷が流れて来る。

岡田 「魚雷が浮いてるぞ。」
布施 「あ!これ、囮魚雷だ!だから爆発しなかったんだ!」
光彦 「良かったぁ…」
川口 「こんな…ばかな…」

川口、息を引き取る。

竹内 「川口さん!」
川藤 「川口、死亡。川口の海域、消滅しました…」
浜崎 「ほんとに…ばかよあんたは…」

上の明りが消える。

石川 「気を付け!」

全クルー気を付け。

石川 「根本艦長に敬礼!」

全クルー敬礼。

光彦 「艦長…」
山野 「根本…」
石川 「根本…済まない…。」
全員 「艦長…」

突然、囮魚雷のふたが開き、根本が飛び出す。

ボート組 「うわあああ!」
根本 「ああ!死ぬかと思いましたよ!死んでますけど。」
ボート組 「艦長!!」
ポセイドン組 「艦長?!」
光彦 「無事なんですか?!」
まほろば 「そんな事って…」写真
石川 「魚雷に入って脱出を?」
布施 「でもどうやって?魚雷に入ったら発射スイッチ押せないじゃないですか!」

根本、ポケットから装置を出す。

布施 「あ、これ!!」
石川 「没収した魚雷のリモコン!」
布施 「それじゃ…」
根本 「魚雷に入ってから押しました。君の御陰で命拾いしましたよ。死んでますけど。」
光彦 「よかった、これで…」
ほおずき 「みんな助かったでありんす!」
まほろば 「まったく…とんでもない連中ですよ…」
根本 「状況終了!帰還しましょう!」
全員 「了解!」

暗転。

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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