△ 「心海のサブマリナー」シーン7


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光彦、サスに入る。

光彦 「死んでから七日間、おれの魂は人間界に留まった。初七日…とか言うやつ?身寄りの無いおれの遺体は役所に引き取られて火葬された。自分の体が焼かれる光景って、なんか複雑で妙な気持ちだった。この世に大した未練もなかったから、七日間ボ〜っと過ごしてしまった。そして今日が八日目。おれの進路が決まるらしい。」

サスが消え、まほろばが傍らに来る。

光彦 「とかい?」写真
まほろば 「はい。天国と地獄の間の世界です。」
光彦 「都会って、こんな閑散としてるのに?」
まほろば 「あなたの思っている都会ではなく、ひらがなの「と」に世界の「界」で「と界」。」
光彦 「なにそれ?」
まほろば 「さて問題です。天国と地獄の間には何がある?」
光彦 「え?だからこの世界でしょ?」
まほろば 「ブブーっ!」
光彦 「え?なんだ?中間だから中国?」
まほろば 「ブブーっ!」
光彦 「間国?」
まほろば 「ブブーっ!」
光彦 「なんだよわかんねーよ、降参!」
まほろば 「正解は、ひらがなの「と」です。」
光彦 「え?」
まほろば 「天国「と」地獄。」
光彦 「え?それで「と界」?うわ、くだらねぇ。」
まほろば 「名付け親は坂本龍馬さん。」
光彦 「さ、坂本龍馬?!」
まほろば 「確かお好きでしたよね?」
光彦 「そりゃもう!昔アパートでこっそり飼ってた猫にも龍馬って名前つけたり…」
まほろば 「くだらねぇですか?」
光彦 「いや…あれだ、噛み締めると、中々粋なネーミングだね。…え?あれ?でもおれ…」
まほろば 「自分は地獄に行くと思ってましたね?」
光彦 「え?」
まほろば 「スリや空き巣の常習犯だから。」
光彦 「まあ…」
まほろば 「確かにあなたのマイナスポイントはかなりのものですが、直で地獄って程じゃありませんね。2歳で捨てられて孤児院育ちってところも、多少考慮されている様ですし。」
光彦 「マイナスポイントって?」
まほろば 「生きている間に犯した罪のポイントです。この世界でその罪を償い、マイナスポイントが無くなった時点でやっと天国に行けるのです。」
光彦 「償うってどうやって?」
まほろば 「仕事をして頂きます。」
光彦 「仕事?」
まほろば 「はい。お金を稼ぐ様にポイントを稼いで頂きます。」
光彦 「チッ、死んでからも仕事かよ。」
まほろば 「無理にやらなくて結構ですが「償う意志なし」として即地獄行きです。」
光彦 「地獄ね…どうでもいいや…地獄上等…仕事なんてしたくねぇし。」
まほろば 「地獄をご存知で?」
光彦 「知らねぇけど、想像くらいは…」
まほろば 「想像ですか。」

まほろば、タブレットの様な物を取り出す。

光彦 「え?何これIpad?」
まほろば 「窓ですよ。地獄の。」
光彦 「地獄の窓?」
まほろば 「御覧になります?チラッと。」
光彦 「見れんの?」写真

光彦、タブレットを覗き込む。まほろばが画面をタッチしたその瞬間、凄まじい地獄の音や光が窓からもれる。
光彦、絶叫。まほろばがもう一度タッチすると音と光が消え、光彦、真っ青。

光彦 「…仕事下さい。」
まほろば 「皆さんそうおっしゃいます。はいどうぞ。」

まほろば、光彦に書類を渡す。

光彦 「何これ?」
まほろば 「あなたの仕事です。」
光彦 「え?もう決まってんの?」
まほろば 「はい。この世界には就職難はありませんが、そのかわり仕事は神様が選びます。」
光彦 「なんだよそれ。」
まほろば 「嫌なら…」

まほろば、タブレットを見せる。ちょっとだけ地獄の音と光がもれる。

光彦 「やります!」

光彦、書類を受け取る。

光彦 「え?潜水艦乗組員?」

二人ハケる。

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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