△ 「心海のサブマリナー」シーン4


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明転。とぼとぼと歩いて来た光彦がサスの中に立ちすくむ。ゆっくり周りをみわたしている。

光彦 「ここは…」写真

まほろばが現れる。

まほろば 「神光彦さんですね。」
光彦 「え?」
まほろば 「無事に来られて良かったです。」
光彦 「誰あんた?」
まほろば 「初めまして。まほろばと申します。」
光彦 「え?…ろば?」
まほろば 「ろばの一種じゃないですよ。」
光彦 「なんでもいいけど、ここどこ?」
まほろば 「よく思い出して下さい。ここに来る前、あなたどこにいました?」
光彦 「ここに来る前?…え?…えっと…あ…小澤さんと仕事をしてて…そしたら…そうだ警察が…」
まほろば 「はいはい。」
光彦 「そしたら変な若い刑事みたいのが飛び込んで来て、そのせいで銃撃戦になって…」

光彦、ハッとしてシャツをめくり

光彦 「あれ?」
まほろば 「何か?」
光彦 「傷がない。」
まほろば 「傷。」
光彦 「弾があたったんだよ胸に!」
まほろば 「おぉ、リーチ。」
光彦 「…え?…まさか…おれ…死んだ?」
まほろば 「はい、ビンゴ。」
光彦 「そんな…それじゃここは…。」
まほろば 「はい。あの世の入口です。」
光彦 「あの世…うそだろ…」
まほろば 「残念ながら本当です。」
光彦 「だって、死んだらなんとかっていう川を渡るとか…」
まほろば 「三途の川。」
光彦 「そうそう。」
まほろば 「もう渡って来られましたよ。」
光彦 「え?そうだっけ?あ〜なんかそんな気も…」
まほろば 「皆さんそんな感じです。」
光彦 「…待てよ…もしかして、これ、手品の番組かなんか?オレを催眠術か何かにかけて…」
まほろば 「残念ながら違います。」
光彦 「でもあんた…」

光彦がじろじろ見ているのに気付き

まほろば 「私、マジシャンじゃないです。」
光彦 「え?まじ?」
まほろば 「まじ、マジシャンじゃないです。」
光彦 「じゃなにもんよあんた?えっと…おふろば…」
まほろば 「まほろばです。ま、簡単に申せばあの世の案内人です。」
光彦 「案内人?」
まほろば 「とりあえず、あなたは死んだ事を自覚してらっしゃる。ラッキーですよ。」
光彦 「ラッキー?どこがラッキーだ!銃で撃たれて死んだんだぞ!しかもこの若さで!何で…」
まほろば 「来られない方もいるんです。ここに。」
光彦 「え?」
まほろば 「自分が死んだ事に気付かなかったり、恨みつらみが強かったりすると。悪霊や怨霊、地縛霊等になって地上を彷徨い続けます。そうなったら、こちらから救う事はできませんので。」
光彦 「地縛霊…。」写真
まほろば 「なりたかったですか?」
光彦 「いや…」
まほろば 「ならラッキーです。」
光彦 「え?…う、う〜ん…」
まほろば 「納得できませんか?」
光彦 「だってさ、いきなり色々言われてもさ、おれ死ぬのなんか初めてだし…」

まほろばと目が合い。

光彦 「…当たり前か。」
まほろは 「当たり前ですね。」

光彦、ため息。

光彦 「まじで死んじまったのか…あぁ…何だったんだ?…おれの人生って…」
まほろば 「申し訳ありませんが、あまり時間がないのでとっとと参りましょう。」
光彦 「え?どこに?」
まほろば 「申し上げた通り、ここはあの世の「入口」ですから。死んでからも色々手順がございますんで、ささ。」
光彦 「手順?」
まほろば 「あ、ちなみにあなた、撃たれたんじゃありませんよ。」
光彦 「え?何言ってんの?撃たれたって!だからこんなとこに…」

まほろば、光彦に耳打ち。

光彦 「…え…うそぉ…」
まほろば 「ほんとぉ。ささ。」

まほろばハケる。

光彦 「それって…最悪じゃん…」

光彦もハケる。

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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