△ 「ヴァンパイア・ブリード」シーン7


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照明が変わる。里子とネムは座り、鬼太朗は立って話しをする。

里子 「こちらの調べでは確かに、血の三ヶ日の犯人達はヴァンパイアでした。一応三日間のうちにヴァンパイアの処刑部隊が犯人全員を始末しましたが、元ヴァンパイアハンター達との緊張は未だに続いています。」写真
鬼太朗 「そりゃ千人以上人間を殺すなんて、調停以降初めてだもんな。」
里子 「それもありますし、もっとまずい事もわかったんです。」
ネム 「何?」
里子 「犯人達も全員、処刑部隊の隊員だったんです。」
鬼太朗 「なんだって?」
ネム 「ヴァンパイアの処刑部隊が人間を惨殺したって事?」
鬼太朗 「超穏やかじゃないね。」
ネム 「でも、なんとなく繋がって来たわ。実はね、その処刑部隊のトップが私達の親友でね。」
鬼太朗 「時止めともつながりあるんだ。」
里子 「父さんとも?」
ネム 「うん。その親友が極秘情報を教えてくれたの。今回の事件の黒幕は自分達の仲間だって。」
里子 「誰なんです?。」
ネム 「それは教えてもらえなかった。でも任務で行くルーマニアから戻ったら、妖怪にも協力してほしいって言ってたの。」
里子 「いつ戻るんです?」
ネム 「…戻らない。」
里子 「え?」
ネム 「四日前にルフトハンザの旅客機墜落事故があったでしょ。あれに乗ってたの。」
里子 「ええっ?!」
鬼太朗 「しかも死んだその親友が、事件の黒幕って事にされちまったんだ。」
里子 「それって、本当の黒幕に暗殺されて濡れ衣を…」
鬼太朗 「恐らくそうに違いないが、その親友と繋がっていた我々もグルだと思われちまってる。」
里子 「それじゃ…」
ネム 「私たちも処刑部隊に命を狙われてるのよ。」
里子 「そんな!」
鬼太朗 「でも俺たちもそんなにバカじゃない。親友の話しを聞いた時点から、裏で色々手をまわして黒幕について調べてる所だ。」
ネム 「今わかっているのは、黒幕がなんらかの儀式をこの界わいで行おうとしているって事。」
鬼太朗 「しかし結界に守られていて、発見も阻止も難しい。そこで、結界を破れる里子の力を借りに来たってわけ。」
里子 「なるほど。」
ネム 「本当なら鬼太朗と二人でもなんとかなるんだけど、今こいつ、持病で調子悪くてね。」
里子 「病気?大丈夫なんですか?」
鬼太朗 「大丈夫大丈夫!」
ネム 「で、悪いんだけど動きがあるまでここで待機させてほしいの。」
里子 「うちはかまいませんよ。」
鬼太朗 「ごめんね、里子まで巻き込んじゃって。」
里子 「私も一応四天王の一人ですから、力になれるなら喜んで。」
ネム 「今は三天王だけどね。」
里子 「そうか、つむじさん、引退しちゃったんですよね…今どこに?」
鬼太朗 「メキシコだって。あっちの妖怪の調査してるとか言ってたな。」
ネム 「こいつふられたんだよ。」
里子 「ふられたんですか?!」
鬼太朗 「だからふられてないし!」
ネム 「どうせ「つむじ。ゲゲゲの女房にならないか?」とか言ったんでしょ。」
里子 「え〜っ!そんなこと?」
鬼太朗 「言ってないし!話し作るな!(ピキーン!)ん?」
ネム 「何?」
鬼太朗 「妖気だ。」
ネム 「ホントだ。」
里子 「2人?」
鬼太朗 「ああ。」
ネム 「処刑部隊?」
鬼太朗 「かもな。里子はここに。」
里子 「はい。」

鬼太朗、ネム、奥へ。奥から様々な格闘音が聞こえ、しばらくして夏子を鬼太朗が、あずきをネムが連れて出て来る。

夏子 「いたたたた。」
あずき 「すんましぇん!すんましぇん!」
鬼太朗 「お前ら何もんだ?」
あずき 「あ、あたすたつは…」写真
ネム 「ああっ!。あんたたち!」
夏子 「お久しぶりです!」
あずき 「ネムねえさん!」
ネム 「あずき!夏子!」
鬼太朗 「知り合いか?」
ネム 「子供の頃よく遊んでやった二人。」
夏子 「雪女の夏子です。」
里子 「雪女なのに夏子?」
夏子 「8月生まれなんで。親が単純で。」
あずき 「あずき洗いのあずきです!」
里子 「こっちはストレートだ。」
あずき 「親がめんどくさがりやで。」
鬼太朗 「わかりやすい。」

立子、お茶を運んで来る。

立子 「お茶遅くなりました。あらあら、もう二人増えちゃったのね。今お持ちしますね。」

立子、去る。

ネム 「で?なんであんた達がここに?」
あずき 「あたすたつ、妖鬼四天王のオーデションに来たんです!」
ネム 「オーディション?」
鬼太朗 「やってないけど。」
あずき 「あたすたつ!四天王の残りの一人になるために来たんだぁ!」
夏子 「時止め童のうちがこの辺にあるって聞いて来たんだけど、この家、全然みつからなくて…」
あずき 「浅草来てから一週間探しまわって、やっと辿り着いたんだぁ。」
ネム 「一週間?」
里子 「あ、この家、普段結界張ってあるから。」
ネム 「なんで結界なんか?」
里子 「こうゆう方々が引っ切りなしに来るんで。」
ネム 「あぁ…」
あずき 「あたすたつ本気なんですぅ!見るだけ見て下さい!」
鬼太朗 「う〜ん、気持ちはわかるんだけど、今それどころじゃないんだよね。」
ネム 「そうよ。命の保証もできないし。」
夏子・あずき 「覚悟の上です!」
ネム 「遊びじゃないのよ!」
夏子・あずき 「覚悟の上です!」
ネム 「とにかく今はだめ!二人とも一度故郷に帰りなさい!!」
夏子 「合コン仕切ります。」
ネム 「見るだけ見てあげましょう。」
鬼太朗 「お〜い!」

ネム、舞台中央へ

ネム 「さ、相手になるわよ。」
夏子 「まずは私から。」

ネム、夏子、ファイティングポーズ。奥から声。

ダーク 「ちょっと待ったあ〜っ!」

ダーク登場。

ダーク 「その人のお相手はオレだ!」
里子 「誰だこいつ?!」
ダーク 「オレの名はダーク!ヴァンパイアだ!」
全員 「ヴァンパイア?!」

全員ファイティングポーズ。ネムと鬼太朗はなにやらアイコンタクト。

ダーク 「オレの能力は『ヘビーメタル』。体を自由に金属に変えられる!」
あずき 「なっちゃん!」写真
ダーク 「なっちゃん?なっちゃんか。いいか!オレはめちゃくちゃつえ〜ぞ!だからオレと…」

ダーク、夏子に近づきファイティンクポーズ。そして右手を素早く出し

ダーク 「…つきあって下さい。」

全員唖然。

夏子 「…は?」
ダーク 「ぶっちゃけ一目惚れっす!ああ一目惚れっす!このオレの熱い熱い熱い想いを君に…」

夏子、息を一吹き。ダーク、一瞬で凍る。

里子 「熱い想いを瞬間冷凍。」
あずき 「じゃ次はあたすの番!」

あずき、息を一吹き。氷が溶ける。

ダーク 「熱っ!熱っ!」
里子 「氷男を瞬間解凍。」
ダーク 「待て待て!オレは穏健派だ!妖怪ラブ!人間ラブ!なっちゃんラーヴ!」
夏子 「…寒い。」
里子 「雪女に寒いって言わせたよ。」
ネム 「ある意味すごい。」

立子、お茶を持って入って来る。

立子 「はい、お待たせしました。あらあら、また一人増えてる。すぐお持ちしますね。」

立子去る。

ネム 「あんた何しに来たの?」
ダーク 「オレも、四天王のオーディションに来たんだ!」
鬼太朗 「うん、やってないけどね。」
ダーク 「で、この場所探してたら彼女に出逢って、一目惚れして、フラフラついて来たらなんとオーディショション会場!」
鬼太朗 「うん、違うけどね。」
ダーク 「やっぱり君はオレの幸運の女神様だあああ!」

ダーク、夏子に近づくが、夏子、ダークを瞬間冷凍。更にあずき、ダークを瞬間解凍。

ダーク 「熱っつ、さむっ、熱っつ、さむっ」
里子 「大丈夫?」
ダーク 「…はははは…出直して来ます。」

ダーク去る。

里子 「ヴァンパイアにも色んなのいますね。。」

立子、お茶を持って入って来る。

立子 「あら、さっきの方もう帰っちゃったの?今度は急いで持って来たのに…」

ピキーン!

鬼太朗 「また妖気だ。」

舞台端からストーカーが覗いている。

あずき 「あ!あいつだぁ!」
ネム 「え?」
夏子 「あずきのストーカーです。」
里子 「ストーカー?」

ストーカー、隠れたり覗いたり。

鬼太朗 「あいつも妖怪だな。」
ネム 「ちょっとあんた!」

ストーカー、逃げる。

ネム 「あ、逃げた。」
あずき 「逃げ足だけははえぇんだぁ。」
鬼太朗 「あれ?あいつどこかで会った事…」

奥から悲鳴。

ストーカー 「うわあ!何すんだ!やめろぉ!うわぁああっ!」写真
夏子 「今の…」
あずき 「ストーカーの悲鳴?」
里子 「また誰か来ます!」

全員ファイティングポーズ。そこにあげぱんが入って来てみんな驚く。
あげぱん、舞台中央に来て満足気にパチンパチンと手のひらを叩き、腰に手をあてる。

あげぱん 「ぬ〜ん。」
ネム 「また変なのが…。」
里子 「母さん、すぐに結界張り直して。」
立子 「そうね。(行こうとして)お茶は?」
里子 「いらない。」
立子 「そうね。」

立子、去る。

鬼太朗 「お前…あげぱんか?」
あげぱん 「ぬん!(うん!)」
ネム 「あげぱん?」
鬼太朗 「妖怪袖引きの血を引いている現代の妖怪だよ。」
里子 「袖引きって、後ろから着物の袖を引っ張るって妖怪?」
鬼太朗 「こいつは着物の袖じゃなくて別の物を引っ張る。」
夏子 「何を?」
鬼太朗 「腰履きやローライズのパンツを後ろからいきなり引き上げる。」

あげぱん、ジェスチャーでやって見せる。

あげぱん 「ぬ〜〜ん!!(うりゃあ)」
あずき 「…それだけ?」
あげぱん 「ぬん。(うん)」
夏子 「あ!でももしかして、さっきのストーカーの悲鳴って…」
あげぱん 「ぬん、ぬん!(ぼく、ぼく!)」
あずき 「ええっ?やっつけてくれたのお?!!」
あげぱん 「ぬんぬ〜ん。(ああ、そうさ)」
あずき 「ありがとぉ!」

あずき、あげぱんに握手をしようとするが、ギリギリのところでそっぽ向かれる。

あずき 「え?」
あげぱん 「ぬぬぬん、ぬん。」
鬼太朗 「なれ合いはせん?」
あげぱん 「ぬぬぬん。ぬぬぬ〜〜んぬん。」
鬼太朗 「君達とはライバルだからな?」
ネム 「それってまさか…」
あげぱん 「ぬぬんぬんぬん、ぬぬぬぬん!」
鬼太朗 「四天王に、オレはなる!」
ネム 「帰れ。」

立子、箱一杯の手紙を持って来る。

立子 「里子〜、これ、今日の分ね。」

立子、去る。

里子 「うぅわ、またか…」
ネム 「何それ?」
鬼太朗 「ラブレター?。」
里子 「ならいいんですけど。これ全部悩み相談なんです。」
ネム 「里子そんな事やってんの?」
里子 「違いますよ。四天王になってからこんな手紙が増えちゃって。さすがに手紙は結界効かないし。」
鬼太朗 「まるで妖怪ポストだな。」
里子 「最初は妖怪絡みの相談だけだったんですが、いつの間にか「返事がくれば悩みが解決する」

っていう都市伝説になっちゃったみたいで人間からも。」

ネム 「返事書いてんの?」
里子 「全然。最近わけ分かんない手紙ばっかりで。」

みんな手紙を読み出す。

ネム 「『妖怪のストーカーに追われています』?」
あずき 「あああ〜っ!それあたすのだぁ!」
夏子 「あずきぃ…」
あずき 「だってぇ…」
里子 「まだ妖怪絡みなだけましよ。」
ネム 「『毎日夢で蓮舫大臣が僕を仕分けするんです。内田裕也』」
里子 「意味がわからない。」
ネム 「あの大臣も妖怪よね。」
鬼太朗 「うん。政治家の妖怪も結構増えたよな。え〜っと『コンビニのパリパリ海苔のおにぎりを開ける時、どうしても海苔の端っこが袋に残っちゃうんです。』…」
里子 「あ〜もう、どうでもいい。」
鬼太朗 「『新品のランドセルを買うお金がなくなってしまいました。どうしたらいいでしょう?伊達直人』」
里子 「ばかじゃないの?」
ネム 「うわ見て、エアメールもあるよ!」
里子 「え?」
ネム 「ぶ、く、れ、す、てぃ…」写真
里子 「ちょっと見せて下さい。…ブクレシュティ、ロマニア。ルーマニアのブカレストからだ。」
鬼太朗 「凄いとこから相談来るね。」
ネム 「インターナショナル〜!」
里子 「…違う…これ…私宛じゃない…」
鬼太朗 「え?」
里子 「ね、む、り、ね、こ」
ネム 「私宛?!」
鬼太朗 「何でここにネム宛の手紙が?」
ネム 「ちょっと待って、もしかして…」

ネム、手紙を受け取る。

ネム 「これ、たんぽぽからだ!」
里子 「たんぽぽ?」
ネム 「例の親友のヴァンパイア。」

ネム、手紙を開封しようとするが、なかなか開かない。

ネム 「あれ?」
鬼太朗 「どうした?」
ネム 「この手紙、結界張ってある。」
鬼太朗 「手紙に結界?」
里子 「まかせて。」

里子、結界を切る。

里子 「切りました。」

ネム、手紙を開封する。みんな固唾を飲んで見守る。封筒から石が出て来る。

里子 「石?」
ネム 「これは…」

暗転

(作:松本仁也/写真:はらでぃ)

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