△ 「ニンフ」本景3


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男ABCD。
相変わらず所在な気に。

男A、鼻をくんくんいわせる。

男C 「どうした」舞台写真
男A 「なんか、いい匂いがしねえか?」
男C 「そうか?」
男B 「ホントだ。うまそうな匂いだなあ」

男D、ふらふらとドアをくぐろうとする。

男B 「あぶない!」
男A 「行くな!」

3人、あわててDを引き戻す。

男D 「すみません。余りにも心騒がせる匂いだもんで、つい…」
男C 「つい、じゃねえよ」
男A 「“その時”にならなきゃ、このドアはくぐれない。わかってるだろう」
男D 「ええ」
男C 「それまで俺たちは運命共同体…勝手なことするなよ」
男D 「すみません」

間。

男B 「それにしても、いい匂いだなあ」

B、ドアの近くまで行き、外を窺う。

男D 「なにか見えますか」
男C 「見える訳ないだろ、ば〜か」
男A 「早くこの部屋から出たいよ…」
男D 「もう、随分になりますもんね」
男A 「ここへ来たのは、確か…」
男D 「寒い、冬の日、でした。僕が来た時には、もうあなたがいて」
男A 「そうそう。で、次にこいつが来たんだ。そして最後に…」

男AD、Bを見遣る。

男D 「一日に、4人、ですか」
男A 「たまげたヤツだよ、ホント」
男B 「あれ?」

B、ドアの方へ身を乗り出す。

男C 「おい、あんまり近づくなよ」
男B 「ええ、でも…」

B、眼をこらす。

男A 「どうした」
男B 「…呼んでる…」

B、ふらりとドアへ一歩踏み出す。

男C 「止めろ!」舞台写真
男A 「危ないって言ってるだろう!」
男B 「でも…呼んでるんだ、彼女が…」
男D 「え!?」
男B 「ほら…ドアの向こうで光の中で…呼んでる…おいで、こっちへおいでって…」

音楽。
光。
ドアの、軋みながら開く、音。
立ち尽くす4人。
男B、一歩、さらに一歩。
ついにドアをくぐる。
光の中に、女が一人、立っている。
女、微笑みながら手を差しのべる。
男B、その手をとり、ゆっくり女を抱き締める。

男B 「また会えたね。…母さん」

転。

(作:中澤日菜子/写真:広安正敬)

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