歯医者に伝えたい

 その日の治療が終わるときに、入れた薬が痛かったり、詰めたものが高かったり…。こんなことを聞きたいけど先生が忙しそうだから、聞けないよ〜。そんな時に、上手に? 伝えるためのヒントを書き出してみました。
 あくまでも主観で書いていますので、先生や衛生士さんの性格を把握しながら、自分なりにアレンジしてみてください。

まずは歯医者という職業を理解しましょう

 一番最初に大切なことを理解してください。それは歯科医と患者さんの立場は対等であるということです。あなたはボランティアで歯を治してもらっているわけではありません。きちんと診療報酬を支払って治療を受けているのですから、ギブ・アンド・テイクで対等だということを忘れないでください。

 歯医者は恐いというイメージがあります。実際に恐い目にあわれた方もいらっしゃると思います。昔の歯医者さんは恐かったのでしょう。歯科医の数よりも患者さんの数が圧倒的に多く、いばっていても次から次へと患者さんが来ましたから。でも、今は歯科医師過剰時代と言われています。その上、保険の財源が圧迫されて患者さんの自己負担金が増えたことによって、患者さんの数が減少してきています。
 現在のところ、地域によっては過剰ではないところもありますが、歯科医の数を減らすために様々なことが行われています。歯科大学への入学定員は昔に比べて削減されました。女子の入学者を多くするように指導されているようです(夫婦となって開業すると、それだけ歯科医院の数が減るため)。国家試験の難易度が上がり、さらに合格者数を限定することが行われているようです。また、臨床研修制度(いわゆるインターン)が歯科でも平成18年度をめどに必須化されようとしています(当面は1年で将来的には2年)。保険医の定年制も考えられています。
 現在でも潰れる医院はありますが、これだけ歯科医にとって厳しい時代になり、先生はいばっている場合でしょうか? そう考えると、これからの歯医者さんは恐くなくなってくる(はず??)です。

 先生の眉間にしわがよっていて恐いですか? うん、うん、恐いでしょう。歯科で使われる器具は、歯を削る道具を含め、刃物が多いのです。しかも扱う単位は"ミリ"です。細かい調整は"マイクロ"で行います。さらに、次の患者さんとの予約まで時間とも闘っています。私は診療の前後ににこやかに挨拶と説明をするように注意していますが、真剣に細かい作業をしているときは恐い顔になっていることでしょう。逆に、いついかなるときもにこやかな先生はシンクロナイズド・スイミングのように表情を作っているか、テキトーに手を抜いているかの両極端にわかれると思います。あるいは自費診療のみで、患者さんに追われない余裕があるかのかもしれません。普通の凡人が努力していれば、どこかで恐い表情になるときがあると思います。しかし、四六時中真剣な緊張状態におかれていてはそのうち胃に穴が開いて、人の口を治療する前に自分の胃の治療をしなければならなくなってしまいます。ですから、実際には見た目ほど先生は恐くないのかもしれません。ちょっと勇気を出して話しかけてみたら、治療中とは違う表情をみせてくれるかも??…。

 

その日使った薬が痛いとき

 特に根の治療をしていて、中に薬を入れたときに痛い場合…。それは根の状態により薬が強すぎる、薬を使う操作が不適切で根の先に押し出している、あるいは神経がきちんと取れずに残っているなど、いずれにせよ何らかの問題があるものと思ってください。
 痛みを訴えても、いい加減な医院だとなんだかんだと理由をつけてそのままフタをして帰してしまうみたいです。普通は入れた薬をすぐに取り除き、根の中を洗って痛みがなくなったことを確認してから、操作をやり直したり薬を変えたりします。

 この場合、「なんだか痛いような感じがするんですが…」と気弱に言ってしまうと、そのままフタをされるかもしれません。実際には我慢できる程度であったとしても、痛くて痛くてどうしようもないという表情を作り、「すごく痛いです!!」と訴えた方が、きちんとやり直してくれることでしょう。いつも痛がっていると、この手は通用しないかもしれません。

 

詰めたもののかみ合わせが高いとき

 かみ合う感覚は歯と骨の間にある歯根膜で感じます。長い間、虫歯を放置してかみ合っていなかった歯に冠を入れたり、かみ合う歯がない部分をかめるようにした場合には、歯根膜の機能が低下しているために違和感が出ることがあります。また、金属の詰め物を入れるために型取りをした後に軟らかい仮のフタをしてあった場合も、一時的に歯根膜の受ける力が低下するため、金属を入れたときに違和感が出ることがあります。これらの場合には、歯根膜が機能を回復することで違和感はなくなります。調整した後に違和感が残る程度でしたら2〜3日様子を見てください。それでも違和感や高い感じが残っている場合には実際に高いので、再度調整してもらうようにしてください。

 麻酔が効いている状態で、その日の内に削って詰めたときにも違和感や少し高い感じを受けることがあります。麻酔が切れた後に、本来の感覚が得られますので、同様に実際に高い場合には再度調整してもらうようにしてください。

 しかし、数日経過した後にも残っている高いかみ合わせや、最初から明らかに高いかみ合わせが慣れるということはありません。「そのうち慣れるから」という言葉は嘘です。かむ感じが慣れたとしても、顎の関節に異常が出てくることがあります。かみ合わせが高い場合は曖昧な表情や返事をしないで、「まだ高いです」とはっきりいいましょう。もし、「慣れる」などの言葉で誤魔化そうとし、その日の診療を終わらせようとしたなら、「数日様子をみますので、そのときにまだ高かったらもう一度調整してください」と調整のための予約を必ず取るようにしてください。それさえしようとしない医院であれば、他へ転院して事情を話し、調整してもらうようにしましょう。けっしてそのまま放置しないようにしてください。

 

予約の前に痛くなったとき

 「次の予約まで日数があるし、どうしよう…。」その場合は、予約の前であっても受診してかまいません。ただし、急に行くと先生が他に手を離せない治療をしている最中であったり、思いっきり忙しいときにぶつかりかねません。長く待たされたり、嫌な顔をされるかもしれません。

 それを避ける方法は、あらかじめ電話をして「痛みが強くて眠れないので、予約の前にみてもらいたいのですが」と救急処置のための予約をとることです。そうすれば比較的すいている時間帯に予約を入れてもらえますし、医院の方でも準備ができますので、長く待たされたり、嫌な顔をされることはないと思います。

 

トラブルを次の予約まで我慢したとき

 痛みが出たり、仮歯がはずれてかめないなどのトラブルがおきた時は、事情が許す限り我慢しないで上記のように救急処置の予約を取ってください。中には予約の日まで自分の中で怒りを溜めこみ、歯科医に会ったとたんにどなる人がごく稀にいますが、途中でわざと痛くなるようにしたり、わざとはずれるようにしている歯科医はいないと思います。表情や態度は繕っていたとしても、いきなりどなられた後に口の中で冷静に細かい作業をできる人が何人いるでしょうか? 自ら危険を呼び込む真似はしない方が賢明だと思います。

 事情が許さずに予約の日に持ち越したとき、特に治療している以外の歯にトラブルがあったときはまずそのことを先生に伝えてください。予定している治療が終わってから伝えると、次の患者さんの診療時間にかかってしまい、嫌な顔をされるかもしれません。事前に伝えることで、救急処置と予定している処置の時間配分を先生が組み立てることができます。

 

治療のことや疑問に思っていること質問するとき

 できれば、その日の診療に入る前、あるいは診査後の説明のときに聞くのがいいと思います。治療の後半だと、次の患者さんの予約で時間が押している場合があり、余計忙しそうに見えて聞きづらくなると思います。
 その日の治療が終わってから質問がある場合には、治療後の説明(今日は何をやったとか、次回は何をやるなど)のときに間を置かずに聞くのがいいでしょう。間をあけると聞きづらくなると思います。

 治療の最中に聞くときは少し注意してください。器具を口の中に入れようとしているときは、危険な場合もあるのでやめた方がいいでしょう。エアーをかけた直後は乾燥させる必要性がある場合ですので、しゃべって唾で濡らさないようにしましょう。型をとる直前や、セメントをつける直前は固まる前に操作しないといけないので、「後にしてください」と言われると思います。型をとった後や、セメントが固まってから聞くようにするといいでしょう。

 

インフォームド・コンセント

 インフォームド・コンセントとは症状や治療について説明を行い、患者さんの同意が得られてからはじめて実際の治療を行うということを意味します。現在、どこの歯科大学であったとしてもインフォームド・コンセントに触れている筈です。最初に書いたことを繰り返しますが、歯科医と患者さんの立場は対等です。疑問に思ったことは遠慮しないでどんどん聞いてください。いくばくの説明もなしに、あなたの不安を残したまま治療を進めようとする医院であったならば、転院しても構いません。

 がんばって、少しの勇気を出して聞いてみてください。治療が終了するまで、毎回ちょっとずつでもいいでしょう。担当の先生と信頼関係が築けるようになれることを祈っています。

 

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