専門的な口腔清掃指導については歯周病の講義にありますが、ここではいかに効果的なセルフコントロールを行うかということを市販されている歯ブラシや補助器具を使って説明していきたいと思います。
まずは具体的な磨き方の前に、効果的な磨き方のコツとして歯周病の講義に記載されているものをプラスアルファして記載します。
歯ブラシは一筆書きになるように使用する
あっちを磨いたり、こっちを磨いたりしたのでは、磨き残しをする部分が出てきます。
歯ブラシは歯の裏側から磨き始める
裏側は表側よりも磨きずらい場所です。集中力のあるうちに、難しい方を先に磨きます。これと一筆書きを組み合わせると、下の図のようになります。
食後に磨く
細菌の増殖を抑制するためには、食前に磨いたのでは意味がありません。食後に磨くことが大切です。
夜寝る前に一番丁寧に磨く
起きているときはしゃべったり食事をすることで、頬や舌を動かしたり唾が出る機会も多く、それが歯垢(細菌の塊)の付着をある程度抑制する効果があります。寝ている間が一番歯垢が付きやすく、また細菌も増えやすい環境にあります。
仕事をしている方は朝に十分な時間が取れなかったり、昼間は歯磨きをする時間が持てなかったりします。そういう場合、朝は歯ブラシだけで食後に磨き、夜は寝る前に歯ブラシとデンタルフロスや歯間ブラシなどの補助清掃器具を用いて丁寧に磨くと効果的です。
歯ブラシを奥に動かしていくとゲっとなってしまう場合、一番奥の歯にブラシを当て、手前に磨いていった方が奥に向かって磨くよりもゲっとなりにくいです。この場合、一筆書きは無理ですので、奥から手前に向かってそれぞれ磨きます。磨き残ししないように一番手前の歯を少し越えるところまでそれぞれ磨きます。
また、胃腸が悪い場合、食後すぐに磨くと気持ち悪くなることがありますので、自分の体調と相談し、磨けるときにきちんと磨くことも大切です。
硬い歯ブラシは感触が強く、一見磨けているように感じますが、意外に歯と歯の間までブラシの毛先が入っていかず、磨き残ししやすいといえます。下の写真は同じ種類の歯ブラシで毛先の硬さが違うものです。
硬 い ブ ラ シ |
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軟 ら か い ブ ラ シ |
歯垢は毛先がきちんと当たらなければ落ちていきませんので、むしろ軟らかめの歯ブラシの方が効果的であるといえます。
昔は歯磨き粉をいっぱいつけて磨くと歯が削れてしまったり、泡立ちや清涼感によって磨けたように感じてしまうため、歯磨き粉はつけないか、あるいはつけてもほんのちょっとだけと言われていました。
歯が削れてしまうことに関しては、歯磨き粉の研磨剤よりも、むしろ硬いブラシを不適切に横磨きでゴシゴシ使用した場合の方が、研磨剤の影響よりも大きいという研究もあります。研磨剤については1995年に「歯磨の物性と安全性に関する国際規格」が設定され、研磨力が一定の規格以下のものが使用されるようになっています。
現在、歯磨き粉には虫歯の予防に効果的なフッ素や、抗プラーク(歯垢)作用のある化学物質(クロルヘキシジン、トリクロサンなど)が含まれています。それらの効果や、1回にどのくらいの量を1日何回使うといったことに関しての明確な答えはまだ出ていませんが、私個人の意見としては、歯磨き粉はむしろ積極的に使った方がいいように感じます。ただし、きちんと磨けていなければ効果はありませんので、歯ブラシの当て方を練習したり、歯垢を染め出して残ったところをどのように磨くか練習するときなどは付けない方がわかりやすいといえます。
ブラシの毛先を当てる方法が歯垢を落とす効果が高いといえますが、一種類の方法では完全に歯垢は除去できないとされています。歯の並び具合に応じて歯ブラシを縦に使ったり、毛のつま先部分やかかと部分を使ったり、あるいは歯ブラシでは歯垢が落とせない部分はデンタルフロスや歯間ブラシを併用したりします。これらの方法を組合わせ、試行錯誤しながら自分に合った磨き方を確立していくことが大切です。
![]() 縦磨き |
![]() ブラシのつま先とかかと |
![]() 市販のデンタルフロス |
![]() 市販の歯間ブラシ |
参考までに代表的な磨き方を挙げておきます。
ローリング法 :
ブラシの毛の脇腹部分を歯ぐきに当て、かみ合わせの面に向かって回転させます。
スクラッビング法 :
歯ブラシを歯に垂直に当て、小刻みに動かします。
バス法 : 歯ブラシを歯ぐきの側に45゜傾け、小刻みに動かします。下図の中央のように歯ぐきよりも少し上側で当て、そのままスライドさせて歯ぐき側に持っていくと、歯と歯ぐきの境目にブラシが当たっている感触をつかみやすいです。
バス変法 :
バス法で小刻みに動かした後、かみ合わせの面に回転させます。小刻み+回転を繰り返しながら歯を順に磨いていきます。
スクラッビング法やバス法で歯ブラシを動かす幅の目安としては、ブラシの毛先が歯と歯の間に留まる程度です。大きく動かすと歯と歯の間にブラシの毛先が届かず、磨き残しをしやすくなりますし、歯ぐきが擦過傷をおこして下がったり、歯が削れる原因になります。
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これらの方法に固執する必要はありませんので、自分のやりやすい磨き方を中心に、上手く磨けない部分は他の方法や補助清掃器具を用いるようにすると良いでしょう。