入れ歯のトラブル

はじめに−入れ歯の形

 入れ歯を作るための型取りは、ある一定の条件で行ないます。それは入れ歯でかんだ時にピタっと合い、かつ頬、舌、筋肉の動きを妨げないというものです。
 歯がなくなった部分の歯ぐきを押すとわずかにへこみます。ですから機能的な力を加えない状態で型を取ると、かんだ時に痛い部分ができたり、合いづらくなります。また頬、舌、筋肉の動きを妨げる部分に入れ歯があると、はずれやすくなります。
 逆に小さすぎる入れ歯も吸着(例えば2枚のガラスが水を介してピタっと張り合った状態)の力が弱くなるため、はずれやすくなります。ですから、頬、舌、筋肉の動きを妨げない範囲で可及的大きく入れ歯を作る必要があります。
 きちんとした入れ歯を作るためには既成のトレー(型取りの枠)で大まかな型を取った後、さらにその人専用のトレーを作ります。次回に専用のトレーで筋肉の動きの形を記録します。これはお湯で軟らかくなり、常温で硬くなる材料をトレーの周りにつけながら行います。頬を引っ張ったり、指を吸ってもらったり、舌を動かしてもらいながら記録します。その後、型取りの材料を入れ、機能的な力がかかった状態での型取りをします。この時にもう一度頬を引っ張ったり、指を吸ってもらったり、舌を動かしてもらい、筋肉の記録を取った部分を正確に再現するように注意します。

 参考ページ 入れ歯ができるまで

入れ歯ができた後の調整

 このように慎重に入れ歯を作っても、微妙に合わない部分は出てきます。入れ歯を新しく作った後は何回か調整を行う必要があります。入れ歯に慣れるまでに、4〜6週間かかるといわれています(かむための筋肉が新しい動きに慣れることも含まれます)。ですから、入れ歯を作った直後は「やっぱり入れ歯はダメだ」と言わず、きちんと調整を行ってください。

入れ歯でのかみ方

 作り方(型の取り方)で説明したように、入れ歯はいついかなるときもぴったりくっついているわけではありません。この状態でバリバリかみ砕くと、食べ物が入れ歯と歯ぐきの隙間に入り、痛くて食べられない場合もあります。
 入れ歯は自分の歯ではありません。入れ歯には入れ歯のかみ方があります。いきなり、かみ砕くのではなく、少しずつかみながら唾と混じり合わせ、塊にしていくような感じでかむと入れ歯と歯ぐきの間に入りにくくなります。

 

痛い・かめない・しゃべりずらい・入れ歯が落ちる

歯ぐきの粘膜がおかしい(潰瘍・歯ぐきが軟らかい・歯ぐきの増殖・口内炎)

あまり使っていなかった入れ歯が入らない・はずれる・合わない

入れ歯の取り扱いと手入れについて


痛い・かめない・しゃべりずらい・入れ歯が落ちる

 入れ歯のトラブルで多いのはこの4つではないでしょうか。原因を簡単に挙げておきますが、実際には他の原因も考えられるため、詳しくは診てもらっている歯科医師に相談してみてください。

痛い入れ歯

 入れ歯と歯ぐきの粘膜の間に不適合があったり、かみ合わせが高かったり、骨が出っ張っている部分があったりすると痛くなります。それらの原因を調べて修正します。

かめない入れ歯

 入れ歯で覆う部分の面積が不足していたり、入れ歯の縁の部分で厚みが足りなかったり、かみ合わせの高さや左右の位置が不適切である場合、かみにくい入れ歯になります。かみ合わせの高さや位置を修正できない場合は作り直 すようになります。

しゃべりずらい入れ歯

 入れ歯が大きすぎるか、舌側で入れ歯が厚いか、人工の歯の並びが狭いか、かみ合わせの高さが低い場合、しゃべりずらい入れ歯になります。削って修正できない場合は、作り直 すようになります。

落ちる入れ歯

 入れ歯が大き過ぎたり小さすぎたり、縁の部分が厚過ぎたり薄過ぎたりすると落ちる入れ歯になります。削って修正する場合と内側や縁を付け足して修正する場合があります。修正不可能な場合には作り直 すようになります。

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歯ぐきの粘膜がおかしくなった

潰瘍ができた

 入れ歯が強く当たっている状態で入れたままにすると、その部分に潰瘍ができます。これを褥瘡性潰瘍(じょくそうせいかいよう)といいます。人工の歯や入れ歯の内側で強く当たっている部分の調整を行うことで、潰瘍はできなくなります。

歯ぐきの粘膜が軟らかくなった

 コンニャク状のぶよぶよした歯ぐき(歯はありません)で、上の前歯の部分にみられます。フラビーガムと呼ばれます。これは入れ歯の不適合(前歯の部分で強く当たり、入れ歯が手前に回転する状態でずれます)でおこります。大きすぎる場合には外科的に切除します。

歯ぐきが増殖してきた

 入れ歯の縁の部分が不適切で慢性的な刺激を受けると、歯ぐきが線維性に増殖してくることがあります。これを義歯性線維腫症(ぎしせいせんいしゅしょう)といいます。前歯の部分で、唇の裏側と歯ぐきの境目にみられます。必要に応じて外科的に切除します。

口内炎ができた

 入れ歯が歯垢で汚れて不潔な状態だと、そこに付いている細菌が原因で歯ぐきの粘膜に口内炎がおきることがあります。これを義歯性口内炎(ぎしせいこうないえん)といいます。入れ歯を清掃したり、歯ぐきの粘膜を軟らかいブラシで清掃したりします。

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入れ歯が入らない、はずれる、合わなくなった

 歯を失った部分は機能的な力が加わらない状態だと骨がやせ細り、入れ歯が合わなくなってきます。食事の時だけとか、人と会うときだけなど限定された場面でのみ入れ歯をつけるのではなく、起きている間はつけた状態を保つことで、骨がやせ細るのを抑えられます。ただし、歯ぐきや骨を休めることも大切ですので、夜寝る間だけは外すようにしてください(夜間も外さないという考え方もあります。後述します)。 入れ歯の不適合の程度が少ない場合、歯ぐきの粘膜に当たる部分を削ったり材料を付け足すことにより、修正することが可能です。不適合が大きい場合には入れ歯を作り直す ようになります。

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入れ歯の取り扱いと手入れについて

 入れ歯を使う上で、日常生活の注意点を挙げていきます。

歯と入れ歯は別々に清掃する
 口の中に入れたまま一緒に磨くと、自分の歯も入れ歯も磨けない部分ができ、虫歯や歯周病になったり(もちろん、部分入れ歯の場合)、入れ歯が不潔になったりします。入れ歯は外して自分の歯と入れ歯を別々に清掃するようにしてください。
 入れ歯は研磨剤の入った歯磨き粉でゴシゴシ洗うと、長年の間に形が小さくなってしまいます。流水にさらしながら洗うように注意してください。

水の中で保管する
 夜間、入れ歯を外す場合、乾燥した状態にすると微妙に変形してしまいます。これを繰り返すと入れ歯と歯ぐきの形にずれができ、合わない入れ歯になってしまいますので、水の中に保管するようにしてください。
 夜もつけたままにするという考え方もあります。それはかみ合わせの高さが入れ歯で決定されているため、夜に外した状態で朝つけた時に違和感が大きい場合や、災害時に入れ歯を紛失しないようにするという考え方によります。その場合は最低でも1日1回は入れ歯の歯磨きをして清潔な状態を保つようにしてください(義歯性口内炎にならないために)。

バネは両手で着脱する
 部分入れ歯のバネは複数ついていますが、一ヶ所だけを片手ではずして無理に取ったり、入れる時に一ヶ所だけ入れて他の部分をかんで入れるとバネが変形してしまいます。両手で着脱するようにしましょう。

定期的に入れ歯をチェックしてもらう
 保険診療の場合、入れ歯は6ヶ月で新しいものに作りかえることができますが、現在使っている入れ歯が良好な状態であったとしても、6ヶ月ごと、あるいは1年ごとにチェックしてもらいましょう。自分では気付かない微細な不適合を修正することで、いい入れ歯を長く使うことができます。

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最終更新2006. 4. 1.