2024年1月のミステリ 戻る

極楽征夷大将軍 
文藝春秋 垣根涼介著 549頁 2023年
感想
直木賞受賞作品 面白かった
鎌倉幕府滅亡、後醍醐天皇による建武の新政、足利幕府樹立、その後の反乱と鎮圧と戦につぐ戦の時代と
足利尊氏、直義(ただよし)兄弟と足利家の執事高師直(こうのもろなお)の3人の運命を描く
ロンメル将軍は撤退戦で名をあげたというのを以前に読んだことがあり、この小説でも負け戦では余力を残しての撤退が肝要というのがよくわかる。
 
教科書に載っていた足利尊氏の肖像画(↑ 現在は高師直との説が有力らしい)を見た時、激しい戦で落ち武者みたいな頭になってはるんやなあ
とずっと思っていたのが、まったく違う理由だったというのに驚いた。面白すぎる
 
足利兄弟の「幼少の頃から掴みどころがなくへらへらしている兄と気を揉むしっかり者の弟」の関係を読んでいると昔見た映画を思い出す。
「暴れん坊兄弟」という時代劇で「昼行燈(ひるあんどん)」と侮られ笑われている兄(東千代之介 この映画で昼行燈という言葉を知る)と
そんな兄をふがいなく思い「兄者、悔しくはないのですかっ!」(とかなんとか)お尻を叩く弟(中村賀津男)ととっても面白いお気に入りの映画。
この小説は足利幕府樹立までは能天気な極楽様(同じ担ぐなら神輿は軽い方がいい らしい)で面白いけど、その後は血で血を争う展開となる。
 
小学生頃かな、母が「足利尊氏ほど戦前と戦後の評価が違う人はいない。昔は逆臣やったのに」と言ってるのを聞いて
「へえー天皇家は北朝の人やのになあ」と思っていた(一休さんは南朝の後小松天皇のご落胤というのを読んでいたので南北朝は知っていた)
この本を読んで謎は解けた。明治天皇が南朝を正統としたらしい。明治の元勲(げんくん)たちは水戸学の影響を受け明治天皇は後醍醐天皇の親政をめざしていたからとか。(親政は2年と78年で終わる)
 
寺や屋敷が焼かれアチコチで戦が勃発している日ノ本の国でも米は誰かが作ってはったんやろうね。ベトナム戦争でも爆撃の中、水田で女の人が田植えしてはる写真があった。
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