2023年9月のミステリ 戻る

怪獣保護協会 THE KAIJU PRESERVATION SOCIETY
早川書房 2022年 ジョン・スコルジー著 内田昌之訳 353頁
あらすじ
2020年新型コロナウィルスのパンデミックの最中、ジェイミー・グレイは会社をクビになりデリバリーの配達員をしていたところ昔の知り合いと遭遇する。
そして、その昔の知り合いのトムから仕事のリクルートを受ける。それは大型生物の権利を守るNGOで”物を持ち上げる仕事”をするらしい。
感想
怪獣と恐竜とどこが違うの? という身には、この小説を読んでよくわかった。
いやはや
この世には色んなことを思いつくすぐれものがいてはるんやわ。掛け合い漫才の様な会話が続いて楽しい。
怪獣をはじめ登場人物の描写はほとんどない。ガタイは? 人種は? ひとの性別は? ない。
この小説を読む人はシネフィルが多かろう、好きな怪獣と俳優をあてはめて・・・みたい。
それやのに、それぞれの個性(怪獣を含めて)がわかるのがすごいわ(訳もたいしたもの)
中でも「怒りの問題をかかえている」らしきニーアムが楽しい。「半分はあたしのものだよ」に笑った。
愉快やねんけど、第五福竜丸を含めほんの少し悲しい。新人の博士さまたちにはわからなかった「ベント」がわかる身にはちょっと悲しい。
 
本作にはトランプ前大統領とイーロン・マスク氏は何をやらかすかわからないよこしまな人という恐れと皮肉もちょっと含まれていた。
そして「モスラ〜や、モスラ♪」と歌っていたザ・ピーナッツは”小美人(しょうびじん)”という名やったの。
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ノウイットオール Know It All あなただけが知っている
第30回松本清張賞
文芸春秋 2023年 森バジル著 314頁
感想
「推理小説」「青春小説」「科学小説」「幻想小説」「恋愛小説」と
切縞市きりしましを舞台にした5つのお話。
話ごとに語り手が変わり「科学小説」は1度読んだだけではよくわからず(認知に問題でてきた・・)2度読む。このお話が一番好み。
「科学小説 FUTURE BASS」では2053年に技術的特異点シンギュラリティを越え、技術が技術を生む時代となったらしい。
シンギュラリティを越えると人類は魔法が使えるようになるんや・・・と思っていたら、
ファンタジーは魔法使い族ウィザード吸骨鬼族ヴァンボイアの戦いの「幻想小説」だった。
作者は頭のいい人なんだと思う。最後の「恋愛小説」には短歌がでてきて、詩や言葉遊びも好きな人と感じる。
 
登場人物の名前も凝っていて(というか目くらましになっていて千が付いた名前も3人登場する)、色と季節が使われている。
第一話は青と春、第二話は黄と夏、第三話は赤と夏、第五話は黒と冬が登場する。どうやら南北は敵役らしい。
でも第四話がわからない。吸骨鬼の名前はカヴン=オータムで秋と思うねんけど。色がわからない。たぶん白か緑と思うねんけど。
 
最後にびっくり。この小説はなんとターミネーターやってんわ。
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