川や人里離れた山やベルリンの壁みたいなので国境線が決められているわけではない<ベジェル>と<ウル・コーマ>の国境は入り組んでいる。同じ通り、道路、階段、公園はそれぞれの名前がつけられふたつにわけて使っている。ビルや鉄道、道路は交差するところもあり、そういう場所は<クロスハッチ>地区と言われている。ふたつの国の人々は隣国人と接しないように、見ないように、認識しないように育てられる。服装や車の種類を察知した途端、あってもないものとみなす。
何ゆえそういう風にするかというと、たとえ事故であったとしても接触すると<ブリーチ>行為と見なされ突如現われた謎の<ブリーチ>にどこへともなく連れていかれ二度と戻ってこないから。ここは、映画「ゴースト/ニューヨークの幻」で悪い事したら餓鬼みたいなのに引きずっていかれるイメージ。
ただし断交しているわけではなく正式なルート、正式な場所では行き来も許されている。ボルル警部補も「<ウル・コーマ>警察のワトソンになれ」と<ウル・コーマ>に出張させられる。
見えたら見下したり、羨んだり、領土を大きくしたくなったりとややこしくなるもんね。「モガディシュ 脱出までの14日間」はソマリアの紛争に巻き込まれた北朝鮮と韓国の大使館員が力を合わせて脱出する映画やったけど、空港についたとたん北朝鮮の人々は自国に疑われないため韓国側を見ないように子供には手で視線を遮ってた。
パレスチナ地区を無理やり侵食していくイスラエルにも<ブリーチ>があればいいのにね。
読むのはたいへんやったけど、警察ミステリというかファンタジーというかSFというか境は明らかにならなずジャンル分けさせないお話は混沌としながらも一本筋が通り面白かった。