2023年5月のミステリ 戻る

アポロ18号の殺人 上下
早川書房 2021年 クリス・ハドフィールド著 中原尚哉訳
感想
カナダ出身の宇宙飛行士クリス・ハドフィールドによる、歴史改変冒険活劇小説
ニクソン大統領とブレジネフ書記長の米ソ冷戦時代、アポロ18号の月面着陸探査計画が進められていた。
(アポロ計画は1961年〜1972年アポロ17号まで。6回月面着陸)
 
空、宇宙、月面、海(空軍、宇宙軍、陸軍、海軍)で機器操作する軍人の手と頭脳そして五体の活躍とバトル。加えてバックで支える人々が描かれている。
1970年代にはコンピュータはあれど手動操作や目視確認が多いのに驚く。
はんだづけひとつで不具合が出るのに、よー月まで行って帰ってこれたもんやわ。
ロシア人宇宙飛行士スヴェトラーナ・グロモワが英会話もでけへんしあんまり活躍せーへんなあと思ってたけど、最後はなかなかえらかった。
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メグレと若い女の死 
早川書房 1954年 ジョルジュ・シムノン著 平岡敦訳(新訳) 244頁 
あらすじ
パリのヴァンティミユ広場で若い女の死体が見つかる。
感想
「仕立て屋の恋」のパリス・ルコント監督、180センチ体重100キロの巨漢メグレ警視をジェラール・ドパルデューが演じる映画を4月に見て原作が読みたくなる。
何故読みたくなったかと言うと1950年代のパリの光と影の映像は見事やったけど、物語が物足りなかったから。小説と映画は結末が違うらしい。
巻末解説は中条省平って方で、日経新聞の映画評の評者のおひとりやったわ(名前を憶えているというのはなかなか文章が上手と思っていたからと思う)。
もちろん「メグレと若い女の死」の映画評もしてはった。
映画の改変具合はどうかというと、なんだかなあ。これでは被害者がありふれた世俗的な動機でパーティに乗り込んだことになるんちゃう。
そのために真犯人にひとひねりはしてあったけど。うーん。取ってつけたみたい。
ぶっちゃけます。
殺された若い女性はいまどき風に言うと、親ガチャにはずれ病名をつける医者の見立てやとたぶん「発達障害」というか、「コミュニケーション障害」というか。本から読み取るとまず雑談力がないの。頑張ってもうまくいかず厳しい世の中を泳げず「困ったひとは困っているひと」なの。映画にはこの視点がない。
パリ第二地区のロニョン警部(映画には登場しない)の一匹狼ぶりと被害者意識も生きにくさは「若い女」と同じ。
原作は世界はそういうものとして安易に救おうとしない。
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