2022年2月のミステリ 戻る

半席 
新潮文庫 2015年 青山文平著 309頁
あらすじ
文化文政時代(1804-1830)の江戸。徒目付(かちめつけ)の片岡直人(なおと)はせっせと御勤めに励んでいる。
徒目付はすべての御用の監察官・大目付の耳目(じもく)となって働くお役目。
25歳の片岡直人は半席の身分だった。
二度お目見え以上の役につけば御家人から旗本になれる。直人の父は一度御目見えのお役目についている。
親子二代にわたって達成してもよい。午前中の試験に受かったら、午後の試験が駄目でも次の年は午後の試験だけ受かればいいって感じ?
目にとめてもらい徒目付から勘定所にお役替えをし(調査から算盤へ)、その後は「御家人」の支配勘定から「旗本」の勘定へと駆け上がらなければならない。
それはお家のため子孫のため。
脇目も振らず目指すはずが、徒目付組頭の内藤雅之は人懐っこい笑顔と共に、頼まれ御用を振ってくる。
その御用がなんか、、、面白いの。(いかん、いかん)
感想
6作からなる連作短編集。
唐突な行動をした人の動機を探り、本人に白状 語らせる。刑事として推理し神父として懺悔を聞くような役割。
解説の人は「人間の業」って書いてはるけど、どちらかと言えば「男の業」
昔の女の人はたぶん子を産み一人前になんとか育て上げれば「やることはやりましたわ」ってなるやろうけど、
男はひとかどの人物でなければならぬ。(自分の中だけでも) 
その魂とお家のために体の中に抑えこんでいた執着の塊が、きっかけで噴出する。
「蓼(たで)を食う」の亀さんと「見抜く者」の剣がよかった。
この時代に「個」の話やねん。
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