2021年12月のミステリ 戻る

純喫茶「一服堂」の四季 
講談社文庫 2014年 東川篤哉著 332頁
感想
「春の十字架」
「もっとも猟奇的な夏」
「切り取られた死体の秋」
「バラバラ死体と密室の冬」
の4編からなる連作短編集。作者の本を読むのは「探偵はディナーの後で」以来なのでお久しぶり。
しかし! 作者は「烏賊川市」からブレていない!
本作の名探偵は「執事の次はメイドでしょう」という訳で、隠れ家の様な喫茶店のメイドさん。探偵の名前はアンラクヨリコ。
名前とたがわず安楽椅子探偵。 本の表紙も題名も策略やったのね。
 
「バラバラ死体と密室の冬」は満を持した、というより振り切れた、のか
こういう密室を書く、書ける、書こうと思う作家さんがいてはるとは(**)
私は第一話の「春の十字架」が面白かった。動機はまったく無視のこの密室、笑えるけどマニアっぽくてよく出来ていている。
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サムライ・シェリフ 
ハヤカワ時代ミステリ文庫 2021年 戸南浩平著 396頁
感想
最初に本を見た時は「サムライ・シェフ」と思い・・・包丁一本さらしにまいて米国に料理修行に行く話と思った。
もう一度題名を見たら「サムライ・シェリフ」
幕末に米国に渡った日本人が保安官になる話なんかな と思って読み始めたら、違った。
 
舞台はご維新後の明治11年の日本。同心だった三崎蓮十郎は横浜の刑事になっていた。上司は官軍の薩摩だ。
そこから「東部の未亡人が幼い息子を連れて夫の敵を討つためはるばる西にやって来る。」というアメリカの西部劇で見たような・・気がする展開
やってんけど、和洋折衷の話は最後にはおどろおどろした猟奇的な犯罪、かつ人情時代物となる。色々詰めこまれた異色作。
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探偵になんて向いていない A DETECTIVE WITHOUT TALENT
双葉社 2021年 桜井鈴茂(さくらいすずも)著 379頁
あらすじ
零細編集プロダクション勤めの権藤研作(ごんどうけんさく)は、ワンマン社長から「リスクヘッジ」のため業務を多角化するとかなんとか言われ権藤探偵事務所の設立と業務運営を命じられる。社員は自分だけ。
感想
5つの話からなるんやけど、登場人物みなさんそれぞれ、仕事を紹介してくれはるひとやら探偵を紹介してくれはるひとやら「友達」がいてはるねん。
ニートの人も世捨て人も。
まあ、この探偵さんは『決定版・探偵術入門』を読んでいるような素人。スキルなしツテなしやから依頼人に人間関係がなかったらお話は続かない。
読んでいるとこの作者は文章うまいなあと感じる。語彙が豊富な人やと思う。その分ルビもたくさんつけられている。
おかげさんでサクサク読めるし読んでいて楽しい。でもところどころ難しくて。
戯けと自嘲を含んだ表情になって言った』 
 えっ たわむれって言うけど、たわむけとも言うの? と思ったところ、「たわけ」でした。(これって、私がバカなだけ?)
 
第二話は「フォローミー」みたいな味わい。
第三話の40歳ひきこもりの長男に「何かしでかすんやないか」と気を揉むお母さんの話がよかった。
会社に入った頃同期との忘年会があって。そこで小学校から大学まで一貫校やった東京もんの男子がいてた(慶應ね)。ものすごいおぼっちゃんやったみたい。(おかあさんもおばさんも妹たちも聖心やねんて。どんな家やねん)
だるまさんみたいな見ばで、気のええやつやってんけど、「これでも、女泣かしたことある」
ってゆうから「へええ」と思って。  ところがよー聞いたら高校時代に英語がでけへんと留年して、お母さんが泣いたとか・・・
聖心出のお母さん泣かしますか。この親不孝者〜
というのを思い出したから。
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