2020年6月のミステリ 戻る

星系出雲の兵站1 
早川書房 375頁 2018年 林譲治(はやしじょうじ)著
あらすじ
人類コンソーシアムの五星系「出雲、八島、周防、瑞穂、壱岐」の内、出雲は文明発祥の地であり残りの四つの星系は出雲星系から植民された。
五つの星系は対等な政治的権限を持つが八島、周防、瑞穂は出雲星系の庇護下に置かれているようなもの。
しかし辺境の地にある壱岐星系は独立志向が強い。コンソーシアムの中で二番目の経済力・工業技術力を有する。
その最果ての地、壱岐星系の第三管区で偶然、異星人の探査衛星らしきものが発見される。
 
伝承によると四千年前に地球人類は、異星人の脅威から地球を守る防波堤として、恒星間宇宙船に人類や家畜の凍結受精卵を載せ複数の恒星系に
送り出したらしい。播種船(はしゅせん)計画という。ただ、播種船から地球の情報が漏れるのを恐れたため、情報はなく伝承に過ぎない。
感想
ミリタリーSFなるものを初めて読んだかもしれぬ。とにもかくにも必要なのは情報。
 
駆逐艦と巡洋艦ってどこ違うんだっけ? 駆逐艦は小さく機動力があるんやっけ?という身には、軍艦やら戦略やらちんぷんかんぷん。
それでも、ずっとミリオタの頭の中を覗き見しているみたいで面白かった。「ミカサ級」の巡洋艦なんか。
<本文>
輸送艇モロトフを旗艦とする小部隊が、準惑星天涯の軌道上に遷移しつつあった。
モロトフの他には警備艦サトコとオルラーン、そして貨物船タバサが部隊の戦闘序列にあった。
 
どこから来ているか本当のところはわかりませんが、すごいですね。このネーミング。モロトフ、タバサ・・・
 
人類コンソーシアムと言えども一枚岩ではなく、出雲星系と壱岐星系にはそれぞれ力関係の思惑がある。
ええっと、日本の近海に異星人の気配ありで日本は最前線となり、アメリカの軍(第七艦隊だっけ)が駆けつける。
アメリカの艦隊はハワイ、グアム、フィリピンと経由して軍を補強し日本に向かうが、
日本はこれをチャンスとするアメリカに飲み込まれちゃ困るんだよなって密かに警戒する みたいな。
しかし、出雲星系の兵站監は前線日本 壱岐の軍需工場の生産性の悪さを見抜き改革を断行。一歩踏み込む。
火伏兵站監は戦に英雄はいらぬという信念の持ち主だ。
えっちらおっちら運んでくるより近場で供給できれば一番やもんね。
 
太平洋戦争では日本は補給路をフィリピンやインドネシアの島々まで長く長くとってしまう。兵に飯盒持たせて食料は現地で各自調達ってむごいね。
準惑星天涯での敵の地上戦は、日露戦争の二百三高地もロシア兵から見たらかくやと思うすごさ。
 
作者は、子供の頃に「宇宙人は地球人より高度な技術を持っているのに何故負けてしまうのか」という疑問があったそうです。
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