2020年5月のミステリ 戻る

抵抗都市 RESISTANCE CITY
集英社 476頁 2019年 佐々木譲(ささきじょう)著
あらすじ
日露戦争(明治37年 1904年2月8日−)で大日本帝国はロシア帝国に敗北した。
「御大変(おたいへん)」後、11年たった大正5年(1915年)の今、日本は帝政ロシアの保護国となっている。
ロシア軍が駐屯し首都東京にはロシアの統監府はあるが、皇居には天皇陛下がおられ、日本語も使える。
陸軍は十四個師団が七個師団に減らされ、参謀本部は解体されたが植民地ではない。
感想
明治24年(1891年5月11日)に訪日中のロシア帝国皇太子(後のニコライ2世)が警備の巡査津田三蔵にサーベルで
斬りつけられ負傷する「大津事件」からお話が始まりどきどき。
従兄弟のギリシャの王子様(ゲオルギオス)って方も同行してはったんか。
 
「正露丸」が元は「忠勇征露丸」という名前やったとか、アレクサンドル2世(ニコライ2世のおじいちゃん)を
暗殺した爆弾は「キバリチチ爆弾」っていうことを知りました(長期記憶に定着するかは不明です)
主人公の警視庁特務巡査、新堂裕作とお母さんとの会話とか、一緒に捜査している西神田警察署の多和田とお弁当を食べるところが
いいな。胃袋をおさえるの大事。さすがお父さん、わかってらっしゃる。新堂と多和田のよき人柄がわかるいいシーンと思う。
 
お話は携帯電話は無論なく、固定電話すら珍しい時代でいささかまどろっこしい捜査ではあるが、
この「熟考する」「手順を踏む」「物や人を大切に扱う」ていねいさがここちよい。
今の時代は軽くそして雑と時々思う。
(2月やったか3月初めやったかな、3時の体操の時間だ!ってNHKをつけたら国会中継してはって「議事録がない」文書に日付がない」謎とか、
文書を「いつ作ったのかは今もまだ調査中」とかふにゃらふにゃらの壊れた蓄音機の答弁。
「いつまでかかるんですか。右クリックしてプロパティをみたら一分もかかりませんよ」って野党の人がゆーてはった。)
 
いつもと同じく取りとめない感想ですが、気になることがひとつあって、
本の帯に警察小説の旗手として不動の人気を誇る著者が「今の日本への問題意識を示すために、この舞台を選んだ」と語る、圧巻の歴史改変警察小説とある。
読み進めても作者が示す「今の日本への問題意識」が何なのかさっぱりわからない。足らない頭がうらめしい。。。
欧州でのロシアの戦争(第一次世界大戦らしい)に日本軍も派兵するってところで「憲法第九条改正のこととちゃうやろか」という気がしてくる。
なんもしらんもんやから少し検索してみる。
 
第九条【戦争放棄、軍備及び交戦権の否認】
1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
 
憲法の解釈は様々あって「自衛隊は違憲だあ」、「日米安保はんたいー」から、
「第十三条【個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利の尊重】」も合わせて自衛隊は合憲、「個別自衛権」はオッケ、必要
はたまた「日本国内に米軍基地があるんやから、世界はもともと「集団自衛権」ありと見てはるんちゃう」もある。
政府は憲法の解釈を変更して「集団的自衛権の行使を限定容認する」ことにした。
北朝鮮は日本海にミサイル落とすわ、中国は日本国の領海領空侵犯をくりかえすわの状況で、
PKO派遣からもしもの際まで国会で「自衛隊は合憲か違憲か」から議論を始めなあかんの勘弁してなのか
アメリカとの「集団的自衛権」を目指すのか「憲法第九条に自衛隊を明記」する改正らしい。
 
で、作者の佐々木譲さんは改憲か護憲どちらなのか。(元々仮定の話ではございますが)
日露戦争で戦った新堂の思いを
  けっきょくのところ、新堂は南山会戦から負傷した旅順まで、自分は祖国を守るために戦ったのだという意識を
  ついに持つことができなかった。なぜこんな土地までやってきて戦わねばならないのか、その疑問しかなかったし、
  その答えをついにきょうまで、あの戦争が終わって十一年たったきょうまで、得てはいない。
としてはるから、護憲やと思う。(仮定の話でございます)
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