2020年3月のミステリ 戻る

アンソロジー嘘と約束 
光文社 248頁 2019年
女性作家集団「アミの会(仮)」のアンソロジー第六弾
感想
松村比呂美「自転車坂」 松尾由美「パスタ君」 近藤史恵「ホテル・カイザリン」
矢崎存美「青は赤、金は緑」 福田和代「効き目の遅い薬」 大崎梢「いつかのみらい」
の6編からなるアンソロジー
 
それぞれ趣向が凝らされてあり、福田和代「効き目の遅い薬」の苦い味も捨てがたいねんけど、
大崎梢の「いつかのみらい」が群を抜いていい。
つかみは
「いずみデザイン」で働いている市村晴美のところに私立探偵(調査員)吹雪菜々子が訪ねてくる。
調査している行方不明者の家のクロゼットに晴美の絵が残されていたというのだ。それは晴美が小学校2年生の時に描いた絵。
 
得体の知れない怖さです。不気味です。ホラーに震え上がる身としてはこれ以上書けません。。。難をゆうならもっと怖くてもよかったかもしれん。
時流のウィルスやら映画やら、寄生(パラサイト)を感じさせるのかも。
いや、SF映画ボディ・スナッチャーやね。
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神獣の都(京都四神異譚録) 
新潮文庫 350頁 小林泰三(こばやしやすみ) 2019年
あらすじ
昭和十六年の晩秋、巨椋池おぐらいけを埋め立てられ朱雀は住処を失い弱っていた。
青竜と白虎の眷属に追われ朱雀は消え、火の一族の生き残りの少女は逃げ姿をくらます。
やまとの国の均衡は崩れ、日本は12月8日真珠湾を攻撃し太平洋戦争勃発、そして3年8か月後の敗戦。
感想
こんなに面白い小説を書く人やったとわ。私が言うのは失礼やけどおみそれしました。
 
京都盆地は、青竜(東)、朱雀(南)、白虎(西)、玄武(北)、京都の真ん中にかむづまってはる麒麟の五柱の神によって形づくられている都だった。
ふむふむ。
青竜は鴨川に住み、朱雀は巨椋池おぐらいけに住み、白虎は山陰道に住み、玄武は船岡山に住んでいた。
青竜は「木」朱雀は「火」麒麟は「土」白虎は「金」玄武は「水」という眷属を持つ。
ふんふん。
五つの気「木火土金水」には相生そうしょう相克そうこくがあり、
相生(気を円満にやりとりする)のは、木をくべる⇒火、火の燃えかすは⇒土へ、土を精製すると⇒金属、金属が結露すると⇒水、水は育てる⇒木という関係。
相克(自分の身を切っても相手を倒す)のは木→土を痩せさせる、土→水を濁しせき止める、水→火を消す、火→金属を溶かす、金→木を倒すという力関係。
 
青竜(木)⇒朱雀(火)⇒麒麟(土)⇒白虎(金)⇒玄武(水)⇒青竜(木)と気を渡すことができ
青竜(木)>麒麟(土)>玄武(水)>朱雀(火)>白虎(金)>青竜(木) という、いつつ巴? いつつすくみ? らしい。
元祖「レザボア・ドッグス」。
こんがらがってきた。。。そやけどここを押さえとかんと読み進めない。
 
近代の京の都は四条河原町とか西が発展し、鴨川の青竜が力を持ってんねんて。
神獣とそれぞれの眷属けんぞく見解の相違 覇権争いが最終的には京都どころか日本のみならず世界を崩壊させかねないという大きなお話。
そこにジャッジやら蛇蝎だかつやら得体のしれない近代組織が絡んでくる。
神獣を含め全員が縦横無尽に好き勝手暴れまわり、京都の町は雷か地震か爆発かという天変地異の大騒動で作者は京都になんぞ恨みでもあるんかいなと勘繰ったんやけど、
尾が蛇になっている玄武(ガメラ)が向きを変えると尾っぽの蛇が京都タワーに当たり中間あたりでへし折れ、ヨドバシカメラに激突。
四条河原町の高島屋とマルイとOPAオーパが崩壊。京都市役所も燃える。そやけど二条城やただす(下鴨神社)の森は無事なん。
全体に丸くてなまっちろい(ごめんね)京都タワーは大阪人からしたらそれなりのはんなりした京都のランドマークやねんけど。
千枚漬けも丸くて白いし。京都人からしたら「折れてまえ〜」っていうタワーなんやろか。
 
「土」の一族の少女「砂」がかわいい。
  「今、理屈はどうでもええねん」
  戦いの最中、「火」の末裔の晴翔はるとが「土」の砂に問う
  「どうしたら、火が出る?」 「わからへん。火ぃ出したことないから」
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