2019年5月のミステリ 戻る

六つの航跡 SIX WAKES
2017年 創元SF文庫上281頁 下303頁 ムア・ファラティ著 茂木健訳
あらすじ
二千人の人間、五百のマインドマップを載せ新天地アルテミスを目指す恒星間移民船ドルミーレ号の機関長補佐、保守担当そして雑用係のマリア。気が付くとクローン再生の培養タンクの中だった。タンクの中から外を見ると血が漂っているようだ。
 
西暦2493年。移民船ドルミーレ号の中で目覚めているのは乗組員の六人。
 船長のカトリーナ・デラクルス
 月(ルナ)で生まれ育った巨体の副船長ウルフガング
 航海士のアキヒロ(ヒロ)・サトー
 船医のジョアンナ・グラス
 機関長のポール・スーラ
そして機関長補佐兼雑用係のマリア・アリーナ
6人がクローン再生した時に目にしたのは、自分たちの4人の殺人死体と瀕死の重傷の船長、そして自殺体のヒロだった。
クローン再生”前”の自分たちはだいぶ年をめしている。そして再生”後”の自分たちの最後の記憶は航海に出た時。
25年の記憶がなくなっていた。船に搭載されているAIのイアンにも細工がされている。
感想
宇宙船という密室内における、マリアの「誰が私を殺したか。何故殺したか」のフーダニット、ホワイダニット物。
 
非科学的な事を口にするとちびさぼから「お母さん、中学も高校も行ってたんやろ?」と言われる。不思議らしい。そんな理科が不得手の私ではありますが、SFの本領はこの自由さだと思う。コアなSFに執着しては滅ぶのよ。
 
肝はマインドマップ(人格)とクローン再生。電子の流れを英語もどきのコード(プログラム)で制御できるんやから、人間の脳もコードで制御できるようになるのやもしれん。乗組員に日本人がいるのが嬉しい。SIX(むっつ)というのに見えている以外の何が六つやったのかの意味があったの。
お薦め度★★★★戻る