2017年6月のミステリ 戻る

スペース金融道
2016年 宮内悠介 (みやうちゆうすけ)作 河出書房新社 292頁
あらすじ
企業理念「わたしたち新星金融は、多様なサービスを通じて人と経済をつなぎ、豊かな明るい未来の実現を目指します。期日を守ってニコニコ返済・・・・」の新星金融は「「バクテリアだろうがエイリアンだろうが返済してくれるなら融資する」会社。
「宇宙だろうと深海だろうと、核融合炉内だろうと零下190度の惑星だろうと取り立てる。それがうちのモットーだ」の上司のユーセフと僕は地球から500光年離れた植民地二番街を今日も行く。 駆けずり回る。
感想
金融論というのは性善説で成り立っていて、実際は三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)にはならず人間の欲望はきりが無く自分だけは儲けて逃げようと膨張し続け破裂する。のが資本主義経済の運命。量子金融工学は理解でけへんけど。。。逃げ続けるアンドロイドを追って行きついた10年前の金融破綻の真相>「スペース金融道」
 
金融屋はなめられたらおしまいだ。地獄だろうが仮想空間だろうが兎ちゃんだろうが追いこむ> 「スペース地獄篇」 これが一番好き。
 
実態の「金(キン)」ではなく国の信用で成り立っている貨幣や為替市場。これって虚構では。ほんなら自分らでも作れるんやないの>「スペース蜃気楼」
 
株価とは会社の現在価値と未来への投資なのか、それとも金儲けの賭博なのか>「スペース珊瑚礁」
 
アンドロイドは夢を見るのか・・20年ほど前「ノーム」っていうアニメがNHKで放映されててイギリスか北欧制作かと思ったらスペイン制作で驚いた。最期はノーム達は木になりはるの。数学は哲学になるのね。(ってわけわからん)>「スペース決算期」
 
”ぼく”は上司ユーセフにやられっぱなしやけど、たまにレジスタンスを起こしたり第二の人格が現れたりはちゃめちゃ。全編ほぼ理解できず難しいけどなんだか楽しい。
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いまさら翼といわれても
2016年 米澤穂信作 角川書店 353頁
あらすじ
古典部シリーズ6作目。「ふたりの距離の概算」から6年ぶりの新作(もう書きはれへんと思てた)
「箱の中の欠落」、「鏡には映らない」、「連峰は晴れているか」、「わたしたちの伝説の一冊」、「長い休日」、「いまさら翼といわれても」の6作品。
感想
暗い作風の作者の中では比較的明るい古典部シリーズ。
今まで謎だった古典部メンバーの色々が種明かしされている。ファン向けと思う。
 
小中クラスが同じだった伊原摩耶花はなにゆえ奉太郎にひえびえと冷たいのか>「鏡には映らない」
摩耶花が漫研を辞めた理由>「わたしたちの伝説の一冊」
奉太郎のモットー省エネ「やらなくていいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に」とは>「長い休日」
過去が明らかになり、高校2年生の伊原摩耶花、福部里志、折木奉太郎の未来へ進む道が見えてきて「この本は集大成でとうとう最後か・・・」と思いきや、えるがえらいことに。
こうくるか・・・
 
「鏡には映らない」が一番好きかな。「呪い返し」の話。鏡やしね。
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