2015年4月のミステリ 戻る

ありふれた祈り ORDINARY GRACE
アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞
2013年 ウィリアム・ケント・クルーガー ハヤカワ・ポケット・ミステリ 宇佐川晶子訳
あらすじ
1961年、ミネソタリバーに接する田舎町「ニューブレーメン」で起こった悲劇の夏を40年後に回想する物語。
あの夏牧師の一家は長女アリエルのジュリアード音楽院行きを待っていた。
一家は牧師のネイサン、音楽家の母ルース、姉アリエル18才、語り手フランク13才、弟で吃音のジェイク11才の5人家族。父は前途洋々たる弁護士だったが、戦争から帰ってきてメソジスト派の牧師になった。戦争のことは語らない。もうひとり協会の地下には戦争中父の部下だったガスが住んでいる。ガスも戦争のことを語らない。
小さな町には金持ちも酔っぱらいも色々なことを抱えた人々がいる。古くから大自然に暮らしていたインディオもいる。
この夏多くの人が亡くなり、フランクとジェイクは人生が厳しくままならないことを知ってしまい少年から大人の世界に踏み入る。
感想
「死刑反対」の時に言われる「キリスト教徒は、最後は神様が裁く(最後の審判)。現世での裁きはのものだから」が頭のなかをめぐる。
 
家族の話やけど、特に男の話やね。
女性は音楽や花を愛で心を満たしやわらげる人々と描かれているんやけど、感情が抑えられず事件の原因と結果を引き起こす。
正しいことをしたい牧師のネイサン、放浪者のガス、自然びとのレッドストーンら大人の男がフランクに大きな影響を与える。
深い余韻の残るエピローグはお薦め。
お薦め度★★★★1/2戻る