2014年8月の映画  戻る


イーダ SIOSTRA MILOSIERDZIA
2013年 80分 ポーランド
監督・脚本 パヴェウ・パヴリコフスキ
脚本 レベッカ・レンキェヴィチ
撮影 ウカシュ・ジャル/リシャルト・レンチェフスキ
音楽 コルトレーン
キャスト アガタ・クレシャ(叔母ヴァンダ)/アガタ・チュシェブホフスカ(イーダ/アンナ)
メモ2014.8.13(水)水曜レディースディ テアトル梅田
あらすじ
1962年のポーランド。第二次世界大戦集結から17年がたっていた。戦争孤児で田舎のカトリック修道院で育てられたアンナは18歳。修道院長から修道女になる誓いを建てる前に叔母に会ってくるように勧められる。天涯孤独と思っていたアンナはとまどう。そして叔母ヴァンダから自分がユダヤ人でイーダという名前だと知らされる。なぜ自分には父や母がいないのか。なぜ修道院で育てられたのか。叔母が引き取らなかったのはなぜなのか。数々の謎と多くを語らない叔母と共に自分のルーツを見つめる旅にでる。叔母が言うには最後に暮らしていた家に向かっているらしい。
感想
第二次世界大戦で独に占領されたポーランド。戦後は長くソ連の支配を受ける。その祖国の苦しい時代をいま描いた作品。
ねたばれあり
修道院で清く正しく育てられたイーダが聖なら、時代に翻弄されあがき苦しみながら生きてきた叔母ヴァンダは俗。ヴァンダは国が良くなるのを信じスターリン時代の血も涙もない検察官だったが、世が変わり神だけではなく国にも裏切られてしまう。
その叔母の悲劇的な生き様と自分の出生を見て、イーダは自分の生きる道を決める。
神も仏もないものかという運命を見てなお信仰の道を選ぶのは何故。そこは貧しく楽しみも少なく子を持つこともない世界。それは絶望の果てではなく、たぶん自分が教えられてできる事、自分が生きてはたすため、祈りの世界に身をおく事にしたのだと思う。
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そこのみにて光輝く 
2014年 120分 日本
監督 呉美保(オミポ)
原作 佐藤泰志(さとうやすし)
脚本 高田亮
撮影 近藤龍人
編集 木村悦子
音楽 田中拓人
出演 綾野剛(あやのごう 達夫)/池脇千鶴(千夏)/菅田将暉(すだまさき 千夏の弟・拓児)/高橋和也(千夏の腐れ縁の愛人)/火野正平(辰雄の仕事仲間)/伊佐山ひろ子(千夏の母)/田村泰二郎
メモ2014.8.15(金) テアトル梅田
あらすじ
北海道の函館市。達夫はパチンコをしたり、呑んだくれたり漂流している日々。パチンコ屋でライターの貸し借りして知り合った人なつっこい軽い若者、拓児の家に誘われる。自転車の二人乗りで連れられていった家は海辺の朽ちたバラック。拓児の姉、千夏の作った焼き飯を食べていた達夫は、隣の部屋のうめく声で姉弟の父親が寝たきりなのを知る。
感想
港町の賑いも今は昔、仕事も少なく活気が失われた町、函館。
八方塞がりの閉塞感の中、黙ってもがき苦しんでいる人々。悲惨な境遇ながら、最後は少し光が見える。
「あなたにこの望みが失われた一家を支えるっことができんの?」とどきどきしながら綾野剛を見る。
どきどきした事はもうひとつあって、大の男達夫と拓児が二人乗りの自転車で坂を下る、拓児が窓枠から飛んで寝ている達夫の上を飛び越える、神社の鳥居に提灯をぶら下げている拓児の梯子を達夫が蹴る。そういうふざけているみたいに見えんねんけど、ふたり共ものすごう真剣に動いている緊張を感じる。
一方海の波の柔らかさ、柔らかな光は対照的やった。
 
千夏に執着する社長が「家族を大事にしろ!」と達夫に言われて、「大事にしてるから、おかしくなるんだよっ」っていう心の奥底の声。好き勝手しているこんな人でもそうなのか。とらわれ思ったようにいかない窒息しそうな日々、人それぞれどう生きたらええんやろね。あがき続けるしかないんかな。
 
函館生まれの作者、佐藤泰志(さとうやすし)という方は1990年に41歳で命を絶たれたそうです。
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