「あなたにこの望みが失われた一家を支えるっことができんの?」とどきどきしながら綾野剛を見る。
どきどきした事はもうひとつあって、大の男達夫と拓児が二人乗りの自転車で坂を下る、拓児が窓枠から飛んで寝ている達夫の上を飛び越える、神社の鳥居に提灯をぶら下げている拓児の梯子を達夫が蹴る。そういうふざけているみたいに見えんねんけど、ふたり共ものすごう真剣に動いている緊張を感じる。
一方海の波の柔らかさ、柔らかな光は対照的やった。
千夏に執着する社長が「家族を大事にしろ!」と達夫に言われて、「大事にしてるから、おかしくなるんだよっ」っていう心の奥底の声。好き勝手しているこんな人でもそうなのか。とらわれ思ったようにいかない窒息しそうな日々、人それぞれどう生きたらええんやろね。あがき続けるしかないんかな。
函館生まれの作者、佐藤泰志(さとうやすし)という方は1990年に41歳で命を絶たれたそうです。