2013年1月のミステリ 戻る

目くらましの道 ヴァランダーシリーズ第五作 VILLOSPAR
1995年 ヘニング・マンケル著 柳沢由美子役 創元推理文庫 上381頁 下365頁
あらすじ
1994年6月スウェーデンのスコーネ地方の夏は始まったばかりだった。
夏休みを楽しみにしている北欧の人々。ヴァランダーもそのひとり。そんな日に、農夫から菜の花畑に女がいると通報を受ける。
感想
少女が燃えるという衝撃から始まる物語は、2001年英国推理作家協会CWAゴールドダガー受賞作。
このシリーズは、貧しさから這い上がり、高社会福祉国家で平和な社会を築いたはずなのに基礎が崩れていっているという不安と嘆きが根底にあり、そんな中自分の使命をはたす人々を描いている。(ものすごう真面目なん)
 
捜査会議はフランクに意見を出し合い、仕事時間も比較的ラフで個を重んじ日本とだいぶ違うんだろうなあと思わせる。そう思わされるだけ本シリーズの人物造詣は優れていると思う。
お薦め度★★★★戻る

背後の足音 ヴァランダーシリーズ第七作 Steget Efter
1997年 ヘニング・マンケル著 柳沢由美子役 創元推理文庫 上440頁 下409頁
あらすじ
キリスト教以前からのお祭り夏至祭前夜(ミッドサマー・イヴ)に消えた三人の若者。旅行をしているとヨーロッパ各地から絵葉書が届いているが、母親のひとりは「娘からではないわ」と警察に駆け込む。
感想
骨身を削るヴァランダーの壮絶な戦い。緻密で世の中に潜っている犯人を追う。
久しぶりに好みの刑事物(大胆な犯行、逃げる犯人、追う刑事)を堪能したな。
少しづつ少しづつアレとコレが結びついて犯人が姿を現しはじめる物語、大好きやねん。上巻は、49才のヴァランダーは離婚からいまだ立ち直れず、実父が亡くなり、おまけに糖尿病がわかってとヨレヨレウジウジしている上に、敵に裏をかかれといいとこなし。下巻は、事件が動きだし、心が折れそうになりながらも推理しひらめきをみせる。