2009年11月のミステリ 戻る

対岸の彼女    第132回直木賞受賞
2008年 角田光代著 文春文庫 327頁 
あらすじ
田村小夜子35才は専業主婦。3才の娘あかりと今日も公園にでかける。公園デビューがうまくいかず、公園ジプシーになってしまった親子には、親しく話をするお母さん仲間がいない、あかりには友達がいない。こんな閉塞した毎日にあせる小夜子。これではいけないと一歩踏み出し就職活動の末、やっと決まったのは「プラチナ・プラネット」という小さな旅行会社だった。社長の楢崎葵は、同じ35才の独身で、偶然同じ大学の出身だった。葵は明るくあけっぴろげで気さくな性格のようだ。旅行会社で何の仕事をするのかと思いきや、仕事は「掃除」。多角経営の一歩?
感想
割とお気楽に読み始めたんやけど、内容は徐々に深刻になり、読み進めるのが苦しかったのに読み終わるともっと読んでいたかったと思う
お話は小夜子視点の現在と、葵視点の過去が交互に現われる。内向的で臆病な小夜子は、高校時代の葵だ。そんな葵がアクティブにやみくもに突き進むようになったのは何故か。そして小夜子はどう変わっていくのか。葵の明るさを「身勝手なだけでは」と信用しきれない小夜子の気持ちがわかるとともに、葵の昔を知っている読者は、小夜子の背中を押したくなる。