2009年3月のミステリ 戻る

ソラニン (漫画)
2006年 浅野いにお著 小学館全2巻
あらすじ
大学時代のサークルの流れ仲間の男三人、女二人の5人は二組のカップルとシングルひとり。男三人は加藤賢一大学六年生、山田二郎(ビリー)実家の薬屋の手伝い、種田成男イラストのバイター。女ふたり井上芽衣子と小谷アイはなんとか勤めている。大学を出て2年目の24歳。(アイはひとつ年上)
 
※ソラニンとはアルカロイドの一種。ジャガイモの芽などに多く含まれる。
 
感想
「時よ、止まれ」と叫びたい年頃の5人。意に染まない仕事をして飼いならされ疲れたオトナになっていく事への抵抗と、このままでいいのかという将来への不安が渦巻いている。
男三人は、既存の価値観をぶっこわしたい(はずだった)ロッカーだ。表現者だ。流されたくない。より葛藤し苦しむ。
「結婚して子供が生まれたら、日々の忙しさにまぎれて、『こんなんでいいのか』という辛い考えに、『子供のためだから』と言い訳できるようになるのよ。そして子供が思春期になって難しくなって、自分は中年の危機になって、また思い出すのよ」 ・・・・なーんて将来は、考えたくも無い彼ら。 
 
あの頃に戻りたいとは決して思わないが、「自分の事だけ考えていれば、よかったな」というところは、いい時代だった。
 
小説家とか漫画家というのは、身を切るような大変な仕事だと思うが、こういう答えの出ないモラトリアムなお話を書き続けてもモラトリアム読者は次々現われ、お金をもらえる人々なんだな。努力した結果、成功した人でもあるし。とはいえ、漠然とした不安を、形あるものにする力はたいしたものだと思う。絵もしっかりしているし。お話は、凡人であったとしても納得いくように「日々立ち止まり自分で考え、そして歩きなさい」というところに、着陸するの。
お薦め度★★★★戻る

腐女子彼女。  (ミス外)
2005年 ぺんたぶ著 271頁 エンターブレイン
あらすじ
著者の"ぺんたぶ"は、バイト先で2歳年上の社員さんから仕事の手ほどきを受けた。のが2年前。その美人のY子さんと、お付き合いしたら、彼女は俗に言う、”腐女子”だったのだ。セバスチャンを短めて、「セバス」と呼ばれ、最近では「受けセバス」とまで言われる今日この頃。  翻弄されているようでもあり、一般教養の無い彼女達を揶揄しているような文体でもある。
 
※腐女子とは:ひとことで言うとオタクの女性版。ボーイズラブ愛好女性が「腐女子」と言われることもあるが、マンガ・アニメ・ゲームなどの二次元作品、時には芸能などの三次元を愛好する女性の総称。この呼び名は彼女たち自身が自嘲の意味で使い始めたと言われている。妄想と煩悩に翻弄されつつ、それを楽しみながらわが道を突き進むステキな乙女たちのことを指す。(エンターブレインから)
 
感想
腐女子って言うのは、「おとこもすなるにっきといふものをおんなもしてみむとてするなり。」(土佐日記から)なのかな? 内容は半分もわかりません。外見若くて綺麗みたいやけど、おばさんパワーが全開で、男が楽しんでいた世界にずかずかどかどか入ってくる。そこでは「やまとなでしこ」とか「奥ゆかしさ」とか「男をたてる」といったモノはみじんもない・・・・ような。オタクってもっとひっそり楽しむもんだと思っていた。
 
この本の、どこまでがほんまで、どこからが虚構の世界かわかりません。 が、この人たちは、世界でもっとも長生きする人種(日本の女)の一員なんだよ。こわいような、楽しいような。
お薦め度なんとも言えません。戻る