2008年6月のミステリ
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悪人
2007年 吉田修一著 朝日新聞社
あらすじ
若い保険外交員の佳乃は、出会い系サイトで知りあった男とデートしてお小遣い稼ぎする事もある。本人に自覚はないが、自分の春を売っているプチ売春。その佳乃が福岡市と佐賀市を結ぶ寂しい三瀬(みつせ)峠で冷たくなって見つかる。直前にデートしていたと思われる大学生は、姿をくらませた。
感想
始まりは佐木隆三の「復讐するは我にあり」の様なドュメンタリ形式。ところどころ有吉佐和子の「悪女について」や宮部みゆきの「理由」のような登場人物へのインタビューがはさまる。最期は東野圭吾の「容疑者χの献身」みたいだった。
哀しい話だな。見栄をはる女(佳乃)、高慢で情のない大学生(増尾)、オクテの紳士服販売員(光代)、そして
幸せになる方法がわからない
不器用な土木作業員の祐一。大きな悪人は登場しない。なのに、行き違いの結果は重大だった。出会いも落とし穴も、どこにあるわからん。
大切な人がいると日々悩みは多く、いないと虚しい。
のが人生なのかな。
ラスト、イケメンなのにロボットのように思えた祐一の物言わぬ優しさが、哀しいんだよ。
お薦め度
★★★★
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