2008年4月のミステリ 戻る

字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ
2007年 太田直子著 光文社新書 212頁
あらすじ
字幕屋稼業ン十年の著者による、映画字幕作成の実情とご苦労の舞台裏物語。
感想
映画字幕は、「一秒=四文字」が原則。それは翻訳ではなく、要約である。そうな。
コメディは、ほぼ無理ではないかと思われる制限だ。笑えないコメディが多いはず。
タブー文字は多いし(●チ●イとか)、客層に合わせた言葉にしなきゃいけないし(マニア向け映画なら、専門用語にいちいち日本語訳はいらない)、ますます貧相になる日本人の教養にあわせなきゃいけないし(「ベルリンの壁の崩壊」は、映像だけでわかる? スターリンは? レーニンは? )、昨今の「言葉の貧困」に悩まされ(ジョーシキと思われる四文字熟語がわからない!)と、時代に翻弄され心労が絶えない職業らしい。しかも、「訳がおかしい!」というのは、翻訳者のせいだけではなく、クライアントの圧力にもよる、とか。「いや、そんなこと言ってないって」というシーンに、説明付き言葉を入れなきゃいけない。
 
一番笑ったのは、「ロシアのソクローフク監督作品「太陽」が国際映画祭で高い評価を受けたというニュースを見て、興味をそそられる一方、『これの字幕を依頼されたらどうしよう。うちに街宣車が来たりして・・・?』と一瞬作者がびびったとこ(日本の天皇陛下は、ロシア語ではしゃべらないと思うんやけど)。  そこ、笑ったんやけど、なにかと大変なんだ。
 
この本を読んだ後に映画を観たら、いつもは読み流していた字幕が気になって。私はもう少し文字数が多くても読めると思うのになあ。とか、そやけど四角の中の映像全てに目を配って、字幕を見るのはむつかしいかなぁ、とかなんとか。思っているうちにストーリーに気がそぞろ。
お薦め度★★★★戻る