2005年12月のミステリ 戻る

震度0
2005年 横山秀夫著 朝日新聞社 410頁
あらすじ
1月17日N県警の警務課長の不破義仁が行方不明となった。昨夜から帰ってこないと不破の妻は言う。N県警の番頭とでも言うべき存在だった。キャリアの本部長・椎名、警務部長の冬木、準キャリアの警備部長・堀川、地元のnonキャリア組・刑事部長藤巻、生活安全部長倉本、交通部長の間宮の6人の幹部達は世間に知られないよう秘密裏に捜査を始める。ところがそれぞれの事情と思惑が絡み奥様連をも巻き込んだN県警の権力闘争へと様変わりする。唯一の例外は準キャリアの堀川警備部長だった。彼は700キロ離れていたとはいえ、淡路と神戸の大震災への対応におおわらわだったのだ。
感想
「誰がするの?どうやって?」と思う夢の様な聞こえのいい企画書をぶちあげるノー天気な人やら、社内営業の得意な人やら、他人の手柄さえ自分の物にする要領だけがいい人やらが出世の階段を登っていくのを見るにつけ、この会社どうなっちゃうんだろ、アタシの定年まではもつんやろか、、、と心配になる。仕事は己の出世の道具かよ〜。
(というのは負け犬の遠吠えかもしれん)
でもね、人には出世=権力よりももっと大切なものがあるはず、それをも捨てちゃったら人じゃないという話だと思う。それは「命を大切に思うこと」    と言いかえてもいいかな。    「半落ち」と同じくえらくひっぱる話だけど。
 
マイナス採点されつづける結果、マイナス値0で上り詰める国家公務員の最高位って色々なモノを切り捨てて手に入れるのかな、やっぱり。初めから保身のため身を粉にする人間がトップに立ってこれからの日本丸は大丈夫なはずはない、という再三問題視されているお話でもある。ただ、起業して大実業家になるか、国家公務員のキャリア組または大企業の幹部になって組織の中で勝ち残っていくか、政治家になるしか大きな仕事はなかなか出来ないのである。人を動かすとか出世、権力と言った生臭いものを避け専門職でありたいさぼてんは鑑識の鳥羽と尋問のプロ城田に親近感を持つ。
おすすめ度★★★★
戻る

白骨 A Blind Eye
2003年 G.M.フォード著 三川 基好訳 新潮文庫
感想
ホラーとかサスペンス映画を見ていると 「なんでひとりで探りに行くの?」 とか 「夜中にそんな寂しい所に行くか?(サスペリア2)」 とか 「警察に一言ゆーとけよ」 とか思う、思うはず。この小説を読んで何故そんな事をしてしまうのかが、わかりました。要するに主人公達は無謀な人たちなん。考えが足りんわけ。危機管理能力ゼロ。それがこの小説は冒頭に示されていてね。うまい。最後はお決まりの展開で。最後にあほになるわけでなく、最初からあほなんだな。言葉を変えれば警察を頼りにしない反骨の人たち。その始末に終えない作家のコーソと昔の恋人で写真家のメグは裁判所の呼び出しを無視して吹雪にもかかわらず車で逃避行をする。そして、危うく大雪に遭難しかける。 ふたりがようようたどり着いた廃屋。暖をとるため納屋の床板をひっぺかえすと、そこにはある物体があった訳。それは引っ越したはずの住人のなれのはて。
以下ねたばれ
 
 
 
 
「黒い家」みたいな話だったな。映画「ステップファーザー」も似ているかな。「黒い家」は生まれながら善悪とか優しい心が欠如した怪物に対し、この小説は生い立ちに原因を求めている。トラウマって言うのかな。アメリカらしいと感じた。
おすすめ度★★★★
戻る