2004年8月のミステリ 戻る

西洋骨董洋菓子店

よしながふみ作 新書館 全4巻
あらすじ
橘圭一郎33歳。洋菓子店「アンティーク」のオーナー。育ちがよく頭もピカイチ要領もよく容姿端麗、非のうちどころのない 男であったが女性に縁どおい。「俺はこんなに女好きなのにぃ〜なぜだ〜」男。小野祐介33歳。天才パティシエ。橘とは高校が同じ。実は卒業の時橘にこくったのだ。 結果は撃沈。その後「魔性のゲイ」を開花させる。神田エイジ22歳。元ミドル・ストロー級世界チャンピオン。親に捨てられ孤児院で育つ。元ヤンキーでHの初体験はなんと小五。 人殺し以外は一通り経験済み。甘いものに目がなく、小野祐介にほれ込み弟子入りする。小早川千影35歳。橘家の従僕というか執事というか置物というか。橘とは「若!」 「影!」と呼び合う仲。この四人のイケメン男たちで西洋骨董洋菓子店は成り立っている。
感想
優しさ幸せといった話なのかな。4人の男たちはそれぞれ 内にいたみをだかえている。エイジは捨てられた子であり、網膜剥離でボクサーを断念。小野祐介はゲイである事をカミングアウトして家族とはほぼ絶縁、しかもいつも痴情がらみのトラブルに巻き込 まれる。橘圭一郎は何不自由なくそだったお坊ちゃまだが10歳の時に誘拐されたという過去を持つ。何をされたかの記憶はいっさいない。四人の中でもっとも生きるのが難しそうなのが千影だ。 「頭わりぃー」「要領わりぃー」の千影は生きていく技術がない。彼にとって世界はぼやあっとしていて不可解なのだ。それでも彼は幸せでやさしい。
2巻、3巻で「こりゃー案外の話なんだな。単細胞の男たちと違って女の描き方に深みがあるな。」などと思っていたが、4巻目でその思いが粉砕された。暗いが見事に着地したのに 感心したよ。
 
ドラマ「アンティーク」は椎名桔平、藤木直人、滝沢秀明、 阿部寛出演。腰砕けのラストでありましたがこのドラマをみていなきゃ、この原作本にもたどりつけなかった訳でTV の影響力の強さに感謝。
おすすめ度★★★★★
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南くんの恋人

内田春菊作 文集文庫 192頁
あらすじ
高校生の南くんは恋人の同級生ちよみと寝食を共にしている。はっきりいえばかくまっている。もしかしたら愛の巣をつむいでいるのかもしれない。おままごとのような生活。それは、何故かちよみが身長15.6センチに縮んでしまい、家に帰りたくないというからだ。
感想
今放映されている「南くんの恋人」を見て、「内田春菊がこんなかわいらしい作品を描いているのか、へえ。ほお」と思ったから図書館から借りたのだ。ドラマは嵐のニノ(二宮和也)とフカキョー(深田恭子)が主演。なんといっても南くんの父役の西村雅彦がおもしろい。「おとうさんも昔お母さんを部屋に隠したいと思ったんだ」に爆笑。
 
ところが原作はと言えば、さすが内田春菊、かなりエロい。そして、ラスト。激しく落ち込む。EXPOが終わってたそがれていたココロが奈落の底に。こんなにかわいくてこんなラストでえーんか。女は親を捨て家族を捨ててみのりのない愛をつらぬいたという事か。激しい。
おすすめ度★★★★
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