2001年4月のミステリ

脳男
 第46回江戸川乱歩賞受賞
2000年 首藤瓜於(しゅどううりお)著 講談社 317頁
あらすじ
無差別爆弾魔を追いつめた警察は、踏み込んだアジトでふたりの男が争っているのを目にする。片方の男は逃げ警察に捕まった男は鈴木一郎という謎の男だった。何も離そうとしない鈴木一郎は愛宕(おたぎ)医療センターのドクター鷲谷真梨子の鑑定を受ける事になる。
感想
面白いけれど、気が滅入っていくような小説だった。
おすすめ度:★★★1/2
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人魚とビスケット

1955年作 J・M・スコット著 創元推理文庫 279頁
あらすじ
第二次世界大戦末期、シンガポールから脱出したサン・フェリックス号は日本軍の魚雷に撃沈される。ラフト(救命艇)に乗り込みなんとか助かった3人の男とひとりの女。4人は本名を名乗らず、人魚、ビスケット、ブルドック、ナンバー4と呼びあう。それからはそれぞれ精神と肉体を消耗させる漂流の日々だった。
感想
不思議なファンタジーのような海洋小説だった。ヒッチコック監督の「救命艇」のような極限状態にある密室物でありながら、もっと心理合戦が激しく読み手をも消耗させる。最後のどんでんは日本人であるからかそれほどの驚きはなかったものの、とても深く記憶に残る奇妙な小説です。哀しい。
おすすめ度:★★★1/2
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真珠の首飾り

1967年作 ロバート・ファン・ヒューリック著 ハヤカワポケットミステリ 163頁
あらすじ
名探偵の。狄(ディー)判事は次の任地に向かう途中骨休めに魚釣りでもしようと考えていた。それで身分を隠して宿に泊まったのだが、その地には江華宮という夏のお城があり、皇帝の愛娘をめぐる陰謀を解決するはめに陥る。陰謀とは、亡き母君の形見の真珠の首飾りが離宮から消えてしまったのだ。姫がちょっと美しいお月さんに見とれている間に。父親の皇帝に申し訳が立たない以上の理由が姫君にはあるらしい。
感想
主人公の狄(ディー)判事は7世紀末唐・則天武后時代に実在した人物だそうです。作者は外交官で在日オランダ大使という公務のかたわらディー判事シリーズを書き続けた方とか。
現代の中国も絶対に「一国対一国の外交」しかせず、国と国の条約時にも常に「これは誰かの陰謀ではないか?」とまず疑うと言われていましたが、これだけ権謀術出の長い歴史のある国では当然ですね。大変です。のほほんとは生きていられません。ところがですね、小説全体に漂う雰囲気はたゆたゆしたゆったりした時間の流れなんですよ。不思議です。大国なんですね。
おすすめ度:★★★1/2
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