1997年9月

ペテン師とサギ師 だまされてリビエラ 

1988年 米国 110分
監督 フランク・オズ
脚本 スタンリー・シャビロ/ポール・ヘニング/ディル・ロウアー
出演 スティーブ・マーチン/マイケル・ケイン/グレン・ヘッドリー
メモ 1997.9.6 ビデオ
あらすじ
貴族的な一流サギ師ローレンス(マイケル・ケイン)と風来坊のサギ師フレディ(スティーブ・マーチン)は、若くて美人でうぶなお金持ちから、どちらが5万ドルを巻き上げられるかを勝負する。
感想
2人の物まね合戦みたいな映画です。相手をはめる、出し抜く、足を引っ張る、面白い映画でした。ラストのマイケル・ケインのオーストラリア訛(”エイ”を”アイ”と発音するらしいです。stationは”スタイション”となる)には笑った。
おすすめ度:★★★1/2
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容疑者 

1987年 米国 116分
監督 ピーター・イエーツ
脚本 エリック・ロス
撮影 ビリー・ウィリアムズ
音楽 マイケル・ケイメン
出演 シェール/デニス・クエイド/リーアム・ニーソン/ジョー・マンテーニャ
メモ 1997.9.6 ビデオ
あらすじ
若い女性の死体が川に浮かんだ。浮浪者が容疑者となり裁判にかけられる。リリーは暴力的でしゃべらない浮浪者の官選弁護人となる。
感想
法廷物です。最初は「リーアム・ニーソンに似てるなあ」と思っていました。リーアム・ニーソンでした。さぼてん男は「女弁護士に魅力がない」とかで「★★」といいます。ぽっちゃり目が好みだとかで、シェールの抜群のファッションセンスはまったく目にはいらないそうです。
おすすめ度:★★★1/2
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ラブ・セレナーデ (Love Serenade) 

1996年 オーストラリア 101分 カンヌ映画祭カメラドール(最優秀新人監督賞)
監督・脚本 シャーリー・バレット
撮影 マンディ・ウォーカー
美術 スティーブン・ジョーンズ・エヴァンス
衣装 アンナ・ボーゲージ
出演 ミランダ・オットー(ディミティ)/レベッカ・フリス(ビィッキー・アン)/ジョージ・シェブソフ(DJケン・シェリー)/ジョン・アランスー
メモ 1997.9.13 天六ホクテンザ1
あらすじ
大自然の国オーストラリアの田舎町に住む姉妹の隣にDJのケン・シェリーが越してきた。ミステリアスな彼を巡って、姉妹の恋愛バトルがはじまる。
感想
この話の落とし所は、どこなんだろ?と思いながら観ていたのですが、なるほど。よーできている不思議なブラックコメデイです。恋愛バトルというからどんなハンサムがと期待していたのですが、あらま。しかしこの中年男の個性的な風貌がいっそう映画の”なんともいえない怪しげな味わい”を深めています。
サウンドも中華レストランのマスターが言ういわゆる「生殖行為の曲」ばかりで、甘ったるくて好みです。
おすすめ度:こういう映画好き★★★★
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パリのレストラン 

1996年 フランス
監督・脚本 ローラン・ベネギ
メモ 1997.9.13 天六ホクテンザ1
あらすじ
今日かぎりで閉店するレストラン“プチ・マルグリィ”では、オーナーシェフのイポリットと妻のジョセフィーヌが一人息子のバルナベやその友人達を、最後の晩餐に招待した。
感想
監督の自伝的小説を映画化したもの。映画中の料理はすべて、監督の父親が調理・指導したそうです。ということもあり、映画全体が家庭的な暖かみに満ち満ちています。
出演者みんなのエピソードがでてきます。特に印象的だったのは、最後にシェフの上着にみんなで寄せ書きをするシーンで、一人息子は襟の折り返しにメッセージを残します。レストランを継がなかった後ろめたさと父親への屈折した愛情が描かれていました。
昔の回想で、ジョセフィーヌが夫の浮気相手を撃退するところは貫禄がありました。レストランを閉店する段になって、夫が「実は随分昔に浮気をしたんだ」とうち明けても、知っている事をおくびにもださない。結婚生活の達人ですね。さぼてんは、まだまだ修行がたりぬ。
おすすめ度:劇中のおいしそうな料理たちもシアワセそうでした★★★1/2
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シャロウ・グレイブ (Shallow grave) 

1995年 英国 95分
監督 ダニー・ボイル(「トレインスポッティング」)
脚本 ジョン・ホッジ
撮影 ブライアン・トゥファノ
音楽 サイモン・ボスウェル
出演 ケリー・フォックス(ジュリエット)/クリストファー・エクルストン(デビット)/ユアン・マクレガー(アレックス)/キース・アレン(ヒューゴ)
メモ 1997.9.14 ビデオ 
あらすじ
軽めのジャーナリスト・アレックス、お堅い会計士・デビッド、どこか冷たい医師・ジュリエットは、ルームメイトに怪しげなヒューゴを迎えいれる。しかし、彼は麻薬の打ちすぎで昇天してしまい、3人は残された大金に目が眩み、パッパしてしまうことにする。
感想
とうとう諦めてビデオで見たんだけど・・・・あーー映画館で見たかったあああ(ターザンのワイズミューラーのようにわめいている所)。
3人ともそれぞれが絶妙の配役です。ジュリエットは、ちょっとシモーヌ・シニョレのような雰囲気でした。
話は、生き残りゲーム・スリラーでそうめずらしくはないんですが、計算された映像とストーリー展開です。
おすすめ度:好みです★★★★
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スカーフェイス(SCARFACE) 

1983年 米 169分
監督 ブライアン・デ・パルマ
脚本 オリバー・ストーン
撮影 ジョン・A・アロンゾ
音楽 ジョルジュオ・モルダー
出演 アル・パチーノ(トニー)/スティーブン・バウアー/ミシェル・ファイファー/F・マーレー・エイブラハム(オマリー)
メモ 1997.9.17 ビデオ録画 
あらすじ
1980年キューバから米国への亡命者の中には、刑務所のゴミがたくさん含まれていた。その一人トニーは、大物になる野望を胸にがむしゃらにのしあがっていく。
感想
パチーノの熱演でした。ああいう風に気合いで生きていて、ずっとテンションを高く維持している男の人ってどんなでしょうね。映画の中だけでいいです。
「スカーフェイス」を今頃見ている理由は、パチーノ最新作「フェイク」に期待しているからです。つまり予習です。こんなに力いれると、またこけるんやね。きっと。
収穫は、ヘリコプターから吊り下げられたオマリーって人は、「アマデウス」のサリエリだった!。顔じゃなく仕草でわかったよん。まじんさんの「脇役ウォッチング」に書かなくては。「誘惑のアフロディーテ」「薔薇の名前」と4作みたけど、初めて素顔を見たような気がする。
おすすめ度:バイオレンスが迫力ありました★★★
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バウンド (BOUND) 

1996年 米 108分 1997年ポルト国際映画祭グランプリ・主演女優賞(ジェニファー・ティリー)受賞 
監督・脚本 アンディ・ウォシャウスキー/ラリー・ウォシャウスキー
撮影 ビル・ホープ
衣装デザイナー リジー・ガーディナー
音楽 ドン・デイヴィス
出演 ジェニファー・ティリー(ヴァイオレット)(「ブロードウェイと銃弾」)/ジーナ・ガーション(コーキー)(「プリシラ」)/ジョー・パントリアーノ(シーザー)(「シカゴ・コネクション 夢見て走れ」)/ジョン・P・ライアン(ミッキー)
メモ 1997.9.20 大阪 OS劇場C・A・P 
あらすじ
盗みのプロだったコーキーは仲間の裏切りで刑務所に5年間服役し、出所したてだった。アパートの一室の内装の仕事をしていたコーキーは、マフィアの情婦ヴァイオレットとエレベーターに乗り合わせ、2人はひとめで惹かれ合う。
感想
実に計算されたストーリー展開と映像でした。特に映像は凝っていて、室内劇のような映画を飽きさせないで最後までひっぱりました。「シャロウ・グレイブ」が赤、青、緑の色使いだったのに対し、この映画は、ブラック、シルバー、白を基調とした都会風ハイセンスな映像です。
人間を観察しカンで生きてきた人たちが、「たぶんこうすれば、相手はこう出るだろう」というのを読んで勝負を賭ける話の連続です。さぼてんにはまねができない。
余談ですが、「ブロードウェイと銃弾」でも、人間性を知り尽くしたマフィアの用心棒が脚本を手直ししていく所がおもしろかった。

−−−好みなので、長めのネタバレを含む感想を書きます。−−−
ヴァイオレットは、いつも半分下着のようなドレス姿で、古風なギャングの女を演じながら、中身は全然違う。恋人に他の男との関係をなじられて、「あれはSEXじゃない。仕事よ」という所は、精神的なタフさをあらわしていました。
コーキーは、名前と雰囲気がぴったりです。ものすごく格好いいです、すべてが。
ヴァイオレットの旦那のシーザーは、三本足の一人、この人が弱いと映画は腰くだけになる所です。げすっぽいハンサムであり、暴力的なチンピラ風ながら頭の回転もいい。老眼鏡をかけてお金の計算をしている所は、大学教授にもみえる細かい演出です。文字どおりのマネーロンダリングで、あんなに沢山の洗濯ばさみがあるんかなあと思っていたら、ああすんのか。かしこい。
最後の唇へのとどめのキス、ミッキーのあの未練の顔、演出のうまさでうなりそう・・・・
おすすめ度:★★★★
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摩天楼を夢見て (GLENGARRY GLEN ROSS) 

1992年 米 100分 ベネチア映画祭主演男優賞:ジャック・レモン
監督 ジェームズ・フォーリー
原作・脚本 デビット・マベット
撮影 ファン・ルイス・アンシア
音楽 ジェームズ・ニュートン・ハワード
出演 アル・パチーノ/ジャック・レモン/アレック・ボールドウィン/エド・ハリス/アラン・アーキン/ケビン・スペイシー
メモ 1997.9.29 BS
あらすじ
不動産会社のある支店が舞台。本社から乗り込んできたやり手が、「明日までに契約が取れなければ、お前らクズはクビ」とハッパをかける。つきに見放されている営業マン達は、不満をぶちまける者、泣きをいれる者、何をしていいやらわからない者たちの夕刻から次の日の昼までの人間模様。
感想
「見たっけなあ?見たのは「摩天楼はバラ色に」だっけ。」とか思いながらガサゴソ録画できるビデオカセットを捜している内に、映画が始まってしまった。そのままずるずる見るハメに。「あー見てるばやいやないなー」と思いながらもアイロンかけしながら見てると、さぼてん男が帰ってきた。「夕飯まだ」と言うので、「見といて、見といて」といって、いつもの倍の速さで、ご飯をチンしてお味噌汁を温めて、目玉焼きを作って映画に戻る。(そういや、幼稚園の時もTV番組見といてと母親にエラソーに指示して幼稚園へ行ってたっけ)
さぼてん男に「あの人が「セブン」のケビン・スペイシー、こっちは「アポロ13」のエド・ハリス、ええっとあの人だれだっけ」と一通り説明して最後までみました。
バタバタして見ましたが、ピュリッツァー賞に輝いた戯曲の映画化との事で舞台劇のようでした。何回「ファック・ユー」がでてきたか数えといたらよかったくらい怒鳴り合ってました。「エド・ハリスの目は緑色なのか。ケビン・スペイシーは冷たい目やな。パチーノは虚ろな目がうまい。ジャック・レモンの涙目もいい。年とっても映画に恵まれて幸せやな。」とか目がすごく印象に残りました。
わからなかった人はアラン・アーキンでした。今度は覚えたゾ
おすすめ度:★★★★
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危険な動物たち (FIERCE CREATURES) 

1997年 米 
監督 ロバート・ヤング&フレッド・スケピシ
脚本 ジョン・クリース&イアイン・ジョンストン
撮影 エイドリアン・ビドル&イアイン・ジョンストン
音楽 ジェリー・ゴールドスミス
出演 ジョン・クリース(ロロ・リー)/ジェイミー・リー・カーチス(ウィラ・ウェストン)/ケビン・クライン(ビンス&ロッド・マッケイン)/マイケル・ペリン(昆虫狂バグシー・マローン)
メモ 1997.9.30 三番街シネマ 空いてた。ガラガラ
あらすじ
世界的多角経営大企業のオクトパス社は、企業の乗っ取り、買収、売却を繰り返し、ロンドンのマーウィッド動物園を手に入れた。25%増収確保のため、新しく園長になったロロは、”危険なスリルある猛獣たち”アニマル・パークに模様替えしようする。
感想
ビンス役のケビン・クラインのキレが悪いような気がした。「スクリーム」で噂されていたジェイミー・リー・カーチスの胸は”ほんまにほんまもん”なのか?と気になってしまって・・というくらいあの胸は、目のやり場に困らない活躍でした。
堅物の園長もおもしろかったけれど、昆虫の飼育係バグシーと、いつも一緒のラリー(レッド・ニー・タランチュラ)がかわいい。危険な動物しか置かないという園長にバグシーが「蜂は危険です。イナゴも〜」と説得する所、ハハハ笑った。
おすすめ度:動物たちがかわいい★★★1/2
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殺戮にいたる病

我孫子武丸作 講談社文庫 316ページ 1992年
あらすじ
猟奇犯罪物です。
感想
気持ち悪かった。・・・違うな、こういう感じ→ぎぼぢわるがった
でも、1992年単行本、1994年ノベルス、1996年文庫化とよく売れているんですね。
最後の笠井潔の解説はさっぱりわからん。lol(お手上げ)。この「解説」を読まれた感想をぜひお聞きしたい所ですが、残念ながら解説から読むとネタバレになってしまいます。漢字の多さだけでもクラクラ。
おすすめ度:よくできているなと思いつつ・・よくできてました。
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欺かれた男 (AH,TREACHERY!)

ロス・トーマス作 ミステリアスプレス 246ページ 1994年 菊池よしみ訳
あらすじ
罠にはめられ陸軍少佐を罷免された”dがふたつ”のエド・パーテインは、VOMIT(軍事情報部の裏切りによる犠牲者達)という組織から、「死の床についている婦人が依頼した仕事」を紹介される。
感想
25作目、最後の長編です。この本を読んでいると、映画を観ているみたいに場面のイメージや、登場人物の表情が、頭の中に浮かび上がってきます。「鮮やかな文章」です。元CIA局員を父にもち、エイズで夫を亡くしたショーニーが主人公になる数ページだけでも読む価値ありです。
表紙絵↑のように、VOMITという組織では国旗を逆さまにかけています。
おすすめ度:★★★1/2
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パズル崩壊

法月綸太郎(のりづき・りんたろう)作 集英社 291ページ 1996年刊行
あらすじ
名探偵法月綸太郎が登場しない初めての8作の短編集です
感想
本格密室物「重ねて二つ」(聞いて!聞いて!これはわかった!)、倒叙物「懐中電灯」(じぇんじぇんわからなかった)、風変わりな「シャドウ・プレイ」面白かった。後の作品はマニア向けなのでしょうか?苦しそうでした。そのために一層作者は愛着があるのかもしれません。
おすすめ度:★★★
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かくも冷たき心 (Cold Cold Heart)

ジェイムズ・エリオット作 早川書房 299ページ 1997年刊行 中原裕子訳
あらすじ
4人の女子大生が誘拐され、バラバラ死体となって発見された。犯人のサイコ・キラーは、CIAが米国に亡命させた元KGBだった。サイコを輸入してしまったCIAは、証拠隠滅のため密かに犯人を追跡する。
感想
面白くなくはないんだけれど、シドニィ・シェルダン風です。ストーリー展開に目新しさはありません。会話文がもひとつで、そのため主人公たちの性格が掘り下げられていない。サイコ野郎が一番それらしく描かれていました。映像化が前提となったお話です。
ジョン・マクティアナン監督(「レッド・オクトーバーを追え!」)が映画化権を取得しているとの事。追う方の主役はメル・ギブソンかな?42歳の設定なのでちょうどいいんだけど。この際、サイコ野郎の方がいいかも。(あの水色の目ン玉は切れた感じがするもんね)
おすすめ度:★★1/2
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甘美な毒 

マーガレット・マロン作 ミステリアス・プレス 361ページ 1996年 高瀬素子訳
あらすじ
判事のひとりが急死したため、デボラは”棚ぼた”判事となった。選挙中の口からうっかり公約のため、トンカチ片手にボランティアにかり出されたデボラは、作りかけの家で死体を発見する。
感想
アメリカ探偵作家クラブ賞、アンソニー賞、アガサ賞、マカヴィティ賞と賞を総なめした前作「密造人の娘」にくらべ、小粒です。前作はゆったりした南部の土地柄と、悪意ある張りつめた空気のミスマッチが、ユーモアミステリながら、不安定な雰囲気をだしていたのですが、今回は薄めでした。
ただ、女性だけのボランティアが大工仕事にはげみ家を建てていく様子は、「自分の事は自分でする」というアメリカ魂が感じられ好感が持てます。3Kの代表のように言われるけれど、大工さんや設備屋さんっていい仕事ですね。
おすすめ度:★★1/2
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冬のオペラ 

北村薫作 中央公論社 260ページ 1993年
あらすじ
姫宮あゆみの勤めている不動産屋の2階に、年の頃は40前後の巫(かんなぎ)弓彦という男が名探偵事務所を開いた。巫は、”名探偵になった”のではなく”探偵であるという自分に気づいた”のである。
感想
最後の密室物は、スマートでした。
しんのあるウエハースか綿あめのような女の子と、中年のアルバイターで浮き世離れした孤高の「名探偵」が主人公です。「名探偵」はとてもユニークなキャラクターで新鮮な探偵像です。女の子は大島弓子の漫画を思わせます。大島弓子は好きなのですが、ちょっと違います。「嘘っぽい」のです。元々ミステリは虚構のお話ではあるのですが・・・うまく書けませんが、もやもやイライラするのです。
「ニューウェイブミステリ読本」に載っている作者へのインタビューを読むと「何回も読み直していただくと見えてくる物がある」という深いお話のようです(ふうーん)。この作者は4作目ですが、どうもピンとこない。合わないみたい。といっても評判の「スキップ」「ターン」は読んでみたい。
おすすめ度:3作目はよくできていました。★★★
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蟲(むし) 

板東眞砂子作 角川ホラー文庫 295ページ 1994年 第1回日本ホラー小説大賞佳作
あらすじ
結婚3年目、妊娠したので会社を辞めためぐみは、夫の純一が富士川で見つけたという石の器を家に持って帰ってから、不思議な白日夢を見るようになった。その夢は亡くなった祖母が「ムシガオキタ」とつぶやく夢だった。
感想
あまり恐くも気持ち悪くもなりませんでした。でも、題材が新しい感覚だと思います。話そのものよりも、最初の方で主人公が子供を育てるために仕事を辞めた事で心が揺れている所に、感情移入してしまいました。私も勤めを辞めようかと半分思っているので、マジに考えさせられてしまった。
大きなカタストロフィが起こるのかと身構えていたのですが、こういう結末なのか。
おすすめ度:★★★
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奇跡の人 

真保裕一(しんぽゆういち)作 角川書店 403ページ 1997年 
あらすじ
交通事故による瀕死の重体、植物状態をへて相馬克己は、奇跡の復活をとげ病院では「奇跡の人」と呼ばれていた。8年間の闘病生活をおえ中学一年生程度の知識を持った克己は、自立した一人暮らしをはじめる。30才になった克己は、事故前の記憶はクリアされもう一度あらたな人生に立ち向かおうとしていた。
感想
前半はすごく引き込まれます。いい人しかでてこないのですが、生活の臭いもします。宮崎が舞台なんていいなと思っていたら、後半はやっぱり東京に舞台が移ってしまいました。
疑問に思うのは、闘病している息子を毎日看病しているお母さんの仕事がまったくでてこない所です。どういう仕事なら、あんなに看病ができるのか知りたかったのですが。

−−−ネタバレあります(最近これが多い)−−−
映画「デットゾーン」に似たところがあります。スティーブン・キングの原作本「デットゾーン」も読んで比較検討しなくては。あの映画でも、ちょっとやな女と思ったけれど、今回逃げ回る元恋人はそれ以上。そんなに必死になって守らなければ、崩壊するような家庭なんでしょうか? それとあのラストは、どう折り合い付けるわけ? 
過去の秘密は、「お母さんが本当のお母さんではなく、息子が事故死した人でそれが信じられなくて、息子だと思いこんでいたんだ」と勝手にお話を作って読んでいたので、多少なーんだでした。(でもそれでは、よくある話になってしまうか)
おすすめ度:★★★
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キルショット 

エルモア・レナード作 文芸春秋 373ページ 1992年 高見浩訳 
あらすじ
舞台はカナダ国境に隣接するミシガン州の山間部。ディアハンターたちの心の故郷。ここで平和に暮らすウェインとカーメンの夫婦は、凶悪な殺し屋の顔を目撃したことから命を狙われる。
感想
NOBODYさんに、エルモア・レナードのお薦めを教えてもらって図書館にいったのですが、これしか残っていなかったのでひとまず借りて読むことに。そしたら、ぐふふふ~(^^)~、おもしろい、これ。
悪人も、善人も、普通の人もみんな話がうまい。読ませます。
映画「ファーゴ」のブシェーミとストーメア(「ロスト・ワールド」ではコンピーに食べられちゃう人)のような関係の殺し屋に対するは、惚れあっている幸せな”ごく普通の夫婦”(見かけはね)の2組の相棒物語です。カーメンの筆跡占い(筆跡で性格と個性を当てる法)がまたユニーク。
「お上はあてにせーへん」という精神がアッパレでした。(でもまあ、あてにならないどころか足を引っ張るていたらくやもんね)
おすすめ度:★★★★1/2
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死神 

篠田節子作 実業之日本社 273ページ 1996年 
あらすじ
福祉事務所の相談員と担当したケースの当事者からなる8編の連作集。
感想
本の題からホラーだと思っていたのですが、様々なタイプの人間像が主題でした。豪傑な赤倉係長と、正反対の軟体動物のような紺野綾の「花道」(寿退社が女の花道というコト)が皮肉たっぷりでおもしろかった。それと、元結婚サギ師の72才大牟田マサの「緋の襦袢」、これは結構恐い。
人には様々な生き方があるから、他人にそれほど迷惑をかけない限りなんでもOKと思う。一方で、できれば経済的に自立していたいような気もする。しかし、現実にはなかなか難問なんだなあ、これが。
おすすめ度:★★★★
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死国 

板東眞砂子作 マガジンハウス 293ページ 1993年 
あらすじ
東京での生活に疲れ、小学校時代を過ごした故郷四国の矢狗村に戻ってきた明神比奈子は、幼なじみの日浦莎代里(ひうらさより)が18年前中学3年の時に事故で亡くなっていた事を知る。口寄せ巫女の家系の日浦の家は、莎代里の父が植物人間となり、兄は行方不明で荒廃していた。
感想
”人間死んだらおしまい”ではなく、覚えている人がいるかぎり魂は残る。四国は”死国”であり、お遍路さんたちが右回りに巡る事で四国に結界をつくっています。どんなに恐いかと怯えながら読んでいたのですが、夜なおラブホテルのネオンが明るい都会のマンションでは、そんなには恐くありませんでした。
でも、今シーンとした中で一人で感想を書いているとぞぞぞっと恐くなってきました。後からジワジワきいてきます。
おすすめ度:土佐弁が現実味を増しています。特に最後の半ページがいいです。1読の価値あり。★★★1/2
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