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現代音楽は面白い?
先日(2002年12月19日)新宿オペラシティリサイタルホールで開かれたアンサンブルヴィーヴォのコンサート2002「想像におけるテクノロジーの可能性」を聴きに行きました。
よく考えてみると私が聴きに行くコンサートの半分近くは(仕事に追われているのでもともと頻度は高くありませんが)現代音楽です。
もちろん私も現代音楽にはつまらないものが多いと思うし、
大半は淘汰されると思っています。
ではなぜ現代音楽を聴こうとするのか?
普段あまり考えていませんでしたが、
このコンサートに触発されてちょっと書きとめておこうと思いました。
以前ある展覧会で、
たまたま現代絵画をたっぷり鑑賞したすぐあとに古典的作品群を鑑賞したことがあります。
そのとき言いようのない感覚−古典的作品はなんとつまらないのだろうという感覚−に襲われたことがあります。
現代モノと古典モノを分離して展示してある美術館はよくあるので、
その後何回か同じことを試してみましたが、
常に同じような興ざめな感じがしたのです。
逆は問題ありません。
つまり古い作品から順を追って現代モノに移行すると、
自然に全てを素晴らしいものとして鑑賞できるのです。
これは音楽でも言えます。
コンサートのプログラム編成でよく行われるのは、
古い音楽から新しいものに移行するように組むことです。
これはその順で聴くと自然であるからに他なりません。
しかし順序を逆にすると大抵違和感があります。
現代音楽のコンサートに行くとその雰囲気に引き込まれ、
自分は現代音楽を欲していたんだなという気になって来ますが、
この状態から古典音楽やロマン派の音楽を楽しむ自分に戻るには少し時間をおかなければなりません。
(私の場合は最低1時間程度)
何かを鑑賞あるいは観賞するという行為の心境には二種類あるのではないでしょうか。
一つは、
既によく知っている作品や演奏を追体験的に確認するというものです。
これは温泉につかるようなリラックス感に通じるものがあり、
あるいは「あの時の興奮をもう一度」というような積極的追体験であったりしますが、
要は予測できる予定調和感がキーポイントです。
一方、
これは何だろう、とか、
知らないことを知りたい、
という欲求も人間にはあります。
現代音楽を聴きたいと思う気持ちはこちらだと思います。
同様な意味でルネサンス以前の音楽や世界の民族音楽を聴きたいと思うのもそうかもしれません。
この場合のキーポイントは、
予測できないこと、
だと思います。
誰かの作品で次の展開が予測できないということは、
新しいアイデアに触れることなので、
それだけでエキサイティングです。
そして未知の音は未知というだけで美しい。
どんな自然環境音でも、
目をつぶって「今この音はオーディオ装置から出ていると仮定しよう」と思って聴くと、
素晴らしい音に聞こえます。
小鳥のさえずりや川のせせらぎだけでなく、
通過する電車の音でさえ。
まして現代音楽では予測できない音が次々とやってくるわけです。
それは自分の感覚それ自体を楽しむ体験になります。
「知らないアイデアを知りたい」というのと、
この「新しい音そのものを楽しむ」こと、
どうもこれが私を現代音楽のコンサートに駆り立てる理由のようです。
現代音楽はCDでなくナマで聴く方がずっと良いと思います。
それは私が音自体を楽しんでいたからに他なりません。
もちろん構成や作曲技法を楽しむということもあり得ますが、
それ以上に音そのものを鑑賞しているのです。
これはナマの方がいいに決まっています。
それに、
CDというのは追体験に適したメディアですが、
未知体験はナマのコンサートの臨場感と即時性ならではできることです。
現代音楽は是非ナマで。
これはだまされたと思って行ってみてください。
最近は満席のコンサートも多く、
寂しい思いもせず雰囲気も楽しめます。
ただし現代音楽を楽しむ絶対条件が一つあります。
それは演奏が一流でなければならないことです。
わかりやすい音楽と違って、
自分の頭の中で補間したり予測して楽しむわけには行かないので。
「想像におけるテクノロジーの可能性」では私の友人である小坂直敏を初めとする6人の作品が出展されました。
いつも小坂氏の音楽は聴いていて心地よいものです。
この日もそうでした。
演奏も大変結構でした。
他の作曲家の作品にもとてもいいものがありました。
もちろん中にはつまらない(と私には思えた)作品もありました。
でも、それでもいい。
このコンサートは既存楽器とコンピューターの組み合わせによる音楽の新しい試みの場です。
今後もこのような試みを是非続けて欲しいものです。
その中から「また追体験したい」と思える音楽が淘汰されずに残るのでしょう。
[2003年1月1日 記]
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