須崎由紀子リサイタル報

        
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 11月3日(水)カザルスホールで須崎由紀子リサイタルがあった。 目玉はポーランド語によるショパン全歌曲、 特に新しく発見された無伴奏の「マズル・どんな花」は日本初演で、 世界的にもステージ演奏の記録は見つかっていないという。
 ショパンの前にアベ・マリアを中心とする祈りの歌が何曲か演奏された。 これらはいつなんどきでも楽譜なしで歌える須崎さんの標準レパートリーかのように聞こえた。
 後半ショパンの歌曲は全部ポーランド語で歌われた。 ポーランド語を特訓したのだろう、 さすがに譜面を真剣に見ながらの演奏だったが、 音符より歌詞を見ていたのだと思われる。 ポーランドの庶民的娘の歌(「願い」「彼女の好み」「リトアニアの歌」)では地声的発声で、 深い悲しみを唱う歌(「悲しみの河」「望みはない」「舞い落ちる木の葉」など)では声楽的発声を使うなど、 声質を使い分けている(ように筆者には聞こえた)ところが興味深かった。 また、 原調のまま歌われた曲もあったが、 多くは短三度、ものによっては完全四度など音程を上げて歌われた。 「望みはない」「木の葉が舞い落ちる」は原調で聞きたいところだが、 前者は原調で歌われた。 この二つや「悲しみの河」など深い悲しみを唱う歌が非常にいい。 また下田幸二氏のお話で解説や「マズル・どんな花」の紹介があったが、 わかりやすく品のいいお話で、 音楽会に花を添える演出であった。 「マズル・どんな花」は下田幸二氏の著書に楽譜の断片が出ているが、 それから予想された通りのリディア調の素朴な歌だった。
 全体として歌もピアノもフルートも心がこもっていて、 しっとりとした音楽になっていた。 変化に富むも刺激的なところはなく、 漂う音に身をまかせることのできたひとときであった。 カザルスホールの響きの良さはあらためて書くまでもないであろう。 プログラムを次に載せておこう。

ソプラノ:須崎由紀子
ピアノ:村上弦一郎
フルート:高桑英世

−やすらぎの祈り−

Ave Maria    C. F. グノー曲    Sop.  
Ave Maria    G. カッチーニ曲   Sop, Flute
「マタイ受難曲」より             
  愛してよりわが救い主は死にたまわんとす〜
           J. S. バッハ曲    Sop, Flute   
Ave Maria    F. P. シューベルト曲 Flute  
「天地創造」より               
  今や野の新緑が目に歓びを与え〜     
          F. J. ハイドン曲   Sop.    
Ave Maria    P. マスカーニ曲   Sop, Flute

−F. Chopin Songs−

(お話 下田 幸二)

作品74
(1) 願い       
(2) 春        
(3) 悲しみの河    
(4) 酒宴       
(5) 彼女の好み    
(6) 私の見えぬところに
(7) 使者       
(8) 美しき若者    
(9) メロディー    
(10) つわもの     
(11) 二人の死     
(12) 私のいとしい人  
(13) 望みはない    
(14) 指輪       
(15) 許婚者      
(16) リトアニアの歌  
(17) 木の葉が舞い落ちる
(18) 魔力       
(19) ドゥムカ     

マズル・どんな花


[1999年11月4日 記]  




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