金子美香(Alto)ミニコンサート


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[2016年7月1日 記]

 アルトの金子美香のミニコンサートを聴いた。
 ピアノ伴奏は朴令鈴(Linglinf Park)。最初の5曲が日本歌曲、後の5曲がフランス歌曲というプログラムだった。どちらもよかったが、特に日本歌曲の方が印象に残った。というのも、今まで日本歌曲といっても西洋の声楽の歌い方で歌われるのが普通だったから、それに違和感を抱くことが多かったのだが、金子美香さんの歌い方はとても自然で、日本語としての言葉がはっきり聞き取れたのだ。歌の表情も、声優が吹き替えた洋画のセリフみたいではなく、日本の日常の感じがしたのだ。もちろん西洋音楽のオーソドックスな声楽家なので、地声で歌っているわけではないし、意図的な歌い方というわけでもない。しかし日本歌曲をとても素直に楽しませてくれる。一緒に聴いた私の妻も、「木下牧子の『さびしいカシの木』をコーラスでやったときは面白くない曲だと思ったけど、この人の独唱を聴いてとてもいい曲だと思った」と言っていた。
 後半のフランス歌曲もどれも良かったが、特にサムソンとデリラのアリア「あなたの声に私の心は開く」に注目した。というのも、3月に妻が歌うのを伴奏したばかりだからだ。そういうこともあって、こちらは伴奏ばかり聴いてしまった。どんなに歌唱が良くても伴奏が良くなければ興ざめである。その点、朴令鈴の伴奏は良かった。柔らかなタッチと音色で、歌唱の自然さに付き添って、これまた自然な伴奏である。息もピッタリ合わせている。この曲の曲想からしてもっとドラマチックでもいいかなという気はしたが、あくまでも自然さに徹した、控えめな伴奏だった。控えめとはいえ、この伴奏は低音から高音を駆け巡る両手の和音連打をppで弾くのが難しい。これを、音抜けせず、均一に弾いていた。

 ピアノは蓋を一番拡げて開けていた。金子美香さんは実力派のように見受けられた。アルトとあるが、メゾソプラノの感じがした。音域の広い人である。

[2016年7月1日 記]


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