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アシュケナージ兄弟デュオ・リサイタル報(2002年6月26日)

 浜離宮朝日ホールでクラリネットのディミトリ・アシュケナージとピアノのヴォフカ・アシュケナージ兄弟のデュオ・リサイタルがあった。 ヴォフカはウラジミール・アシュケナージの長男、ディミトリは次男である。 妻と二人で出かけた。 曲目は次の通り。

(1) R. シューマン:3つのロマンスOp.94
(2) J. ブラームス:クラリネット・ソナタ第1番ヘ短調Op.120-1
(3) J. アイアランド:幻想ソナタ変ホ長調
(4) A. チェレプニン:1楽章のソナタ
(5) F. プーランク:クラリネット・ソナタ

(1)(2)はおなじみの曲だ。 いかにもストイックなロマン派室内楽。 ていねいに美しく奏されたが、 プログラムの始まりということもあってか、 少々堅苦しい感じもあった。 休憩を経て、 (3)以降は初めて聴く曲ばかり。 (3)は演奏は良いが曲はあまり好みではなかった。 何かロマン派を現代っぽくしようとしてうまく行かなかったような感じに聞こえた。 (4)はバーバリスティックなシンコペーションが面白い。 (5)は最も聴きごたえがあった。 これはフルート・ソナタとオーボエ・ソナタとともにプーランクの木管3部作だそうだが、 最も有名と思われるフルート・ソナタに確かに似た雰囲気を持つ。 面白くかつ大変美しい曲である。 最後は拍手にこたえて短いアンコール曲を2曲。 どことなくプロコフィエフのバイオリン協奏曲第1番第2楽章に似た感じの、 非常に技巧的で速い小品。 兄弟はそれぞれ美しく丁寧に、 ときには力強くきらびやかに演奏した。 非常なピアニシモからフォルテまでダイナミックレンジが広い。 何よりも息がぴったりあっている。 普段はそれほどべったり一緒にいるというわけではないらしいが。

 さて、 私は1990年イギリスに住んでいたとき、 3ヶ月ほどヴォフカのピアノのレッスンを受けたことがある。 リサイタル終了後、楽屋に行ってみた。 あれから11年経つ。 私を覚えているだろうか。 恐る恐る面会したら、 私を見るなりファーストネームを呼んだ!  覚えてくれていたのだ。 これは正直言って、わりと嬉しかった。 妻とは初対面だったが話は弾んだ。 当時私は「帰国するから」と言ったつもりだが、 なにか私が急にレッスンをやめたと思っていたのか 「You disappeared」 と言ったので 「Today I appeared again」 と言った。 また交信が始まることを期待しよう。

[2002年6月26日記]
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