「山田優とおかまバー」


気弱な新人ADに連れられて、新宿は歌舞伎町にあるおかまバーへ。
外で待たされること30分。そのあげく、
「まだ前の収録が押しているようなので、
1時間後に再度ここへ来てもらえますか?」
と、申し訳なさそに言われた我らパイ投げられ隊選抜メンバー6人。

みんなで喫茶店に入って暇をつぶす。(もちろん自腹。)
1時間後に戻ってみるとAD気弱くん、
「すいません。まだ押してるみたいで...。
携帯番号を書いてもらえますか?連絡しますから」

てなわけで、また一時解散。いったいいつ始まるわけ?などと思ってたら
15分程で連絡が入る。で、あわてて戻ってみるも、
状況はあまり変わっておらず、結局 外でまた待たされること30分..。

まぁ、一番下っ端のエキストラですから、
段取りの悪いADにも誰も文句は言いません。
でも番組制作ってホント大変ね。


そんなこんなでようやくお店の中に入ると
営業前の店内は照明も明るく、なんだか閑散とした印象。
7、8人のおかまのプロたちがめいめい、お顔を制作中。

しかしなんてバラエティに富んでるんでしょ。

・ぽっちゃりでむっちりのお姉さん
・ワイルドな金髪のドラッグクィーン
・プロポーション抜群の派手な妖怪人間ベラ
・ドレスを着て、厚化粧したロン毛のおっさん
・「ちょっとあんた、煮物作り過ぎちゃったのよ、わけてあげっから少し持ってきな。」
 なんて言い出しそうな下町風おばちゃん
・どう見ても還暦は過ぎて、へたすりゃ古希を迎えてるんじゃないかと
 心配させる着物姿のおばあちゃん
などなど。

おかまの方々とお会いするのは久しぶりなんだけど、
毎回不思議なのは自分の感覚。頭では男だってわかってるはずなのに、
気が付くと女の人と話しているような気になってる。
女性扱いしてる自分がいるんですな。ホントに妙な気分。


とりあえずソファに座って指示を待っていると
番組のスタッフが我々選抜メンバー6人に向かって話し始めた。

「みなさんはお客さん役として急遽こちら来ていただいたわけですが、
ちょっと問題がありまして、おかまの人数が足りないんですよ。
で、すいませんが誰かおかま役をやってくれる人いませんか?」
「はい!」
と、手を挙げ即答しているワタシ。

「ヒゲも剃ってもらわないといけないんですが...」
「剃ります、剃ります。」

どっからでてくるんだ、その前向きな姿勢。(苦笑)

でもなぜかこんな時って
せっかくだから何でもやっとけ。面白いじゃん。
そんな意識が羞恥心を簡単に抑え込んでしまうんだよねぇ。

結局、線の細い3人が立候補、推薦によっておかまになることになり、
1人づつ、女性スタッフによりメイクしてもらう。

ファンデを塗られ、口紅を差し、
アイラインが入り、青いアイシャドウが引かれる。
考えてみたら化粧するなんて生まれて初めてだ。妙な感覚。
徐々にワタシは女よ、てな気分になってる自分が怖い。
何故か意識が小指にいく。気が付くと流し目になってる。(笑)

そして、衣装が渡される。
ワタシが着ることになったのは、
昔のアイドルが着ていたような黄色のフリフリワンピースと
白いベスト。

めっちゃ恥ずかしいのに喜んでる自分も確実にいる...。

トイレに行って髪を整える。もう意識はほぼおかまに。
(昼間の生クリーム整髪料のおかげで髪ツヤツヤよ。)

トイレから戻ると、テリー伊藤と山田優が到着。
挨拶をして席に着くと、山田優がこっちを見て笑ってる。
で、照れながら会釈。

ちょっと間をあけてまたチラッと山田優を見ると
(ひゃぁ、まだこっち見てニコニコしてるよぉー。)
ワタシの女装..けっこうイケてたりして?
(...って、なんでそんなに前向きなんだ自分..キャラ違うし)

で、もいちど、会釈withスマイル。
うーん、よくわからんがなんか楽しくなってきたゾ。

そしていよいよ、
照明が営業用の赤い色に変わって、
店内はおかまバーらしくあやしい雰囲気に..。


つづく

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