「おかまバーでプロデューサーと」



「それでは、そろそろ収録始めたいと思います。
まずは優ちゃんとテリーさんの
お店の外でオープニングの画を撮ります。
その後、お店に入ってきますから拍手で迎えてください。」

ワタシのテーブルは優ちゃんたちのちょうど真後ろ。
これなら背景として確実に映るな。と喜びつつ席につくと、
隣りにはお客さん役の番組スタッフ。

テーブルには乾き物のおつまみをのせた大きなお皿、
グラスにはウィスキーに見立てたウーロン茶が入れられ、
同じくウーロン茶の入ったピッチャー、アイスバケットが置かれている。

背景とはいえ、おかまっぽくウィスキー注いだりして、
らしく接待してる動きをしなきゃな、と微妙に緊張してると、
「まぁ、適当でいいから。普通に雑談でもしてればいいよ。
どうせこっちの声は入らないし。」と、隣りのお客さん役。

妙に貫禄あるなぁこの人、と思っていたらなんと番組のプロデューサー。

優ちゃんとテリーさんが入ってくる。
おかまのプロたちが出迎える。
誘導されて予定通り、前のテーブルに着き、本格的に撮影が始まった。

カメラ-優ちゃん-ワタシ...位置関係としてはほぼ一直線。
「優ちゃんなめのワタシ」そんな画が撮れてるはず。

あとはなるべくカメラの方を見ずに
ワタシは背景としておかまっぽく雑談をする、と。

しかし、この雑談がねぇ...。
ワタシ、このプロデューサーにみごとに、あっぱれな程に
下に見られておりました。(苦笑)

歳を訊かれ、38歳ですと答えると、
「そうなんだぁ、38で...(エキストラかぁ、苦労してんだ..。)
へぇ..、(しかもおかま役なんてやらされちゃって。)
そっかぁ...、大変だねぇ。」

「いえ、別に..」
(あ、もしかして今オレ..売れない役者だと思われてる?)

「このギャラっていくらくらい貰ってるの?」
「3000円です。」
「あ、ホントにぃ。それじゃ苦しいよねぇ。食べていけてる?」

(あ、もしかして今オレ..売れない役者&貧乏人だと思われてる?)
「いえ、エキストラは遊びみたいなものですから...。」

「そうかぁ、じゃあ何か他に仕事してんの?」
「イラストレーターやってます。」
「そうなんだ。どう、忙しい?」
「まぁ、ぼちぼちって感じですかねぇ。」
「結婚は?」
「いえ、独身です。」

「そうだよねぇ、お金ないと結婚できないもんねぇ。」

「はぁ...、まぁそうですよね...。」
(あれ?やっぱり貧乏人..?)

結局、撮影が終了するまで、
プロデューサーのワタシへの先入観を払しょくできず。

まぁ、途中からその見下されかたを楽しんでたんだけど。

収録後、着替えてから再度プロデューサーに
イラストレーターとして名刺とポストカードを渡して、
営業してみたワタシ。
作品をみてちょっと驚いてたけど、その後連絡はない。

出会いは場所と服装が重要です。
おかま姿でイラストを語っても説得力はありません。



ともあれ、昼間パイをぶつけられ、夜はおかまになった。
なんとも充実(?)の1日でした。


しかし....オンエア観たら、「優ちゃんなめのワタシ」じゃなくて
「優ちゃんかぶりのワタシ」になってて、
ほとんど映ってねぇーでやんの。(ピンボケだし..。)


プロデューサーにわかってもらおうとするおかまイラストレーター


ちゃんと役づくりも忘れていない、
おかまっぽく手拍子を打つイラストレーター

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