4・信頼
「お?サオリ、こいつ何か形変わったぞ?なんて名前だ?コイツ。」
セントラルドーム手前の高台、三人のハンターがその場にそぐわない会話をしながら手持ちぶたさにマグをいじっている。
「え〜と、それはね・・・ん、『マルト』シフタとかかけてくれるらしいよ?さくちん。」
マグはハンターの証と同時に大切なパートナーでもある、自分好みに育てるのは大切なことだ、が、しかし、『今』この状況ですべき事なのだろうか?ハギ、カワサキがセントラルドーム内で孤立し、ソナーは明らかに巨大なエネミーを感知していた、さいじは二人を心配すると同時にこの状況に苛立ちを感じていた。
「二人とも、少し・・・落ち着きすぎなんじゃないか?ハギもカワサキも危険な状態だ、なのに・・。」
ツキヤはさいじがさっきからイライラしているのを気付いてはいた、しかし彼にはこの状態を保ち続けたいわけがあった、そしてツキヤの努力がさいじの言葉で今まさに無に帰した、今までツキヤとおどけていたサオリの表情があきらかに変わっていた。
「好き勝手なこと・・・・言わないでよね。」
その表情は凄味を増し、サオリはゆっくりさいじに近づいていく。
「あんたら、何なの?。」
さいじはサオリの迫力に息を呑む、サオリの『何なの?』にはその一言でさいじ、ツキヤにその言葉の指す事が理解できた、ツキヤ、サオリ、エステル、ウォルスは母星を離れると同時にさいじ、ハギ、カワサキ、ソニアと知り合う事となる、それ以来パイオニア2で行動を共にする事になるが、サオリはこの四人に確かな違和感を感じていた、幼さの残るソニアは別として、他の三人はかなりの実力者、それが疑問の一つ、ハンター歴がツキヤ達より長い彼女はある程度実力を持つハンターはチェックしている、事こよってはハンター同士で戦うこともあるからだ、しかし、このような風貌の四人をサオリは聞いた事が無かった、無論知り合ったのはさいじ達だけでは無い、双子のガンナー、ミカエルとルシフェル、エステルの知り合いグラスト、ユウル、ハンターが気に入った者同士『チーム』になるのは珍しいことではない、しかし。
「あたしはあんた等を今一つ信用出来ない、第一何であの二人は別行動をとった?危険なのは明らかなこの場所で?誤動作って言ったけど、いや、閉じ込められたのは予想外の出来事、たぶんね、でも、あんた等は知っていた。」
サオリの中の不信感が言葉となってさいじに放たれる。
「トランスポーターの行く先、セントラルドームの地下、今回の目的はそこ、あたし等を誘ったのは正規のハンターとして行動していると『誰か』に思わせるため、あたしやウォルスはそこそこ『名』が売れている、とういうヤツと行動した方が怪しまれないし、依頼も取り易く地表に降りる機会も増える。」
さいじの動揺は明らかだった、無論隠してはいたが、サオリやツキヤに隠せる『揺らぎ』ではなかった、実の所ツキヤ、エステルもまた、始めからこの出会いが意図的な物と気付いていた、しかしサオリと違いこの二人は根拠はないが『この出来事による危険』を感じなかった、ウォルスに関してはどこ吹く風である、しかしサオリはこの出来事で仲間に危険が及ぶのではないかと常に警戒していた、その矢先の事である。
「さいじ、今あんた、あたし等を納得させられる言葉を持ってる?。」
さいじは一瞬言葉に詰まった、その事がサオリの不信感をさらに掻き立てた。
「あ〜!やめやめ、もういいだろ?サオリ。」
ツキヤが暗い空気を掻き消すかのように二人に割って入った。
「とにかく、ドームの中央ゲートは故障して開かない、トランスポーターも壊れている、現状じゃ俺達に出来ることは何も無ぇ、もうじきマリリンが助っ人を連れてくる、くだらねー事で余計なストレス溜めんな。」
サオリは一瞬ツキヤに何か言おうとしたが一回ため息をつくとそれ以上はこの事に触れなかった、程無くして、人影がこちらに向かってくるのが見えた。
「お、着いたみたいだぜ、助っ人様がよ。」
ツキヤがマリエラ達に駆け寄っていく、サオリはさいじを一瞬睨みつけるとツキヤの後に続いた、バツの悪そうな顔で頭を掻くさいじ、ともあれ、これで救出作業が再開出来る、さいじは『ほっ』と胸をなで下ろした。 |