第1章
2.幼年期の終り

「では、行ってくるぞ、夕方には戻る。」

セフィがヒクノに『預け』られてから、二年の月日が経とうとしていた。

「なにか・・・この二年で色々な意味で『大きく』なりましたね・・・。」

足早に森へ向かうセフィを見送るメイとヴィドゥ卿、その後ろ姿を眺めつつこれまでの事を思い出していた。

「そうですなあ・・・当初の目的とはかけ離れてしまいましたが・・・・今やセフィエラ様の『法力』はハイ・ウィザードの領域さえ、越えようとしている。』

「エルフの『魔法理論』とは、やはり『人外』の法なのですね。」

二年という月日はセフィを、そしてエルをたくましく成長させていた、エルの父親ラキオは『ヴィレオの戦士』を望むセフィに魔導師として最高の知識を惜しげなく与えた、そしてエルはその知識に自己流の剣技を組み込んだ、いつか親友の剣となるために。

「しかし・・・セフィ様は、今日という日をどう受け止めているのでしょうか・・・。」

メイの表情が曇る。

「最後の日・・・過ぎてみると早いものですなあ・・。」

明日という日はセフィとエルにとってしばしの別れを意味する日であった、皇国から『修行』の名目でヒクノに身を寄せていたセフィ、そして明日は皇国へ戻る日であった。

「あんなに仲良くなられては・・・つらい別れになりそうですね・・・・。」

メイの言葉にヴィドゥは空を仰ぎ、しばらく考える。

「我々には・・・こればかりは・・・・。」

セフィ十四歳、エル十二歳、二人にとって最後のヒクノでの一日の始まりだった。

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