第2章『戦い続けるのにもってこいの理由』
4.<いつかそこまで>

「・・・ん、朝か・・・・。」

昨日の闘いから一夜明け、アナもカチュアも泥のように眠りについていた、ツキヤは二人の顔を見つめると少し寂しそうに笑い、自分の荷物を持ち上げテントを出た。

「ん・・・・くあぁ〜〜〜〜。」

ツキヤは『伸び』をすると振り向かずにその場を離れようとした、しかし、その後ろから自分を呼び止める声がした。

「・・・待ってください、ツキさん。」

声の主はカチュアだった、てくてくと何かいいたげにツキヤに近づいてくる。

「これ、あと、途中まで・・・街道まで一緒に行きませんか?。」

カチュアがツキヤに差し出したのは、この付近の地図だった、ツキヤは照れくさそうにそれを受け取った。

「あ・・・サンキュ、つか、起きてたんか?、カチュアちゃん?。」

カチュアはこくりと頷くとツキヤの隣を一緒に歩きはじめた、さくさくと枯れ葉が音をたてる、ツキヤは黙って出ていく気であった、アナはもう十分じぶんの教えを『理解』していたし、正直これ以上ここにいると二人から離れずらくなりそうだったからだ、二人はしばし無言で歩いていたが街道に差し掛かるころ、ふいにカチュアが口を開いた。

「ツキさん?。」

「は?いィ?。」

ツキヤは長い沈黙からのいきなりの問いかけに思わず声が上ずってしまった、その声をきいたカチュアはクスクスと笑っている、ツキヤは頭をかきながら視線を上に逸らせた。

「昨日は・・・大変でしたね・・・悲しくて、辛くて、痛くて・・・。」

昨日の事、三者三様たしかに『大変』ではあった、自分の生まれや取り巻いていた物を有無を言わさず突き付けられたアナ、両親の悲しい死を受け止めざるをえなかったカチュア、そして『封印戦争』も終わりもう見る事も無いだろうと思っていた『魔竜』と再び合い間見える事となったツキヤ、たった数時間の間にさまざまな運命が生き物のように蠢いていた。

「でも、何だか・・・今は全てを知って、全てが終わってよかったと思えます、私も・・・たぶんアナも・・・。」

ツキヤは無言でカチュアの言葉に耳を傾け続けた。

「アナはこれから強くなりますよ、きっとツキさんに追いつくくらい・・・目標がはっきりして・・・運命を振り切って、タチアナ=フェブバーグとして憧れた『英雄』を目指すんです。」

「そしてカチュアちゃんはその隣でいつまでもアナを見守るのでした、と。」

ツキヤの言葉にカチュアは少し寂しそうな顔をした、ため息をつき話を続ける。

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