少し前の話、今が想像できないほど穏やかな毎日で、それでいて少しだけ自分の道が見えてきた時。
「ツキヤ、ちょっといいか?」
講義が終わり、教室を少し出た廊下で呼び止められた振り向くと、『カッツェ』が立っていた、少しだけ気まずそうに、すまなさそうにして。
「やあ、カッツェ。」
隣にいた『グティ』がツキヤより先にアイサツをする、カッツェはそれに軽く会釈をすると再びツキヤを見る。
「おう、いいけどよ、ここじゃ、つか、グティがいちゃまずいんか?。」
カッツェは『そんなことは無い』と言った感じで首を左右に振る、しかし以前表情は晴れない。
「明日の・・・お茶会、実は所用が出来でしまってな、次回参加するって事でいいか?。」
前々から錬金学塔の『エステル』からツキヤが誘われていたそのお茶会に、明日グティと三人で行くはずだった、ソレを断ると言うのだ。
「そうかぁ、残念だな、まあ、これっきりって事じゃないだろう、な、ツキヤ。」
グティは残念そうにカッツェの肩を叩く、ツキヤは二、三度頭を掻くと、カッツェを見て気だるそうに口を開いた。
「いいや、こっちが優先だ、カッツェ、約束しちまったんだ、連れて行くってな、あいつに。」
そのツキヤの態度に一瞬驚いたが、グティはツキヤを自分の方に引っ張った。
「おいおい、用事があるんじゃ仕方ないだろう、なあ、カッツェ?。」
そう言ってカッツェを見るグティ、その時グティも気付いてしまった、いつもの凛としたカッツェとは、明らかに違う事に。
「まあ、よ。」
ツキヤが口を開く。
「向こうも何人か来るみて〜だし、お前が人に対して『気まずい』のもわかっけどよ、それがやだって言ったよな、カハ=エレッタ=・・・・ジアゼル?。」
ジアゼル、『魔導王国』と呼ばれると同時に、『大陸の問題児』とも言われ、過去の大戦の影に常に存在が確認されている不可侵の大国だ。
「ツキヤ・・・私は・・・。」