< 001 図書館 >

猫神様はアーメンとラーメンをちがく言えないのにゃ。どっちも、にゃ〜めん、にゃ?

猫神様、今日は町の図書館でバイトにゃの。館内掃除の後に返却された本を棚にもどすのと、自転車の整頓するよーにいわれてるの。猫神様、仕事終わったら、館内にあるプラネタリュームみるんにゃ!ってわくわくしてるのにゃ。(木曜はプラネタリューム50円の日にゃの) (あ)

< 002 > ラーメン

しかも今日はラーメン大酋長で、塩ラーメン(もやしだけ入ってる)50円なので、それも楽しみ。

でも猫舌でたびるの遅いので、お店の人にチッて言われないかビクビクしてるの。(ま)

< 003 > 図書館2

やっと掃除を終えて今本棚に本返してるところ。

『なっちゃんの夏休み』 「にゃ、えーとえーと、にゃっちゃんの夏休みにゃから。。」(に)の棚に本をもどす猫神様。
怒られちゃって少しシューンとしてるの。 (あ)

< 004 > ユースホステル

今日は初めてユースホステルに泊まるの。 けどシーツの代わりにゴザを持ってきたので,管理人さんにぶたれる。
お日様に干してあると言うと,管理人さんは,きれい好きな猫だと感心して泊めてくれて,朝食に生卵をおまけにくれた。
感激する猫神様。 でも生卵には間違ってウスターソースがかけてあった。
「ど,どうしよう ... でも好意でくれたんだからたびよう!」食べたら,猫なのでとても美味しかった。 (ま)

< 005 > 猫神様のお買い物

COCO壱の前を通り過ぎた猫神様。
「んー、いいにおいにゃあ」
よし、バイト代も入ったし、今日はカリーを作ろうかにゃぁと、わくわく。
早速近くのスーパーでお買い物。
「えーとえーと、カリーにゃから。。」とジャガ芋のコーナーにいった猫神様。ジャガ芋をとろうとして、いきなり隣りのキュウリを棚から落とす。ビクビクしながら「ごめんにゃさい」して、カゴに折れたキュウリを入れる。次はそーっと玉葱と人参を選ぶ。「よし!後はルーにゃっ!」
ハウスの甘口をカゴに入れてレジにならぶ。←肉忘れてりゅ。
「780円になります」
(にゃ!?た、足りにゃい!)←結局肉買うお金もなかったのにゃ。
猫神あわてて、あうあうしながらカゴのなかの人参を差し出す。「こ、これはやめますっ」

とぼとぼとおうちに帰るのでした。 (あ)

< 006 > 猫神社

猫神様の家は,猫神神社だ。(秩父にあるらしい。)
拝んでくれる人もあまり居ないし,お賽銭もあまり貰えない。 5円玉が多い。

カレーの具(玉葱だけだけど)を持って,本殿の戸を開ける猫神様。 粗大ゴミ程度の生活用品はある。

た,玉葱だけだってカレーにゃ! と猫神様は自分を励ました。 玉葱を錆びた包丁で切ったら涙ざぶざぶ。 凹んだお鍋に入れて煮る。 でも,ハウスカレー甘口を入れればカレーのいい匂い。 食器だなには,3日前のロールパンもあるんだにゃん。

「にゃ〜にゃ〜にゃ〜」にゃ? 匂いにひかれて,ノラ小猫達がやってきた。 「あうーこれを3日間食べる予定だったのに。 でも,神様にゃもんっ!」 猫神様は小皿に分けて,小猫達に分けてあげた。 喜んで食べる子猫達を見て 猫神様の目がうるんでいるのは玉葱のせいなのかしら。 (ま)

< 007 > 猫神様の朝

猫神様のおうちの朝はさむい。いろんなところからすき間風が入ってくるからにゃ。
猫背伸びして、さて朝ご飯。昨日のカレーの残り少し。
子猫たちはまだすぴすぴ眠ってる。
猫神様そーっと外に出ようとするが、ふるい木の戸が、ぎぃーっとなって、ドキドキ。子猫たちは気付かずに眠ってる。
猫たちが起きたら、帰れる様に、少しだけ隙間を空けて水くみにでかける。坂道を少し下った小さな祠の隣りのちょろちょろ水(←猫神様がつけた。日によってはザブザブ水)
まずは顔を洗う。に、にゃ〜、冷たいにゃっ。バケツに水くんで、坂道を登っていく猫神様。
いきなしコケる。
にゃ、にゃ〜(;;)再び顔洗って、バケツに水入れて神社に戻る。

にゃ?戸をのぞくと中は空っぽ。
猫神様少し寂しそう。くんだ水を桶にためて、ちょっと座り込む。
にゃ〜!
押し入れから子猫たちがでてきた。起きたら猫神様がいないから寂しかったのにゃ。
猫神様嬉しそう。
「ちょっと待っててにゃっ」
猫神様キュウリを小さく折って、子猫たちにあげる。
「朝ご飯にゃ。」
子猫たち夢中でたびる。
しばらくゆっくりしてから、子猫たちを見送る猫神様。
「途中の坂はすべりやすいから気をつけるんにゃよ!」

子猫たちの姿が見えなくなってから、ゆっくりとおうちにもどる猫神様でした。 (あ)

< 008 > つよくなる

今日はいい天気。
猫神様は縁側で日向ぼっこしながら考えた。
こんな自信の無いことでは 負け犬,ちゃうちゃう,負け猫になってしまう。
心と体を鍛えよう。
まずは空手チョップにゃ。 ←唐突だ。

ねこじゃらし。 とりゃーっ! 勝った。
アキノキリンソウ。 とりゃーっ。 ふーっ,強敵だった。
樫の木。 どりゃーっ。 ぽきっ。

ちょろちょろ水は(猫神様には)治癒力があるのでダイジョブなのだ。

いきなり実戦は危険なので,イメージトレーニングしてみる。
相手は裏山の次郎(ツキノワグマ)だ。
「 ... 」
あ,たびらりてる。

つ,強くなるのは明日にしよう。 と境内の掃除を始めるのだった。 (ま)

< 009 > 猫バザー

猫神様の神社のまわりには柿の木や栗の木がたくさんある。秋の山の実もたくさんにゃ。

「そーにゃ、秋の木の実をとって、街にいって売ろう!」

猫神様、早速外にでて、柿や栗、どんぐりやムカゴを拾いあつめる。

裏の白い広告の紙にマジックでカキカキ。
『猫神様の山の、美味しい柿20えん。とりたて山栗一山50えん。むかご、一猫手20えん。どんぐり一猫手、15えん。』

猫神様、風呂敷につめてでかける。

ふー、け、結構重たいにゃ。

駅の物産品売り場へ。
「あー、猫が 柿売ってるよ、お母さん」
猫神様の回りに子どもたちが集まって来る。
「く、栗いらにゃい?美味しいにゃよ!」
その時、栗からニャッキが!
「あーっ!この栗、虫くいだ!」

にゃ!ごめんにゃごめんにゃっ!ほいたら柿もあるにゃっ!
だけど子どもたちに栗をなげつけられちゃう猫神様。(;;)あうあう。

猫神様またもやシューンとにゃる。

にゃ、つ、強い猫になるんにゃ!

猫神様大きな声で客引きしてみた。楽しく愉快に。
は〜、猫神様の山の栗、美味しいにゃっ!にゃごにゃご♪

猫音頭にお客さんがよってくる。

まあ美味しそうなむかご。都会から来たおばさんたちにはこーゆうの人気。

さっきの子どもたちが謝りにきた。

ほいだけど優しい猫神様、いーにゃ!といってどんぐりをあげたら子どもたち喜ぶ。

お昼までににゃんと完売。猫神様満足げにおうちへ帰っていきました。 (あ)

< 010 > 買い食い

柿やどんぐりで520円も稼いだ。 お金があると使いたくなるの。

猫心に浮かんだのは ... はんばぁぐ,ああはんばぁぐ,はんばぁぐ。 「はんばぁぐって美味しいらしいにゃあ」 猫神様はハンバーグをたびたことない。

おにゃにゃっっ! 目の前にセブンが。 ふらふらと入って行く猫神様。 ハンバーグは380円。 付け合わせのジャガイモとニンジンもびゅーちふる。 ハンバーグの前で直立不動で考える猫神様。 後ろを通る人がぼすっとぶつかっても気づかない 。「か,買うにゃ!」 清水の舞台を飛び降りる猫神様。

猫手で握り締めた百円玉でお金を払い,チンしてもらう。

転ばないようにゆっくり急いで神社に戻る。

パックを開けるといいにおい〜。

「にゃ〜にゃ〜にゃ〜」 にゃっ!
一瞬走って逃げようかと思う猫神様「でも,神様にゃもん」。 ノラ小猫達がやってきた。 小さく切って分けてあげると,残りはちょびっと。 主にニンジンとジャガイモをたびる猫神様。 小猫達はごちそうさますると帰って行った。 ああ,美味しかったにゃ。 (涙。) (ま)

< 011 > お天気

久しぶりにいい天気。 猫神様は日向でこっくりこっくり。

いつもは静かな神社に,てけてけてけっと軽自動車の音。 小さなワゴン車から女の子が下りてきた。

「あり」猫神様は目をこすった。女の子に猫耳があるように見えたのだ。 もう見えないにゃ,錯覚か。

女のコは,神社の鈴をがらんがらんと勢いよく鳴らすと「猫神様,水曜日お天気にしてください。 おにゃっがいっ。」と言って,50円も!お賽銭を入れてくれた。 その上,見たこともないキレイな花束をくれた。 「練習で作った花束なので,あんまり形がよくなくてごめんにゃさい。」

猫神様は花束もらうのは初めてで,ぷるぷる感激にゃ〜。

えらい神様に頼んで水曜日は晴れにしてもらわなくては。
意気込んで出かける猫神様。
ぼろぼろになって帰ってくる猫神様。

押し入れから,裏の白い広告の紙を取り出すと,テルテルボーズを作って神社に吊るし「水曜日晴れますように。ぱんぱん。」とお祈りするのだった。 (ま)

< 012 > 花束

どうも雲行きが怪しい。猫神様はじぃーっと空をみる。
「おにゃがいっ!」何回もそうつぶやく。
花束をみると、なんだか花がぐったり。
にゃっ!?は、花が枯れちゃうにゃっ!(猫神様花束なんてもらうの初めてにゃから、お水にさしてなかったのにゃ)

あわててくるくるする猫神様。

その時、花束の中から小さなカードがぽろっと落ちてきた。
『猫神様へ、花束は、ラッピングの紙とリボンを外して、花瓶に入れてください。お花がぐったりした時は、お水につけたまま、少し茎を切ってにゃ。もし水曜が雨なら日曜日にお天気にしてください、おにゃがいっ』

急いで戸だなから空き瓶を探して、お水を入れる。茎をちょんと切って花をさした猫神様。

「おにゃがい、枯れにゃいで!」

薄桃色の紙と小さなひよこい色のリボンを、宝物箱(柿のタネの空き缶にゃけど)に大切にしまう猫神様。
にゃ、こりもいれとくにゃ。小さなカードもいれた。

花束をみるとにゃんとも綺麗に咲いている。
神様大喜び。
さっきくんだチョロチョロ水の力かしら。
花瓶には黄色の金魚草とうすいぴんくのなでしこ、それに小さな雪のようなかわいい白い花が入っていました。 (あ)

< 013 > 風船ガム

そうそう、猫神様の宝物箱の中にはチューインガムが入ってる。昨日、バザーでどんぐりをあげた男の子にもらったのにゃ。
チューインガムの包み紙の裏に小さなあみだくじがついてた。
「お天気あみだくじ」
にゃ?
猫神様猫手であみだをなぞる。
「雨ザブザブ」
…。
甘〜い香りのするガムを口にいれる。

ぶどう味にゃっ☆

興奮してガムを噛む猫神様、のどにつまりそうになってあがあがする。

男の子たちがぷーって風船を作ってたのを真似てみるけど上手くいかにゃい。
ぷ、ぷぅ〜。
小さな風船ができた。調子にのった猫神様、今度はおもいっきりぷーっとふく。猫神様の口からガムがとびでる。

べし。

にゃっ!(;;)

(ちょろちょろ水で洗うとキレイになるらしいよ。) (あ)

< 014 > 花束2

テルテルボーズを下げたら,巨大台風が向かってくる。 猫神様はため息をついた。「これじゃお賽銭もらえないにゃ。」

天気は暗いけど,お花が部屋を明るくしてくれるようだ。

お花をくれた女の子の名前は ... 女の子のバッグに書いてあったんだけど,猫神様はローマ字が不得意だ。

たしか A・Y・A・K・O って書いてあったにゃ〜。 「わかった!」猫神様は言った「あにゃこさん だ!」

猫神様は,あにゃこさんが来た方向に「ごめんなさい」すると,50円玉を握りしめてパン屋さんへ走った。 ダメぢゃん。

パンの耳のラスクを食べて満腹になった猫神様は,一番大きな裏の白い広告の紙をバサバサと折ると,巨大テルテルボーズを作って吊るした。

「日曜日こそ晴れますように。 (猫手で)ぱんぱん。」

こんな猫神様がお賽銭をいっぱい貰える日は来るのかしら。 (ま)

< 015 > ぱそこん

猫神様はいんたーねっとしている。 驚愕! いえいえ本当なんだから。

資源ゴミの回収の日,猫神様は捨ててある箱を見つけた。 トースターでもないしユデタマゴ茹で機でもない。 「にゃんだろ〜」直立不動で考えている猫神様の後ろを不思議な人が通った。

「猫なのにPCに興味あるの?」とその人は言った。 「 PCってなんにゃ?」 落ちている箱を幾つか開けて中身を取り出した。 「さあ行こう」

猫神社の本殿でそれは組み立てられた。 電源を入れるとテレビに文字が出た。 その人は急に邪悪な目をすると「むせんらんのでんぱってもれているものなんだよ」と呪文を唱えた。

にゃんかそしたら,色んな絵や字や写真が自由に見られるようになった。 マウスというものの使い方も教わったし,カナの書いてあるボタンのいっぱい付いた板から文字を入れるのも判った。

お礼を言おうとすると,その人はもういなかった。

こうして,猫神様は時々インターネットしている。 (ま)

< 016 > 観光1

猫神様の神社はぐるりと山にかこまれている。よくもわるくも田舎だ。

るるぶ東京(かなり古いやつ)をみている猫神様。
『東京とれんでぃー大特集!!』

にゃ〜!と、トレンディ!にゃんか東京ってナウいにゃね!
よし、今から東京観光にいくにゃっ!

いっちょうらのハンカチを首に巻いて、ポシェットにちょびっとのお金と、お腹空いた時のための柿ひとつとチューインガムをいれた。

あ、そーにゃ!

宝物箱の中からごそごそとリボンをとりだしてポシェットにつける。

東京の人はお洒落にゃもん。

ほいたらちょっくらお出かけにゃ!

と山を降りていく猫神様でした。 (あ)

< 017 > 観光2

駅着いた猫神様。
駅の人に東京まで行きたいと伝える。

「東京までね、片道1050えんだよ」
にゃ!た、た、高いにゃ!(;;)どーしょう。

あたふたする猫神様を見て駅員さんは考えた。

(猫だし、なんかけったいな格好してるしなあ。今電車代とったら東京から帰ってこれないかもしれない。ま、猫くらいなら。)

「これから貨物列車がくるから、内緒でそこに乗せてあげよう」

猫神様大喜び。

あ、ありがとにゃ。お礼を言ってホームへ降りる。

貨物列車がきた。荷物の隙間に入り込む猫神様。
段ボールには葱がたくさん入ってる。ちょっと葱くさいけど我慢にゃっ!

しばらくすると、がたんと音がして、貨物列車が動き始めました。 (あ)

< 018 > 観光3

猫神様は大量のよだれとともにハッと目を覚ました。 貨物列車は止まっている。 そっと葱の箱の隙間から抜け出す。

「ついに着いたにゃ〜」大きな駅だ。 あたりをキョロキョロと見回しながら歩いてゆく。 赤い箱の赤福というお菓子を売っている。 駅標があった。「きょーとー? 少しとーきょーと違うにゃ」 京都に着いていた。

駅員さんがきた。「あのーここは東京ですか?」(なんか変な猫だな。 面倒だから駅の外へ出しちゃおう。) 「そっち伊勢丹だから,行っていいからね。気をつけてね」 お辞儀をして出てゆく猫神様。

巨大な吹き抜けのビルの構造にびっくり。 いつの間にか観光バスのターミナルに来ている。 「雅コース」「寂コース」「侘コース」の3つがある。 どれも一日で京都を回るバスらしい。

切符売り場へ行く。 「あのー 300円コースください。」 売り場のおじさんは,そんなの無いと思ったが,猫なので仕方ないので,メモ用紙に「特別周遊券」と書いてタダでくれた。

猫神様はぺこりとお辞儀すると「なんかみんなタダだにゃ〜」と感謝しながら,バスに乗り込んだ。 嵯峨野という難しくて読めない名前のバス停で降りると歩いていった。

秋の陽に竹林がキレイだ。 無人販売所に聖護院大根が100円で売っていた。 「にゃっ,おおおっきい蕪にゃっ!」猫手でチャリンと100円入れると大根を背負ってまたバスに乗った。 (ま)

< 019 > 観光4

大根を背負った猫神様、今度は鞍馬でおりた。もう辺りは夕方の雰囲気だ。バス停から少し歩くと、レンガづくりの建物があった。
『京都芸術大学』
ほにゃ〜、学校にゃ。猫神様疲れて階段の隅にちまっと座り込んだ。

もうすぐ日がくれちゃうにゃ。

一人の学生が猫神様に近ずいてきた。

「モデルになって欲しいんだけど」

夕方のアトリエには学生が5〜6人で、クロッキーをしていた。

猫神様初めてのモデル。でも、ポーズをとってみる。

あう?にゃ?

ぽーんとネリケシがとんできた。

「へんなぽーずしなくていいからっ」

猫神様おとなしく椅子に座った。

20分間じっとしてると眠くなる。こっくりこっくりしていると、ネリケシが飛んで来るから危険だ。
先生が入ってきて一人の学生のスケッチブックをのぞく。

「どうした、プロポーションが狂ってるぞ」

「でも先生!」
学生はモデルを指差した。
「あ、あぁ、よくかけている。」

猫神様は3頭身にゃもんね。

クロッキーを終えて、みんなが猫神様の回りに集まってきた。
「どこからきたの?」
「秩父にゃ。とーきょー観光に来たにゃ。」

みんな黙る。
(東京?勘違いしてる猫?格好もけったいだし)

猫神様みんなのクロッキーを感心して見てる。「よかったらあげるよ」

猫神様は帰る学生にばいばいして、守衛さんの部屋に泊めてもらいました。 (あ)

< 020 > 観光5

守衛のおじさんもいい人だった。
「ひとりで観光かい。」
「にゃい,東京ってどんなところかと思って。」
「東京? ここは京都だよ。」
「似てるにゃ。」
「似てないっ!」

夕飯に,鱧のてんぷら,京野菜のお漬物,手毬麩のお吸い物とご飯を食べさせてくれた。
しゃぐしゃぐしゃぐ。
げほげほ。(むせる。)
しゃぐしゃぐしゃぐしゃぐしゃぐしゃぐ。
ぺちゃぺちゃぺちゃ。(なめてる。)
「お腹空いてたんだね。」

みんないい人にゃ〜。 とお布団に入る猫神様だった。 (ま)

< 021 > 観光6

翌朝,猫神様はポシェットにしまっていた柿を守衛のおじさんにあげると,てくてく歩いていった。

大きな車がびゅんびゅん通っている大きな道に出た。 乗せてもらえにゃいかなー。 秩父運輸と書いてある大きなトラックが来た。 両手を上げて飛び跳ねる猫神様。

「あれ,猫が跳ねてる。」運転手さんは,髪の長いきれいな女の人だった。 トラックの運転席へ助走をつけて飛び乗る猫神様。

「秩父へ行きますか?」
「これから帰るとこさ。 乗せてったげるよ。」
猫神様くらいある大きな袋をばふっと投げてくれた。 無印の最大袋のポテトチップスだ。

ばりばりしゃぐしゃぐげほげほぺちゃぺちゃ。
「お腹空いてたんだね。」
「お姉さんはこんな大きな自動車運転してるんだね,すごいにゃ。」
「本当はガンダムに乗りたかったのさ。」
「ガンダムってなんにゃ?」

お腹いっぱいで眠くなる猫神様。
大量のよだれとともにはっと目覚める。

「着いたよ。」
「ありがとうにゃ。」よれよれの風船ガムをお礼に差し出す。
「猫からお菓子をもらうとは思わなかったね。」

神社への道をたどる猫神様。
「東京の人はみんないい人だったにゃ〜。」 (ま)

< 022 > おうちに帰ってきた

ふぅ〜、楽しかったにゃあ。

どっこいしょと大根を床に置いてへたっと座り込む。

お茶のもーかにゃ。ヤカンにお湯を沸かしながら、今回の旅行をふりかえってしみじみする猫神様。
あちっ☆←猫舌

ふーふーふーふー

ず、ずずず。ふーふー。ずずず。

やっぱりおうちは落ち着くにゃ〜

あ、そーにゃ!
がさがさがさ。
ポシェットに入れておいた、クロッキーを猫手でしわ伸しして壁にはった。

みんな親切にゃったにゃ。またいつかいくにゃ!

いつの間にかアルバイト求人広告の上にぱたっと眠りこむ猫神様でした。

「。。あぅ?。。。にゃ?」←モデルしてる夢をみているらしい。 (あ)

< 023 > 焼きいも屋

猫神様の神社の裏には小さな畑がある。
畑にはサツマイモがたくさん実りました。
毎日毎日、サツマイモばっかたびていた猫神様。たまには違うものたびたいにゃ。。

そーにゃっ!焼きいも屋さんして、そりで売れたお金で秋刀魚を買うにゃ!

あぁさんま、さんま〜にゃごにゃご、じゅるり。

早速準備にゃっ!

裏にあったリヤカーに鉄板とブロックで小さな釜を作る。脇にほりたてのサツマイモと、木の枝をのせた。

猫神様、押し入れから裏の白い広告を出して、マジックでカキカキ。

『猫神様の美味し〜いおいも。ほくほくにゃよ!おっきいの150えん。ちゅうくらいの100えん。ちいさいの50えん。』

ついでにと、とれたての柿も幾つかつんでおきました。

さて出発。

リヤカーは結構重たい。
最初の下り坂で足をすべらした猫神様。
あにゃっ!?

みじかい猫足ではブレーキがきかない。
あにゃにゃにゃにゃぁぁぁああ〜!

麓まで超スピードでかけおりる猫神様でした。 (あ)

< 024 >ニャコラン星

坂道を駆け下りる途中,一瞬光に包まれたように感じた。 猫神様が着いたのは山の麓ではなく,ニャコラン星だった。 坂を下りる途中,リヤカーの重さでワープ4に達してしまったのだ。

あり? 砂漠にオレンジ色の木が生えてるしだ〜れもいない。 これじゃヤキイモ売れないにゃ。 ←問題が違う。

猫神様の前の地面に光がチラチラすると3人の人間の形になった。 外人にゃっ。

「艦長,生物の存在を確認しました」と,髪の長いすらっとした女性がひとりごとを言うと,猫神様に小さな機械を向けた。 機械はピッと鳴った。

機械を見ながら「原始的な生物ですが,かすかに知能があります。」
げんしてきなせいぶつ〜? か,かっこいいのにゃ。

もうひとつの光がチラチラ現れて,禿げてるけど引き締まった体つきの男の人になった。

(コンピューター,翻訳してくれ。)
「君はどこから来たのかね?」
にゃっにゃ〜びっくりにゃ〜。 外人なのに日本語しゃべってりゅよ!
「秩父です。」
(時空連続体の4次元座標を調べてくれ。)
「遠くから来たね。」男の人はにっこりと笑った。

いい人にゃ。
猫神様はくるくるまわって火を起こし,ヤキイモを作り始めた。 ヤキイモの匂いが辺りに漂い始める。

ふだん合成食料を食べている人達には,ものすごく美味しそうに感じられた。

「ちゅうくらいのをひとつくれないか?」
「艦長,危険です。」
「わたしはこの生物を信じるよ。」

ピカード艦長に ちゅうくらいのヤキイモをほいっと渡す猫神様。 あちゃちゃちゃちゃ,とじたばたするピカード艦長。 でも一口頬張ると「芳醇だ。 地球の香りだよ。」

ほかの隊員もあぐあぐと食べる。 ただ,金色の目をした人は食べなかった。 「理解できないです。 成分は合成されたさつま芋とほとんど変わりありません。」

「まさか偵察に来たこの星で,こんなご馳走が食べられるとは思わなかった。 ありがとう。 なにか欲しいものはないかね。」

「あ,あのにゃ。 ちゅうくらいのは100円にゃ。」

「すまんすまん,悪かったね」と,ピカード艦長はおかわりの分を含め,700円ビームダウンすると猫神様に渡した。 にゃ〜! これで秋刀魚がたべられるにゃ〜。

「それでは秩父に戻してあげよう。 名前を教えてもらっていいかな?」
「猫神です。」
「エンタープライズ,ネコカミさんを秩父へ転送してくれ。 さようなら,ネコカミ。」

みんなが手を振ってくれると,猫神様は光に包まれ,山の麓についた。 夢かしら? 100円玉をがじがじ噛んでみたけど本物だった。

ニャコラン星へは,宿敵ボーグの艦隊が近づいていた。 また戦いだ,だが今度は負けられない。 ピカード艦長はつぶやいた。 (ま)

< 025 > げいじゅつの秋

猫神社のまわりの木々がほんのりと紅葉してきた。

秋にゃあ。。

庭で焼きいもを焼いてると、子猫たちがやってきた。

ほい、っと焼きたてのおいもを小さく折って子猫たちにあげる。

ほくほく。

にゃ、そーにゃっ!
猫神様,押入れからわら半紙と色鉛筆を持って来た。

写生会にゃ!
みんな好きな物描くにゃ!

にゃ〜。

みんなシャカシャカと描き始めた。

猫神様なかなか描く物が決まらにゃい。
何描こうかにゃ〜。
子猫たちは出来たにゃーといって猫神様に絵を見せにきた。
これなんにゃ?

猫神様にゃ!

みんな大好きな猫神様の絵を描いたのにゃ。

あぅ、目頭が熱くなる猫神様。

それぞれの絵を大切に社殿の壁に張りました。 (あ)

< 026 > 食欲の秋

秋晴れで木陰は涼しいくらい。 木漏れ日の中でうつらうつらしているとお昼だ。

そうだ,京都から背負ってきた大きな蕪があったんだ。 少し齧ってみる。 だ,大根の味がするっ。 新発見にゃ!

半分切って,へこんだ鍋で煮る。
残りの半分を大根おろしにする。 ← 無謀だ。

ざりざり。
ざりざりざりざりざりざりざりざりざり。
どんぶり山盛り2杯の大根おろしができた。

ピカード艦長にもらったお金で秋刀魚も買ったの。

七輪に火を起こすと秋刀魚を3本焼く。 ものすごい煙だ。 ああ,秋刀魚苦いかしょっぱいか ...

子猫たちは遠くに遊びに行ったのか,やって来ない。 秋刀魚全部焼いたのににゃー。

その時,テケテケと音がして,軽のワゴン車がやってきた。 水曜がダメなら日曜を晴れにしてくださいとお願いした女の子だ。 「アニャコさんだ!」

「ちょうど秋刀魚が焼けました。」
アニャコさんはお弁当箱のご飯を分けてくれた。 社殿の廊下に並んで座り,秋刀魚と大根おろしと大根の煮物を食べる。

静かで平和で美味しい,秋の日。 (ま)

< 027 > 猫耳岳

秋晴れにゃ〜。
あにゃこさんが,遊んでくれるんだって。

テケテケテケと小さな車がきた。 あにゃこさんが顔を出す。 あれ? また一瞬,猫耳が見えた気がする。

お山に行くの。
車に乗った瞬間に熟睡する猫神様。 あにゃこさんに揺すぶられて目を覚ます。
「あの山に登るんだよ。」
はうっ。 山に猫耳があるにゃっ!
(谷川岳は双耳峰です。)

駐車場に車を止める。 谷川岳ロープウェイ駅と書いてある。

おにゃにゃっ!
高いところに小さな箱がぶらさがって動いてる!
あにゃこさんにガジガジかじりつく猫神様。 「こばいのにゃむりなのにゃだめなのにゃ。」

「しょーがないなぁ。じゃ大変だけど がんごうしんどう を登るからね。」
リュックを背負って歩き出すあにゃこさん。 猫神様も真似して,セブンの袋を背負う。 中身はペットボトルの空き瓶にゃ。 登山センターの前で,つめたい水を瓶に入れる。

どんどん登って行くと,岩場に来た。
「先に登って。 見ててあげるから。」
カシカシカシカシカシ。 ズズズー。
岩場って,人の手足の長さに手がかりや足場が付いてるの。

「あにゃこさん無理にゃ。」
「仕方ない。 あたしが投げてあげる。」
あにゃこさんは,猫神様を持つと力いっぱい振りかぶって ... 投げた。

ゲシッ!!! ズズズー。

「あにゃこひゃん ... 」鼻血を出しながら猫神様は言った。
「まっすぐ前は,岩場にゃ。」

「ごめんごめん。今度は遠心力を使うよ。」
あにゃこさんは猫神様のしっぽをつかむとくるくるくるっと時計回りに回った。
しゅぱっ!
空高く飛んでゆく猫神様。 でもリリースが 1/100秒ほど早かった。 猫神様はオキノ耳へまっすぐに飛んでゆく。

ずずーん。 重たい衝撃波が伝わってきた。 にゃーめん。 ←こらこら。

はあはあしながら駆け登るあにゃこさん。 ぜいぜい。 オキノ耳で猫神様はぺちゃんこになっていた。 衝撃で圧縮したらしい。

「あうあう」急いでサーモスを出すと,台北のタクシーの運転手にだまされて売りつけられたのを貰ったとゆー烏龍茶を今朝5分淹れたから少し渋過ぎちゃったのを,ざぶざぶかける。

水分を吸って猫神様復活。
「あにゃこさん,投げ過ぎ。」
でも,登らずに頂上に着いたもんね。

はあー。 気持ちいい。 高い山は遠くまで見えるよ。 紅葉がきれい。 頂上へ向かって登って来る人たちが蟻みたいだ。 ばーかばーか。 ←山頂では有頂天になりがち。

あにゃこさんは,オニギリをくれた。 シャケが入っているの匂いだけでわかるのにゃ猫だから。 自慢気にペットボトルの水をあにゃこさんに分けてあげる猫神様。 幸せな秋の休日。 (ま)

< 028 > 猫神宅急便

猫神様今日はヤマトでバイト。

リヤカーに今日のノルマ分の荷物が乗ってりゅの。

にゃっ、結構いっぱいあるにゃ。

えーと、まずは駅前のビルの13階にゃね。
リヤカーをがらがらひいて駅前に向かう。

駅前は混雑していてリヤカーで通るのは大変にゃ。

『リッチビル』
ここにゃ!
猫神様おっきな箱を両猫手で持ってビルに入る。

階段を登ろうとして、清掃係のおじさんにエレベーターを教えてもらった。

エレベーターってなんにゃ?

指差された方にいってみる。

こ、これかにゃ?まわりをキョロキョロ見渡す猫神様。

にゃ?(わからにゃい。。。)
その時、チーンとなってエレベーターの中から人がでてきた。

いまにゃっ!

荷物を抱えてダッシュしてエレベーターに乗り込んだ。

おじちゃんに余裕の猫ピをする猫神様。
(猫ピ = 猫ピース )

しかしエレベーターは下りにゃった。地下の駐車場についてしまう。

あにゃ?ここどこにゃ?あたあたする猫神様。

その時、超高級車がとまって中から人がでてきた。

「あれはなんだ?」あたあたする猫神様を指差した。
「猫です。何か荷物をはこんでいるようです。」

「どこに届いた荷物だい?」
「えーとリッチビル13階にゃ」
「それなら私のところだ。では一緒にいこう」

にゃんと、リッチビルの社長にゃったのにゃ。

社長室に入って荷物を渡す。

さ、サインくださいにゃっ。にゃ?あれあれ?

ボールペンを探す猫神様。

「ああ、いいよ、持っている」
リッチ社長はキラキラした綺麗なペンでスラスラとサインした。
『リッチ社長』

にゃっ!こ、この人社長しゃんにゃっ!←今ごろ気ずく。

「ペンがないと困るでしょう」とリッチ社長はペンをプレゼントしてくれた。

いいにゃっ。猫神様るんるんで一件目の配達を完了したのでした。

帰りは階段を降りたのにゃ。 (あ)

< 029 > 猫神様宅急便2

やっと最後の一個の配達にゃ。

小さなお手紙が一通。
猫神様リヤカーがらがらひいて、線路のしたのガードをくぐる。

えーと、この辺にゃけど。。。あ、ありかにゃ?

コーポ 渡り鳥

ましゃこさま宛

手紙にはお弁当の絵が描いてあった。

美味しそーなお弁当にゃあ。

ぴんぽ〜ん。

中から猫のひざ掛けを持った女の人がでてきた。 猫神様を見ると、あはは、と笑った。

「ごめんなさいね、おかしくてつい。」
にゃ?さ、サインくださいにゃ。

リッチ社長にもらったペンを差し出す。
サインをもらって猫神様帰ろうとすると、女の人はちょっと待っててねといって一枚の紙を渡してくれた。

にゃんだこれ?

紙には顔が二つに別れた猫のイラストが描いてあった。

宇宙猫にゃ!

猫神様はこれを大切にポケットにしまっておうちの壁にはっておきました。

後で、子猫たちが描いてくれた猫神様の絵と比べたら、にゃんかちょっと似てました。

不思議にゃあ。。 (あ)

< 030 > 猫神様 風邪気味

猫神様の朝は最近ますますさぶい。すき間風が入ってくるからにゃ。

ん?

お布団からでた猫神様、にゃんかちょっとだるい。

おにゃっ、ずびずび。鼻水がでてきた。か、風邪かにゃ。
にゃんかふわふわしてるのにゃ。

にゃ〜体を暖めなくちゃ!

本殿で勢いよく雑巾がけする猫神様。

くらくらする〜

。。。ぱかっと目を覚ますと車の中にゃ。

「。。あにゃこしゃんにゃ。」

「今病院につれてってあげるからねっ!」

病院の待合室でそわそわする猫神様。

こばいのにゃこばいのにゃ。

あにゃこさんのとなりにひっつく。

「猫神さ〜ん、お入りください」

あにゃこさんも一緒についてきてくれた。
「あー、風邪だねぇ、じゃあこれをうっておきましょう」

注射器をだした。

あうあうあう!
猫神様あばれまくる。だめなのにゃいやなのにゃこばいのにゃ!
もう猫神様涙ザブザブ。

あにゃこさんが ほら、と隣りをゆびさした。

小さな男の子が注射をうっていたのにゃ。

あぅ。か、神様にゃのに は、恥ずかしいにゃ。

清水の舞台を、助走つきで飛び下りる猫神様。

チク。「はい、終わり。薬を飲んでおうちで安静にしてくださいね」

二人で病院をでる。
あにゃこさんがほいっと、ほっとレモンをくれた。

「甘くて美味しいよ」

あ、あにゃこひゃん、ずびずび。

薬飲んでとろ〜んとなった猫神様、車でこっくり眠ってしまう。

神社にもどってお布団しいて、猫神様毛布にくるまった。

あにゃこさんはこれも効くからと、葱を首に巻いてくれた。
病院でもらった薬を枕元において、あにゃこさんは帰った。

「ちゃあんと治すんだよー!」

ずびずびと毛布に顔をうずめる猫神様。にゃんかじーんとなっちゃったのにゃ。
そして薬のおかげで、ぐっすりと眠りに入っていくのでした。 (あ)

< 031 > リッチ社長

リッチ興業のリッチ社長は退屈していた。 黒い高級車でレストランに乗りつけるのも,きれいなお姉さんが愛想良くしてくれるクラブも飽きた。 フォアグラは脂っこいしキャビアはしょっぱい。 お金はあるし子分(そういう職種らしい)は言うことを聞くし欲しかったものはもう持っている。

「おい,たかひろ。」
「おやっさん,なんですろぉ。」
「この前来た猫な。」
「へいっ。」
「探して来い。」

懐にチャカを呑むと駆け出すタカヒロ。
街で聞き込むと,リヤカーを引く猫の居場所はすぐ判った。

猫神社にずかずか入って行くと,猫神様を布団からズボッと引き抜き,また走ってゆく。
空を飛ぶ夢を見ている猫神様。

「おやっさん,遅くなりやした。」
「ご苦労。 目を覚ましてやってくれ。」
「へいっ」チャカを引き抜くタカヒロ。
「ばかやろうっ!」 往復びんただ。 「俺はこの方とお話するんだよぉっ。」

目を覚ます猫神様。 くるくる周りを見回す。 ふかふかの革のソファーに座っている。 あ,リッチペンをくれた人にゃ。

「この前はすごいペンをありがとうにゃ。」
「なあ,あんたうちの会社に入らんか。」ポケットから100万円出すと言った。
「ごめんなさい,ダメなんです。 神様だから。」
「じゃ,友達になってくれんか。」
そんなこと急に言われてもにゃ〜。

「おやっさんが頼んでるのに,はいと言えんのか!」とタカヒロが熱り立つ。
こっ,こばいのにゃ。

そのとき「にゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃー」と大きな音。

「まずいパトカーだ。」
「さしあたり逃げるぞ。」

来たのは あにゃこさんだった。 あにゃこさんの猫真似は,パトカーのサイレンに似ているのだ。

「神社に様子を見に行ったらいないから心配したよ。」

ふたりで,セブンで肉マン(安いほう)を買って食べた。(ま)

< 032 > 猫神様 風邪気味2

肉マン美味しいにゃ。はぐはぐ。

布団からひっこぬかれてまた少し熱っぽい猫神様。

「まだちゃんと寝てなくちゃ」
神社に帰ってきてからまたお布団にねかせる。

「まだ葱巻いておかなくちゃ」

あぐあぐ。
「これちょっと苦しいのにゃ。」

「でも効くんだよーこれも巻いておこう」マフラーも巻いてあげる。
「これはあったかにゃ〜」

また眠りに入る猫神様

にゃ〜にゃ〜にゃ〜
子猫たちが遊びにきた。
風邪ひいて寝てる猫神様をみて、子猫たちシューンとなる。
猫神様に猫なでなでしてあげる。

みんなでバケツリレーしてチョロチョロ水をくんできた。冷たいタオルを猫神様のおでこにのせてあげる。

べしょ。←ちゃんとしぼれてないからびちょびちょ。

一眠りして目が覚めた猫神様。

あう?

枕元に玉葱、ジャガ芋が。

これなんにゃ?

「あ、子猫たちだよ。葱見て真似したのかな」

あれ?にゃんか楽になってるにゃ。

猫神様むくっと起きて雑巾がけしてみる。
てけてけてけっ!

にゃ〜!調子いーにゃ。

風邪が治った猫神様。今夜は芋汁にゃ〜!
子猫たちと一緒に暖かい芋汁で夕飯をたべたのでした。

にゃ〜あったかにゃ。しゃーわせにゃ〜
また眠くなる猫神様でした。 (あ)

< 033 > 猫神の刻

猫神様は,鯵フライの夢を見ていた。
あれ? 誰かの声がする ... 聞いたことがある声だ。

目を開くと明るく照明された部屋に居た。
あ,禿げた人だ!
禿げた人と金色の目の人が空中に浮いている。 見えないなにかで縛られているようだ。

ニャコラン星域の戦いでボーグの母艦は,重力波をエンタープライズのシールドの一点に集中した。 シールドを破ると,ピカードを母艦に転送した。

ボーグの狙いはエンタープライズではなくピカード艦長個人であった。

「抵抗は無益だ。」 「わたしは始まりであり終わりであり わたしはひとりであり多数だ。」

多数から成る一つの生命体・ボーグはピカードの強力な人格を吸収しようとしていた。

おやつを持ってくればよかったと猫神様は思った。

「ネコカミ! どうやって現れたんだ。 データ,なにか判るか?」
「艦長,正確には分析できません。 この生物が特異点を持っているために,蓋然性が不安定になっています。」
「生物が特異点を持つだと?」(超時空要塞マクロス参照っ。)

ボーグ・クイーンが現れた。
「ピカード。 自分の意思でボーグになるんだ。 そうすれば苦しまないで済む。」
「二度とお前の自由にはならん。」

鋭い先端を持つ機械がピカードにせまる。

「禿げた人が危ないっ!」
猫神様の中でスイッチが入った。 なめらかな動きで前へ出ると,ふっと宙に飛び上がり,ボーグ・クイーンに猫パンチ☆。

体内に特異点を持つ猫神様は,空間の歪みのエネルギーを全て猫パンチに与えた。 時間という概念は既に無く,ボーグはクォークと反クォークに分解し消えた。 宇宙は救われた。

猫神様は,太陽系くらいなら簡単に消滅させる力を持っているのだ。

「ありがとう,ネコカミ。」
「だってピカード艦長(やっと覚えた)はいい人にゃと思う。」
「ジャン=ルークと呼んでくれ。」ピカードはにっこり笑った。

「さよならジャン=ルーク。 おやつの時間だから,帰るにゃ。」猫神様はワープして消えた。

「データ。」
「はい。」
「いま,なにを見たか判るか?」
「生物あるいは超生物でしょうか。」
「いや」ピカードは言った「神だよ。」 (ま)

< 034 > 塩ラーメン

今日は,ラーメン大酋長でバイトだ。
味噌・塩・カレーにバターとコーンの北海道ラーメンが大流行した頃の店の生き残りだ。

大酋長は,早い安い油っこいと3拍子揃ってる。 育ち盛りには,動物性脂肪も必要だからね。

毎週水曜は,塩ラーメンが50円だ。 ただ塩味のスープ,こしのない麺,もやしが少しだけど,子供たちに大人気。

寸胴鍋に業務用のスープを水で薄めて入れ,くず野菜を入れて煮るところがちょっと良心的。

「スープ濾して。」
「はいっ。 野菜はどうしますか?」
捨てていいという,よく煮えてくたくたになった,葱の青いところ,小さいジャガイモ,人参の皮は,少し冷めたら食べようと丼に取っておく猫神様だった。 (猫舌にゃし。)

子供たちが50円玉を持ってやってきた。

「猫,ラーメン作って。 もやしはひとり30g,ひき肉はふりかけ程度ね。」

人参の皮をたびながらラーメンを作る猫神様。
もやしなんか,業務用の10kgの袋だから,大目に使ったってわかりゃしない。 中華鍋にラードをたっぷり入れると,煙が立ち昇るのを待ち,わずかのひき肉ともやしをたっぷり入れてガコガコ炒める。

ジャッとスープを入れると,少し火が入って,油の焦げたいい香りがする。

丼に「うそっ」というほど味の素を入れ,中華鍋からスープを注ぐ。 湯切りした麺を入れ,もやしをのせれば完成だ。

「お待ちどうさま! 少しラー油を入れると美味しいにゃよ。」

子供たちは夢中で食べてる。 食材は安くても,美味しく作ろうと思えば美味しくなるにゃよ,と猫神様は思った。 (ま)

< 035 > 境内のお掃除

久しぶりにいー天気。
「にゃっ、お掃除にゃ!」

猫神様,竹の箒で枯れ葉をさかさか掃き始めた。

さかさかさか。
にゃごにゃごにゃご。
さかさかさか。

にゃ〜にゃ〜にゃ〜
子猫たちが遊びにきた。
「猫神様遊ぼーにゃ。」

「ほいたらお掃除終わるまで待っててにゃっ!」

子猫たち猫神様から離れない。

「ぢゃ、一緒にお掃除にゃ!」

小さめの猫手、もとい熊手を持ってくると、子猫たちにほいと渡す。

「こりで葉っぱを集めて山にするんにゃ」
にゃ〜!

子猫たちも さかさかと落ち葉をかきあつめた。

と、その時落ち葉の下からトカゲが!

にゃっ!

てけてけてけてけっ猫ぱんち猫ぱんち☆
トカゲを追いかけまわす子猫たち。
せっかく掃いた葉っぱがぐちゃぐちゃ。
あにゃにゃあ。。。
「ほいたら、中の雑巾がけをやろうにゃっ。」

バケツリレーでチョロチョロ水をくんできた。

べしょ。←猫手だと上手く雑巾がしぼれにゃい。

みんなで雑巾がけ。
てけてけてけっ!
猫神様リズミカル。
子猫たちが雑巾かけている間に、猫神様ハタキをかける。

ぱたぱたぱた。

てけてけてけっ、猫ぱんち猫ぱんち☆
ハタキに反応する子猫たち。

あにゃっ!猫神様まで猫ぱんちのとばっちり。

「ごめんにゃさいっ」

「いーにゃ、今日のお掃除は終わりにゃ!」

集めた枯れ葉でみんなで焼きイモして、トカゲとりして遊びました。 (あ)

< 036 > 猫神様千年王国

昭和の初め。 ほわ〜と白い妖気の漂う軽井沢で,不思議な地鳴りがして人々を恐怖させていた。

神童・悪魔くんと友人の貧太が,魔方陣を描き悪魔を呼び出そうとしていた。 悪魔の力を利用して,誰もが幸せに暮らせる千年王国を築こうとしていたのだ。

貧太「おれのような子供でも幸せになれるのかなぁ。」
悪魔君「もちろんだとも。 始めるぞ。」

「エロイムエッサイム。 われはもとめうったえたり。」

魔方陣は溶岩のようにどろどろに溶け,ぐるぐると回りだした。

「エロイムエッサイム朽ち果てし大気の精霊よ 万人の父の名の下に行うわが要求に応えよ。」

「エロイムエッサイム! われはもとめうっえたり!」

どどーん。

猫神様が出た。
「昼寝してたにゃのに ... 呼んだ?」

「あなたは悪魔ですか。」
「猫神様にゃ。」

「こんな猫じゃ,俺しあわせになれないよぉっ。」と貧太が泣く。

猫神様は魔方陣から出ると,貧太にセブンの袋を渡した。

貧太は大粒の汗をかいてぶるぶる震えながら袋をあけた。
「ふはあっ!」と腰をぬかしてひっくり返る。

「でも,いいにおいがする。」
貧太は食欲に負けて,その丸くて白くて暖かくて柔らかいものを口に入れた。 6個むさぼり食って,変な瓶からお茶を飲んだ。

貧太「お,俺すごく幸せ。」

よかったにゃ,と言って猫神様は魔方陣から消えた。

出前か。 しかもタダだと悪魔君は思った。 (ま)

< 037 > かあぶり峠 1

あにゃこさんに谷川岳つれてってもらって、また山登りしたくなった猫神様。

猫ぶんぶんみたいな名前の峠に登ってみた。

ふー、け、結構疲れたにゃ。それにお腹も空いたにゃ〜。

峠にはお蕎麦屋さんが何件かあった。見晴らしの良さそうな真ん中の店に入る。
ばふっ!

ビールを運んでたおばちゃんにぶつかる。
「なんでこんなところでぼーっとつったっているんだい、仕事のじゃまだよ」

「あ、あのにゃ、お蕎麦たびたいのにゃ。」

「売り切れたよ!」
にゃ!?

「ほいたら揚げもち くださいにゃ」

「それもないよ」
あうあう。
猫神様とぼとぼと店をでた。

一人のおじいさんが猫神様においでおいでした。

あにゃ?

一番手前に立っている茶色い建物に猫神様を招き入れる。

「お腹が空いているみたいだから」

おじいさんは暖かい蕎麦をご馳走してくれた。

ずず〜。ずずず〜。にゃ!

「お、お美味しいにゃ、ありがとにゃ!えーとおいくらにゃ?」

「いや、いーんだ。君に食べてもらいたかったんだよ」

「にゃ、こんなに美味しいのに、お店開けにゃいんですか?」

話を聞くと、一緒にお店を手伝ってくれてた奥さんが、腰を痛めてしまってお店に立てなくなってしまい、一人ぢゃ、お店まわせないから、休業しているらしい。

猫神様考えた。

「にゃ!ちょっと待っててにゃ!」

美味しい蕎麦をたびて元気になった猫神様。スーパーマッハで山を駆け下り、神社にもどると、リヤカーになにやらいろいろのせて峠に駈け登ってきた。

「こ、ここでしばらくお手伝いさせてください!」

リヤカーから鍋やら、布団やらをおろすと、中から子猫たちがでてきた。

「猫神様、かくれんぼしてたのにゃー。ここどこにゃ?」
キョロキョロみわたす子猫たちでした。 (あ)

< 038 > かあぶり峠 2

「おじいさん,明日から店を開けましょう。」
「気持ちは嬉しいけど,バイトに払うお金も無いんだよ。」
「がんばります。」 ←人の話を聞かない。

「メニューはなんですか。」
「山菜そば と ゆず味噌田楽じゃよ。」
最近,都会へ遊びに行ってナウなフイリングを身に付けた猫神様は,もうちょっとメニューが欲しいと思った。

なにかないかな〜?

考えていると,子猫達がにゃ〜にゃ〜と猫神様に登ってくる。 猫登山にゃっ。

そうだ,子猫のお菓子を作ろう。 タイヤキみたいに型を作るとお金がかかるから,猫手で作って蒸そう。

名前は「 蒸し猫 」にゃっ。

小麦粉に卵を入れてこねこねしてと ... 出来上がりだ! (著者はお菓子作りは苦手らしい。)

中身は,餡子とひき肉あんだ。 人気が出たら中身のバリエーションを増やそう。

蒸し猫つくりは子猫達に任せて,猫神様は 達人(おじいさん)から,超おいしい山菜そばの作り方を習うことにした。

「しかし,峠の茶屋プーケット 秘伝の山菜蕎麦を作るには ... 」
「そんな名前なのー?」
「わしが地中海クラブで遊びに行ったら楽しかったのでつけた。」
「つまりじゃ,山菜が必要なのじゃ。 しかも,岩壁にしか生えていないクラクラ茸を入れなければくらくらするほどうまくない。」

谷川岳を征服した猫に怖いものはない。
命綱を持ってくれるというおじいさんと一緒にクラクラ茸を取りに出かけた。 (ま)

< 039 > かあぶり峠 3

子猫たち、にゃーにゃーと蒸し猫づくりに励んでる。ま、ちょっと形はいびつだけどにゃ。

おじいさんと猫神様はクラクラ茸をとりにいった。

でも、なかなか見つからにゃい。

「おかしい、この辺りにあるはずなんじゃが…」

とその時、

「あれ、あそこの崖でキラキラしてる!」

クラクラ茸だった。
「ぢゃあ取って来るにゃっ!」

命綱をお腹にかけて、猫神様崖を下り始めた。

あとちょっとで猫手が届く、その瞬間、
ぶち。

ゲレンゲレンゲレン。山肌をころげおちる猫神様。

あにゃにゃにゃにゃ〜!

ぼすっ!

猫神様くぼちにはまる。

。。。目を覚ました猫神様。

「ここどこにゃ?」
大きな岩の側面にできた洞穴だった。
洞穴の脇に小さな板切れがあった。

『次郎』

猫冷汗をかく猫神様。絶対絶命の大ピンチ。

が、その下に張り紙が。

「ヤマトさんへ。 引っ越しました。お手数ですが荷物は下記まで」←わりと几帳面な次郎(ツキノワグマ)

…にゃんだよかったにゃ。

洞窟の中に一枚の紙切れが貼ってあった。山の地図のようだ。一か所×印がついていた。
「これなんにゃ?」
その時、近くでおじいさんの声が聞こえた。

「おじいさん、ここにゃ!」
「猫神さん、大丈夫かい?」

「にゃい。大丈夫にゃ。それよりこれなんにゃ?」

地図をおじいさんに渡した。

「この山の地図だね、よし、この×印のところへ行ってみよう」

次郎が踏み固めてある道はわりと歩きやすい。

「ここら辺じゃが…」

少し開けたところにでた。

「おぉ、これは!」
クラクラ茸が群生していた。栗の木と柿の木もある。次郎の食料調達の場所だったらしい。

「これで美味しいお蕎麦ができるにゃ!」

二人でたくさんのクラクラ茸を背負って、峠に戻りました。 (あ)

< 040 > かあぶり峠 4

すばらしい。 石炭のように黒光りするクラクラ茸なんて,滅多に手に入らない。 薄くスライスすると素晴らしい香りだ。

蕎麦打ちはおじいさんの仕事。 教わりながらツユを作る猫神様。 昆布,鯖節,鰹節,生醤油の香り。 ダシの出たところで味醂を入れようとすると ...

ズガッ 麺棒が真っ直ぐに飛んできた。
ぶっ倒れる猫神様。

「み,みりんを入れちゃなんね〜」
はぁはぁしながらおじいさんが言う。
「な,なぜですか?」
「蕎麦ツユにみりんを入れると,邪悪な目をした人が現れて村を滅ぼすという言い伝えじゃっ!」

そんなの迷信にゃと言いかけて,いつか猫神様にいんたーねっとをくれた不思議な人のことを思い出した。 確かに邪悪な目だった ... 意識が遠のいた。

ちょっと気絶している間に蕎麦も茹であがった。 山の湧き水で洗えばひきしまった蕎麦になる。

甘くないツユを注いで,ほうれん草とクラクラ茸のスライスをのせ,みんなで試食にゃー。 鏡餅のようなコブができた猫神様もたびてみた。 う,うみゃい! クラクラするほどうまいけど脳震盪なの。

子猫たちもみゃ〜みゃ〜喜んでいる。 蒸し猫もあとは蒸すだけだ。 準備万端。 明日の開店を待っている。 (ま)

< 041 > かあぶり峠 5

夜、お蕎麦をたびた後、子猫たちが、おばあさんの背中に乗ってぴょんぴょんと猫マッサージ。

「あー気持ちいい、もう少し右、そう、そこそこ」

猫神様は新しいメニュー表を作ってる。
『クラクラしちゃうほど美味しい山菜蕎麦300えん。柚の里の味噌田楽150えん。ほかほかの手作り蒸し猫50えん。美味しいにゃよ!』
おっきな紙にマジックでカキカキ。余白に蒸し猫の絵も描いた。

「我ながら上出来にゃ!」

明日の開店のために、みんな早めに布団に入った。
猫神様興奮してなかなか寝付けない。子猫たちはすぴすぴ眠っている。子猫たちの寝顔を見てたらいつの間にか眠りに入っていた。

「。。。にゃ、蒸し猫。。美味しいにゃよ。。むにゃむにゃ」←寝言

ちゅんちゅん。
朝がきた!いー天気にゃ!

おじいさんは蕎麦の準備にとりかかる。子猫たちは用意してあった蒸し猫を蒸し始めた。昨日のマッサージでだいぶ体が楽なったおばあさんは、慣れた手つきで店内の支度を始めた。
猫神様は外で、大きな声で客引き。

「とっても美味しい山菜蕎麦はいかがですか〜!」

でもなかなかお客さんがこない。今まであったお店にながれがちだ。

「あぅ、一口たびてもらえば自信あるのににゃ。よーし!」
猫神様ぴゅーっと かあぶり峠の看板の前に走っていくと猫ぶんぶんを始めた。

「すごく美味しいにゃよ〜!もう、こんなふーに頭クラクラしちゃうくらい!
蒸し猫もやわらかくてほかほかにゃっ!」

通りの人が面白がって集まってきた。
「おい、面白い猫がいるぞ!」

猫神様猫ぶんぶんしながらお店の前に移動した。
ちょうど蒸し猫が蒸し上がったところだ。中からは蕎麦つゆのいー香り。

「お腹も空いたし、休んでいくか」

お客さんがたくさんお店に入ってきた。
蕎麦を一口たべると、あまりの美味しさにみんなクラクラしている。

お客さんがお客さんを呼んで、少しづつお店に入ってきた。
「よーしがんばるにゃ!」

猫神様、蕎麦つゆ作りに、蒸し猫の手伝いに、フル回転!

「いらっしゃいませ〜!」

猫神様たちのがんばりで、お店は大繁盛になりました。 (あ)

< 042 > かあぶり峠 6

おじいさんのお店は大繁盛。

うわさを聞き付けた人たちがどんどん入ってくる。

がらがらがら。

「いらっしゃいませ〜!おにゃっ!」

…次郎(ツキノワグマ)だった。

お店の美味しい蕎麦と、蒸し猫のうわさはあたりの山々に広がっているらしい。
猫神様裏に逃げる。
こばいのにゃだめなのにゃ、たびられちゃうのにゃ!

猫神様涙ザブザブ。
店内も緊張が走っている。

そこへおじいさんがでてきた。

「へいらっしゃい。何にするかね?」

次郎は黙ってメニューの蕎麦を指差した。

「蕎麦一丁!」

あたたかい蕎麦をずずずーっとたびる次郎。

たびおわるとおじいさんの方を向いて
ご馳走さまでした。

お勘定をしてでていく。

猫神様ほっとして裏からでてきた。

「あぁ、び、びっくりにゃ〜」

がらっ!

また次郎が出てきた。猫神様の方をみた。

「に、に、にゃにか?」

猫神様冷や汗だらだら。

おみやげに蒸し猫を3つ買って,次郎は帰っていきました。

次郎がきた後から、隣りの山や里からもたくさんのお客さんがくるようになりました。 (あ)

< 043 > かあぶり峠 7

猫神様たちのがんばりで、お店にはたくさんの人がくるようになった。おばあさんの体も、もう大丈夫。

猫神様そろそろ神社へ帰らなくちゃ。

「お世話になりました。またくるにゃ。。。」あれ、にゃんか目頭が熱くなってきたにゃ。

「猫神さん、本当にありがとう。またいつでも遊びにきてな」

そういっておじいさんは猫神様に白い封筒を渡した。

「これ、少しだけど、バイト代じゃ。それと、蕎麦ももってきな」

おばあさんが包んでくれた蕎麦を受け取ると、猫神様涙ザブザブ。(;;)
猫手で がしっとおじいさんに握手してばいばいした。

帰り道、リヤカーを引きながら、子猫たちと、『森のくまさん』を歌いながら山を降りていきました。
♪あるぅひ〜、、あるぅひ、←(子猫エコー)森のにゃか、森のにゃっか、ジローに、ジローに〜であぁた〜♪

車道に出ると、地元の人たちがいろいろなおみやげものを売っていた。

猫神様たち、バイト代で干し杏や銀杏、茸や柚をたくさん買って帰りました。 (あ)

< 044 > 蒸し猫屋台 1

神社に帰った猫神様は,かあぶり峠でも人気があった蒸し猫の屋台をやったらどうかと考えた。

猫神様になついているノラ子猫達に,ときどきお魚を食べさせてあげたいのにゃ。

リヤカーを屋台に改造だ。 ヤキイモ作るときに使ったカマドに火をたいて,蒸し器をのせれば出来上がり。 蒸し猫こねこねは子猫たちがしてくれた。

テストにゃっ。
神社の境内に湯気が立つ。 10分蒸せば完成だ。

ぎくっ。 子猫が1匹いない。 猫冷汗ひとすじ。 そ〜っとフタを開ける。

にゃ〜! 1匹はリヤカーの下がホカホカするのでもぐってたの。 あーこばかった。 今度から蒸す前にちゃんと安全チェックだ。

秩父駅(都会にゃし)の近くに屋台を出した。 「子猫の作った,ふかふかの蒸し猫 30円にゃよ〜。」 地場産会館でお土産を買った人達が面白がって寄ってくれた。 「安くて美味しい。」 労働力が安いからにゃ。

売れ行きに気をよくしていると,怖そうなお兄さんがやってきた

「おい猫! 誰に断ってここで商売しとるんじゃ。
誰の許可を得とるのかと聞いとんじゃ,ぼげぇ! 」
がしゃんとリヤカーを蹴り上げる。

落っこちた蒸し器を はっしと猫手でキャッチした猫神様駆け回る。「あぢあぢっ熱いにゃ! こばいにゃっ。」

猫神様の胸元をつかまえると「答えんかいドゥアホッ!」

「お,お巡りさんに聞いたにゃけど,目立たないことろならいいよ猫だしっ,て言われたにゃもん。」
「猫もタコもねー。 駅前の場所を使うには俺達に仁義を切ってショバ代を払うんだよ!」

ごん,と鈍い音がした。 まっすぐ前に倒れる兄ちゃん。
ぶっとい拳を突き出したリッチ社長が立っていた。
「猫神さんだいじょうぶかい?」
「助けてくれてありがとうにゃ。 でも,暴力はイヤなのにゃ。」

「わかった。 ごめんくさい。 今日で組(リッチ興業)は解散する。
オレに蒸し猫の作り方を教えてくれないか。 蒸し猫屋台をやってみたいんだよ。」
(ま)

< 045 > 蒸し猫屋台 2

猫神様たちとリッチ社長は神社へ。

猫神様やけどした猫手がぶーっと腫れてきた。

「あう、痛いのにゃ」

チョロチョロ水に猫手をつっこむ。

境内で早速蒸し猫の練習にゃ。

子猫たちとリッチ社長で皮になる生地をこねる。
にゃーにゃー!
子猫たちリズミカルに餡を包んでいく。
リッチ社長はなかなか上手く餡が包めない。

「なかなか難しいな。。。」

「そんなに難しくにゃいから大丈夫にゃよー!すぐに上手くなるにゃ」励ます猫神様。

その夜からリッチ社長一人で蒸し猫づくりの練習を始めた。
解散した社内には誰もいない。シーンと静まっている。

リッチ社長の集中力が指先に込められる。
そして5日後の夜。
「できた!」

子猫たちのやわらかな猫手で包んだように丸くて柔らかい蒸し猫ができた。

がちゃっ。

タカが入ってきた。
「おやっさん、俺もついて行きます!」
タカヒロが仲間に加わった。

「こんなの作ってみたんです」

風呂敷を広げると中からいろいろなタッパーが出てきた。

「中に入れる具をいろいろ考えて作ってみたんです」

「タカ…、よし、じゃあ猫神さんのところで試食してもらおう、荷物を準備しろ」

猫神様の神社に美味しいそうなにおいがたちこめてきた。

柚を使ったジャム餡、季節の野菜の煮物、カスタードクリーム、…

どれもとても美味しかった。

子猫たちもみゃーみゃー喜んでいる。

「もう大丈夫そうにゃね、がんばってにゃ。」猫神様そういってリッチ社長に蒸し器をあげた。

「猫神さん、ありがとう、がんばってたくさん売っていつかお店を持つんだ」 (あ)

< 046 > いい天気

昨日の夜からのびゅーびゅー風のせいか、今朝は真っ青ないい天気。

猫神様枯れ葉掃きしてたけど、風が吹いて、はいてもはいてもきりがないからもーやめた。
「いい気持ちにゃあ。。。」

猫神様いつの間にかうたた寝。

んー重たいのにゃ。。。あう?

いつのまにきたのか子猫たちが猫神様の上で眠っていた。
気がつかずに猫神様が寝返りをうつと、子猫たちコロコロと転がっていく。

「ふみゅ〜。」
「ごめんにゃ!起こしちゃったかにゃ。」
「にゃー、猫神様もう一回もう一回にゃっ!滑り台にゃ〜!」
猫神様うつぶせになって丸くなる。

「登山にゃっ!」
うんしょうんしょと猫神様によじ登る子猫たち。てっぺんにつくと、「滑り台にゃっ!」
コロコロとすべり落ちる。

た、楽しそーにゃね。猫神様考えた。

「ちょっと待っててにゃ!」

押し入れから発泡スチロールを出して、敷き布団をかける。
「滑り台にゃ!」

子猫たち喜んで滑り台で遊び始めた。

あまり楽しそうにゃので、猫神様もすべってみたくなった。
「滑り台にゃっ!」
べき☆←発泡スチロールが壊れた音。

にゃ〜(;;)

結局猫神様が滑り台になって遊んだのでした。

「お馬さんにゃ〜ぱかぱか」←やけになってお馬もやっちゃう猫神様。 (あ)

< 047 > 次郎からの宅急便

さかさかさか。さかさかさかさか。

へっぷしゅ。

「にゃー、今朝も冷えるにゃ。」
今朝も境内の枯れ葉掃き。

ぶぉぉー!

ヤマトの車が入ってきた。

キキーッ、バタン!たったったった!

「はぁはぁはぁ、ね、ネコカミさんですか?」

「そーにゃ、それなんにゃ?」

「サインください!」

リッチ社長にもらったリッチペンでちゃかちゃかっとサインした。

「ありがとうございましたっ!」

たったったった、バタン!ぶぉぉー!

茶色い小包を置いて、急いで帰ってしまった。

「なにかにゃ〜?」包みに貼ってある伝票をみてみた。

〈送り主:次郎〉

にゃっ!

〈時間帯:なる早〉
(なる早=なるべく早くの意。たぶん次郎の造語)

ぺりぺりっと包みを剥すと中から美味しそうな干し柿とクラクラ茸が出てきた。小さな手紙も添えてあった。

『蒸し猫の定期購入希望。毎週うちまで届けてください。』
にゃ〜!お客さんにゃっ!早速リッチさんに教えてあげた。
蒸し猫が売れるので喜ぶ、リッチさんとタカ。

毎週土曜日にタカが次郎のところへ届けることになった。

「はー、それにしてもびっくりしたにゃ」
猫胸をなでおろす猫神様だった。
(あ)

< 048 > 蒸し猫屋台 秩父編

地場産センターの近くで,今日もリッチさんとタカは蒸し猫屋台を出していた。
具のバリエーションも増えた。

「あったかいバナナと生クリーム入ってますよー。」
「四万十川の岩海苔入り蒸し猫,おつまみにぴったりだよ。」

秩父はもう寒い。 女子高生やサラリーマンが暖かくて安い蒸し猫を,どんどん買ってくれる。 おじさん美味しいね,と言ってくれる。

蒸し猫を捏ねながらタカヒロがぽつりと言った。
「喜んでもらえるっていいすね。」

「ばかやろう ... 」

また怖そうな兄ちゃんがやって来た。

「おうおうおう! 誰に断って店出してんだよー!」
がしゃんと屋台を蹴り上げる。

リッチさんが押さえている屋台は重い。 つま先がぐきっとなる。
「ふざけんな。」突っかかる兄ちゃん。

ギクッと立ち止まる。 タカの手が腹巻に消えると,冷たいものが額に押し当てられていた。

リッチ「タカ,暴力はいけないよ。」

「タ,タカ?」がくがく震えだす兄ちゃん。
「あ,あんたは伝説のスローハンド・タカ!」(チャカを抜く手があまりに早いため スローハンドと呼ばれていた。)
「ばかやろー。 俺はもう暴力はやめたんだよ。 よく見な。」

兄ちゃんが寄り目でおでこを見ると,ただの栓抜きだった。

リッチ「俺たちはもう暴力はやめたんだ」

はっと気づく兄ちゃん。
「あ,あんたは関東を束ねていたリッチ親分!」

リッチを殺(と)れば,俺は幹部だ。
「うおおおーっ」
ドスを抜いてリッチさんに突進する。

「おやっさん!」

ドスッ!

.....

「わりーわりー腹筋使っちまった。 俺の腹にはドスは通らないんだよ。」(グラップラー刃牙参照。)

へたり込む兄ちゃん。

「あんたは暴力の世界には向かんな。 家へ帰りなさい。」
リッチさんは兄ちゃんに蒸し猫(試作品)をあげた。

秩父鉄道に乗って蒸し猫を食べながら泣く兄ちゃん。 「千葉へ帰って落花生を作ろう。」

でもキムチ味はいまひとつだと思った。 (ま)

< 049 > 次郎の新居

かーぶり峠は人も交通量も増えすぎた。 次郎は静かな場所を求めて,西吾野で西武秩父線を渡り,セブンで宅急便を出してから,川を渡って静かな山まで来た。 ここに住もうっと。

麓の木にバリバリと「次郎マーク」を付ける。

適当な洞窟が見つかるまで,登山道から遠くないところにゴアテのテントを張ることにした。 食べ物は少ないけど,熊も減ってしまったのでそんなに困らない。 お天気もいいし美味しい干しクラクラ茸を食べながらごろごろする。

登山道を女の子がひとりで登ってきた。 あれ,一瞬猫耳が見えた気がしたけど。 女の子は次郎マークを見つけると,はうはうどきどきしている。 次郎はこばくないのになー。

女の子はテケテケと音を立てて登っていった。 いい天気だし山登りは気持ちいいよね。

一時間後,ふんふんふ〜んと超上機嫌で女の子が下りてきた。 そして道を間違えて,まっすぐ次郎の方にやってくる。 教えてあげてもいいんだけど出て行ったら驚くだろうし ...
干しクラクラ茸を手裏剣のように投げた。

ぴしっ
はにゃにゃ? 空気にデコピンされたのかしら〜?とあにゃこさんは思った。 同時に,あれ,この道おかしいにゃーと気づいた。

はうはうしながらくるくる回って,やっと標識に気が付くと登山道を下りていった。
あにゃこさんと次郎のニアミスな日。
(ま)

< 050 > 釣りに行く

猫神様は12月にある計画があるので,いまは倹約している。 でも,お魚は食べたい。

川に釣りに行こう。 釣り方知らないけど。

たしか,棒に糸つけるんだよにゃ。
境内に落ちてた枯れ枝に,去年のお正月凧揚げに使ったタコ糸を結んだ。
2,3回ひゅんひゅん振ってみる。 にゃんかいい感じー。

でも,糸だけじゃお魚つれないよね。
地場産センターの近くに釣道具売ってるお店があったよにゃ。

アウトドア 大黒堂。 ここだー。
がらがらがら。 (引き戸。)

「らっしゃっい」
「お金はないけどお魚を釣りたいのにゃ」

店に入ってきていきなり金が無いと宣言するとは大胆だとおやじさんは思った。

「なに釣りだい?」
「食べられる魚!」

猫神様の持っている棒とタコ糸を見て諦めた。 猫だし。
「あのね,ザリガニじゃないんだからそれじゃ釣れないよ。」

たしか奥に売れ残った子供用の釣りセットがあったな。

埃を払うと猫神様に渡した。
「ごめんにゃさい。 300円も無いのにゃ。」
「売れ残りだからあげるよ。 エサはいらないの?」
「虫こばいのにゃ。」
冷蔵庫を探すと,賞味期限の切れたソーセージがあった。
「これを切って使ってごらん。」

猫手を合わせて,ありがとうにゃ。
「ソーセージ,自分で食べちゃだめだよ。」
ぎくっ。

ハープ橋を渡り小鹿野の方へ行くと川に出た。

天気がいいので日向は暖かい。
猫爪でピリッとソーセージの皮を剥くと,小さく切って針につけ,川に放り込む。 浮子はぷかぷか浮かんでいるが何も起きない。 ゆらゆら揺れる浮子を見ているうちに爆睡だ。

はっ。 いい匂いがする。 焚き火の煙だ。

河原の岩陰で,少し禿げ上がったかっちょええ外人の人が焚き火をしていた。 猫神様を見るとナイスガイな笑顔で,ほいっと丸いものを投げてくれた。

あちゃちゃちゃちゃ,猫手で受け取って駆け回る猫神様。 焼きジャガイモだ。 皮を剥くと粉が吹いている,男爵芋だ!

ありがとにゃ。 はぐはぐはぐ。 おいひぃ〜。

外人の人は釣れたかと聞いているらしい。 猫ぶんぶんする。

「釣り方を教えてあげよう。」←完全な推定。

男爵(男爵芋をくれたので,そう呼ぶことにした)は,軽く竿を一振りした。 鳥の羽のようなものがついた糸は,岩陰の淀みを狙ったように落ちた。 軽く竿をしゃくる男爵,ぴくりと竿がしなり ... もう釣れた。

銀色の魚がぴちぴち暴れながら水からひっこ抜かれる。

「フライをみせてあげよう。」
猫手にとったその仕掛けは,羽根のような虫のような繊細で美しいものだった。 子供釣りセットとは違うにゃ。でも,エサは付いてないのにゃ。
詐欺にゃ!と猫神様は思った。

以下,釣りの描写についてはヘミングウェイの「心がふたつある大きな川」を参照。

たちまちズックのバケツには,5匹のブラウントラウトが入っていた。
お家が遠いと言う男爵は,釣った魚を全部くれた。 本当にいい人だ。

ぶんぶん猫手を振って男爵にバイバイすると,ブラウントラウトを背中に背負って意気揚々と帰る猫神様。 今夜は,ブラウントラウトを焼いてお醤油をかけて,自分で釣ったことにして子猫たちに英雄視されながら食べるのにゃ〜。 ほくほく。 (ま)

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